11話 同じ羽の鳥は集まる
離縁が成立して、私は実家スタンリー伯爵家へ戻りました。
しかしその数日の後、ライナス様から話がしたいと連絡がありました。
そこで私の実家でライナス様とお話をすることになりました。
「セルマ、もう一度結婚して欲しい!」
応接室にお通しすると、ライナス様は早々に本題に入られました。
「もう一度私の妻になってくれ!」
「何故ですか?」
「愛しているんだ!」
ライナス様は、言いました。
呆れたことを。
「ライナス様は、私を愛することは無いと、おっしゃいましたのに?」
「私はそんなことは言っていない!」
「……」
ご自分の発言を忘れていらっしゃるのでしょうか。
暴言を吐かれた側の私にとっては、忘れられない出来事ですが。
暴言を吐いたライナス様にとっては、すぐに忘れてしまうような些細な出来事だったのですね……。
余計に腹が立ちました。
「ライナス様が、おっしゃいましたでしょう?」
私はライナス様に、過去を思い出していただくために説明をしました。
「結婚前のことです。この家のこの部屋で、ライナス様は私に、愛することはない、とおっしゃいましたでしょう? ライナス様がお一人で来られたときです」
「あ……」
ようやく思い出したのか、ライナス様は気付いたような顔をしました。
「あれは……あのときは私が悪かった。謝る」
「三年間一度も謝ってくださらなかったのですから、今更謝っていただかなくて結構ですわ。ライナス様にとってはすっかり忘れてしまうような些細な出来事だったのですね」
「わ、私が悪かった。誤解していたんだ。君も他の女と同じだと。女なんてみんな私の顔と家柄だけが目当てで群がって来るものだと、誤解していたんだ」
「私はクレイトン侯爵家の資金援助が欲しくて結婚したのですから、その認識は間違っていませんわ」
「いや、君は違う。君のおかげで家の中は素晴らしく快適になった」
ライナス様は、家政のことなど解らないでしょうから。
女主人がいないお屋敷は、最低限のものは揃っていても、それ以上のものはなく、何かと不便や足りないものがあるのでしょうね。
「社交も見事にこなしてくれた。君は他の女のようにキャアキャア騒がないし、落ち着いていて……君は他の女とは全然違った!」
「ライナス様、私が特別なわけではありません。騒がしくない女性は他にも大勢いらっしゃいます」
「そんなことはない。他の女は私の顔と身分だけが目当てて、キャアキャアといつも騒がしい」
「それは、ライナス様の周囲に、そういう女性しか集まらないからです」
悪口は言いたくありませんが。
ライナス様の今後のためにも教えたほうが良いと思いました。
親切にしてくださったクレイトン侯爵夫妻のためにも。
「ライナス様には、顔と家柄しか取り柄がないから、それが目当ての女性しか集まらないのです」
「……っ!」
ライナス様が吃驚顔で、言葉を失っていらっしゃいますが。
私はさらに続けました。
「女性たち全員がつまらないのではなく、ライナス様の周りに集まる女性が、お顔と家柄が目当てのつまらない女性ばかりなのです。そういう女性しか集まらないのは、ライナス様ご自身の日ごろの行いによるものです」
頭も身分もある女性たちは、ライナス様には近づきませんものね。
「私に親しくしてくださったご夫人やご令嬢たちも、ライナス様の周囲には群がりません。そういうことです。諺にもある通り……」
私はそのような状況を指すときによく使われる諺を出しました。
「同じ羽の鳥は集まるのです」
そして私とライナス様とは、違う羽なのです。




