第104話:無茶と安堵と帰宅
森から外へ出る。
街道へは草原を挟んで少し距離がある。
視界が一斉に広がり、遠くまで見渡せる。
開放感のある光景に、ようやく森を抜け出せたことで俺は胸を撫で下ろした。
森の中では常に周囲を警戒していたからか、空が広く見えるだけでこんなに楽になるものだとは思わなかった。
草原から街道へ移動し、街道を北上するとぼんやりと見えていたマーテンの建物がはっきりと視界に映るようになった。
「さあ、後一息だよー」
チティルが明るく話す。
彼女は俺達を励まそうとしている事が分かった。
その直後、
「あ、ちょっと、くすぐったいー」
チティルが声を出す。ルシュがチティルの翼を撫でているようだが、どうにも弱い所を触っているらしい。
「ちょっと、ダメだよルシュちゃん。あははは……」
楽しそうな二人の様子をムーグはやれやれと言う表情で見ている。この二人はすっかり打ち解けている。
そんなこんなで何とか俺達はマーテンに戻る事が出来た。
***
「俺達は西支部の方へ依頼完了の報告へ行く。ここでお別れだ」
マーテンの入り口でレゾルが話す。ルシュがチティルの背から降りる。
疲労は結構取れたようで、足取りは安定している。
「今日は本当にありがとう、本当に助かったよ」
俺は改めてレゾル達に礼を言う。
「ありがとう」
ルシュも俺に続いて礼を言う。
「今度からは仕事は良く選びな、ま、せいぜい頑張るんだな」
ムーグの物言いには以前の俺ならカチンと来ていただろうが、助けてもらった手前、そういう気にもならない。
ルシュもこの言葉に不満そうな顔はしていない。ムーグなりの言い方だと、もう分かっている。
レゾル達が背を向けて立ち去ろうとする。
「もー、ムーグったら!それじゃあね、ルシュちゃん、新人クン」
チティルが翼をパタパタと振って声を掛けてくる。
……俺は新人クンなんだな、などと思いながら、俺とルシュは彼らを見送った。
レゾルの背中が遠ざかっていく。次に会う時は、もう少し俺も成長していたいと思った。
***
「無事だったんですね!良かったー……」
モアさんが嬉しそうに話す。
「あはは……何とか……」
俺はモアさんに依頼中の出来事についてかいつまんで話をした。
「レゾルさん達に助けてもらったんですね。そんなにボロボロになって……
私も迂闊でした、申し訳ありません…」
心配させてしまったモアには申し訳ない気持ちになる。
そして、依頼された黄光石の入った袋を提出する。
やや足りないと思っていたが、ムーグが渡してくれた黄光石が大きかったので、何とか依頼達成分になっていたようだ。
「はい、依頼品の提出を確認しました。
報酬はこちらになります。今日はゆっくり休んで下さいね」
俺達は報酬を受け取り、家路につく。
モアの言う通り、今日はゆっくり休もう。
ルシュも隣で静かに歩いている。
疲れ切っているはずなのに、その足取りは確かだった。
無事に帰ってこられた。
二人で、それだけで十分だった。




