第10話:手作りの贈り物と、新しい装備
「あらヨウヘイ、こんばんわ」
「こんばんわ、村長」
日が沈みかけ、宵闇が迫りつつある時刻。
俺は村長の家を訪れていた。
ノックするとすぐにメラニーが出てきた。
服装は昼間と同じものだった。
「ふふっ、取り敢えず中にどうぞ」
「わ、分かりました」
招かれるまま家の中に入る。
装飾品が程々に置かれていて、小洒落た置物やタペストリーが壁に飾られていた。
高級というよりは趣味の色合いが強い、温かみのある部屋だった。
「こちらへどうぞ」
言われるがまま椅子に腰掛ける。
テーブルを挟んだ向かい側にはクッションのようなものがあり、メラニーはその上に座った。
「昼間の件で……」
どう切り出したら良いか分からなかったので、直球でプレゼントの話をする。
「あらあら、プレゼントを持ってきてくれたの?」
視線が俺の持っている袋に向く。
俺は袋を開け、木箱を取り出した。
「これ、もし良かったら物入れにでも……」
作り終えた時は達成感の補正で良い品に見えたが、こうまじまじと見ると粗末な作りだ。
使った木材だけは良質で見映えが良いだけで、この洒落た村長の家にはミスマッチな気がしてきた。
「まあ!手作りの木箱?ありがとう」
メラニーは思いのほか喜んでくれた。
気を遣ってくれているだけかもしれないが、少し気が楽になった。
「あとこれを」
針山を取り出す。綿を布生地で包み、ハサミで切って縫い付けただけのものだ。
決して出来が良いわけではないが、裁縫針を刺しておく事はできる。
上下の区別がつくように下部の布は花びらの形にカットしてある。
これだけのものを作るのに試行錯誤で数時間かかった。
「まあ可愛らしい小物、これも手作りですか?」
「ええ、これに針を刺して置いておくんです」
針山の用途を簡単に説明すると、メラニーは感心したように眺めた。
……後日分かったことだが、針刺し自体は村長も持っていたが、
小物としても置いておけるデザインのものは一般的ではないらしく、その面でも喜ばれたようだった。
「へえ、面白いわね。もしかして私の趣味を誰かに教えてもらったの?」
ええ、まあ、と答えると、メラニーの表情が緩んだ。
「こんな素敵なプレゼントを貰えると思わなかったわ。ありがとう、ヨウヘイ」
少し待ってねと言い、メラニーが部屋の奥へ移動する。
少しして、綺麗に折りたたまれた冒険者の服を持って現れた。
「もう少し待ってくれたら梱包できたのだけれど……これをお礼にお渡しするわね」
梱包だなんてとんでもない。
頭を下げて冒険者の服を受け取った。
「そうだ、もし良かったら今日の夕食をここで食べていってはいかが?」
正直まだ恐縮している状態ではあったが、村長の好意を無下にしたくはなかった。
決して村長が美人だからそれが嬉しかったわけではない。
「いいんですか、じゃあもし良ければ……」
その言葉を聞いてからメラニーは微笑み、
「それじゃあ少し待っていてね、準備するから」
と言った。
この後、豪勢な夕食を頂いて家に戻ったところで、テオックに茶化される事になった。




