12話 お断りします
「ライナス様がいつもつるんでいらっしゃるお友達も良くないです」
私は今まで観察していて、気付いたことをライナス様に伝えました。
「ライナス様が女性を見下して暴言を吐かれるのは、お友達の影響もあるのではありませんか?」
「……っ!」
「いつも猿のように集まって、誰かを見下して、陰口を言っているのでしょう」
ライナス様の周囲にいる若い令息たちは、いつも群れてニヤニヤ笑いをしている方々です。
偶然なのか必然なのか、家格の低い令息たちばかりです。
これは私の推測ですが。
彼らはライナス様がいない場所では、ライナス様のことも小馬鹿にして嘲笑っているのではないでしょうか。
いつも陰口ばかり言っている人々は信用ができませんもの。
「下品で見ていられません。そういうくだらない人たちと付き合っているから、良識ある人々はライナス様との関りを避けるのです。その結果、ライナス様の周りには、くだらない人しか集まらなくなるのです」
「さ、最近は、あいつらとはもう、あんまり……」
ライナス様はもごもごと何か言いましたが、私は話を続けました。
「ライナス様の交友関係があまりよろしくないから、聡明な女性はライナス様には近付かないのですわ」
当たり前です。
最初から見下すことが目的で暴言を吐いて来る相手に、好き好んで近付きたいものですか。
私だって家の事情さえなければ、ライナス様との縁談をお断りしたかったです。
「ライナス様、ご両親が用意してくださる縁談を、真面目にお受けなさいませ」
私はライナス様に精一杯の助言をしました。
「ご両親が段取りしてくださる縁談のお相手は、ライナス様の周囲に集まっている品のない人たちとは違います。ご両親が選んでくださるお相手にきちんと向き合うことです」
クレイトン侯爵夫妻のお眼鏡にかなったご令嬢なら、きっと良いお相手に違いありません。
品のない令息令嬢とばかり交流していたライナス様のことを、クレイトン侯爵夫妻は嘆いていらっしゃいましたもの。
おそらくご夫妻は、ライナス様の結婚相手には、家格や血筋に瑕疵のないご令嬢をお選びになるでしょう。
クレイトン侯爵家の家格に見合う家のご令嬢であれば、間違いなく、幼いころから教育を受け、礼儀作法も申し分なく、教養を身に付けているご令嬢です。
「くれぐれも、お相手の為人も解らないうちに、くだらないと決めつけて暴言を吐いたりなさいませんよう。次は失敗なさらないようにお気をつけあそばせ」
「セルマ、私は君と結婚したい。やり直そう!」
「お断りします」
クレイトン侯爵家との縁談は、夫以外は素晴らしい縁談でした。
夫となったライナス様以外は。
でもやはり、結婚では、夫は重要な部分だと思いますの。
最低な夫でも我慢しなければならないほど、現在は生活も困窮しておりませんので、私もライナス様をお断りできるのです。
「私を愛することはないと宣言なさったくせに、今度は愛していると言い出す。そんないい加減は人とは付き合いたくありません」
「だって、愛してしまったから!」
「私に愛人を作れとすすめたくせに? お気楽ですね」
「……っ!」
ライナス様の顔色が変わりました。
私に愛人を作れと言ったことも忘れてしまっているようです。
「バレないように上手くやれだの、愛人との密会は外でやれだの、そういうことは愛人とやれだのと……。ライナス様が私におっしゃったのですよ?」
「セルマには愛人がいたのか?! 私を裏切っていたのか?!」




