幕間 大罪の予言
世界の最果てには風が吹き荒れていた。
すべての彩りが腐り落ち、乾いた茶色が埋め尽くす景色。残った僅かな木々でさえ、暴力的な突風に吹き飛ばされている。無人の荒野はどこまでも広がっていた。
心象風景――
荒野の中心には、つい先日まで大木がそびえ立っていた。過酷な嵐にさらされても揺るがぬ緑が存在したが、それも枯れた。何者かに奪われたような急激な終わりだった。
茶色の中心で彼は嗤う。
生命の息吹が消えた世界で、それでも立ち続ける私自身が滑稽だった。
「人間じゃねえな、こりゃ」
生の波動を感じない。全てが枯れ果てた世界は死後と同等である。生死の境界線が曖昧だった。
世界の中で、唯一熱を持つのは彼自身。
七つの大罪その一つ――”暴食”の化身のみである。
彼は人類が誕生したころより私の隣に在った。私以上に私を知っていた。
故に私の魂は死んでいると確信する。
吹き荒れる木枯らしは世界の内側をすべて食らいつくし、やがて限界の外側へと侵食していくだろう。止める術はない。世界からあふれ出した罪が世界を滅ぼすその日まで、木枯らしがおさまることはない。
これは予言だ。人類が生まれた瞬間からの隣人だった”暴食の罪”が告げる、滅びの福音である。
――人類は滅びる。他でもない、私自身によって。
結末は書き換わらない。神が描く物語の線路からは、どうやっても逃れられない。どれだけ強い意志が介在しようと運命は収束していく。
…………アハハハハハハハハハッ!
彼は笑う。木枯らしの中で声をあげる。
神に翻弄される人類が憐れだった。自由意思はない。歩くと錯視している道は平凡な線路だ。
人類を嘲るように、神に憤るように彼は笑う。
甲高い声は世界の果てまで響いていく。
彼は、いつまでも嵐を見つめ続けていた。




