第102話:安堵
俺達の顔を覗き込んでくるハーピィのチティル。
金のウェーブの掛かった髪が揺れる。こう改めてじっくり見ると綺麗な人だなと思った。
「あ、ああ……」
俺は何とか口を開く事が出来た。
「その、ありがとう。助かったよ……」
俺の返事を聞いてチティルが笑う。
「おお、良かったー。
新人ちゃんも、ヘトヘトみたいだけど大丈夫そうだね」
チティルはルシュに目配せする。ルシュは疲労した様子ながらもチティルに向かって頷く。
「こんな所で何してんだ?駆け出しが来て良い場所じゃないぜ」
オークのムーグが口を開く。
ミノタウロスのレゾルは黙って腕を組んでいる。
「仕事の依頼で……」
俺は彼らに依頼を受けてやってきた事を話す。
説明をして、少し間を置いてからムーグが口を開く。
「はぁ…、幾ら何でも無茶だろそりゃ……。俺達が来なけりゃお前らどうなってたか分からないんだぜ」
ムーグの呆れた口調に俺は閉口する。
反論できない。実際その通りだ。ルシュも黙って俯いている。
「今回は運が良かったな、これからは身の丈に合った依頼を受ける事だ」
黙っていたレゾルが口を開く。
叱責ではなく、ただ事実として言っている。それがかえって重く響いた。
「じゃ、帰るか」
ムーグがそう話して背を向ける。
「新人ちゃん、こっちおいで」
チティルがルシュに背を向け、少し屈む。
「?」
ルシュが不思議そうに首を傾げる。
「おぶったげる、疲れてるでしょ?」
チティルはルシュに向けて優しく話しかける。
その言葉を受けてルシュが俺の顔を見る。どうしよう、という問いかけに思える。
俺は黙って頷く。
俺の反応を見て、ルシュはチティルの背に覆いかぶさる。
「しっかり掴まっててねー」
そう言ってチティルは浮かび上がる。
「おー……」
ルシュが感嘆の声を出す。
おぶっても飛べるのか……俺は何となくハーピィは何かを乗せて飛ぶ事は出来ないと思っていたので少し驚く。
ルシュの方も、おぶられて飛ぶという経験は初めてなのかもしれない。
「どうした?お前も疲れて歩けないなら手を貸してやるぞ」
ムーグの言葉に我に返る。
「いや、大丈夫だ……」
疲れているが、歩くことは出来る。俺は地面に置いていた荷物を持つ。
「それじゃあ、マーテンに戻るぞ」
レゾルを先頭に、俺達はマーテンに向かっての帰路についた。
ルシュがチティルの背の上から俺を見下ろしている。その顔に、少しだけ安堵の色が戻っていた。




