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Zero-Sum Game supported by 『Transport Gaming Xanadu』  作者: 秋乃晃
SeasonX

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第12話 和風都市 〈7〉

 

 乾いた発砲音と共に銃口から飛び出たのは召喚獣ではなく、銃弾だった。

 リボルバーを模した兵器なのだからなんらおかしくはない現象ではあるが、創のなんらかの力によって改造されてからは召喚獣しか吐き出していなかったそのSAAは、この場において元の役割を取り戻したらしい。


 その鉛玉は犬の鼻先に当たって炸裂し、その頭部を木っ端微塵に粉砕する。

 司令部を無くした肉体はよろめいて後ろに倒れた。


「……何がサモンアタックアクティベーターだ。弾も出るじゃねェかよ」


 あたしは銃口を覗き込みながらぼやく。

 その弾倉からはひとつ、弾がなくなっていた。

 残り5発が装填されたままだ。


 弾とは言ってもただの銃弾にあらず。

 この弾は元の世界で対怪物用に製造された弾だったはず。


 あたしは元の世界で一度も使用しなかったから、ここまでの威力があるとは知らなかった。

 試作品とはいえ人間には無害な兵器であるはずなのに、これでは失敗じゃあないか。


 いや、相手人間じゃなかったわ。

 犬だったからか。


(次、銃弾が出るようなことがあれば今回との類似点を洗い出そう。このダメージなら召喚獣でどうにもならなかった場合に奥の手として使える。銃弾のパターンの条件は把握しておいたほうがいい。あと5発しかないからな)


 あたしは死骸の懐を漁って《サクラバッジ》を見つけ出す。

 街中にも桜並木があったぐらい、桜とは縁深い都市なのだろう。


 あたしがやり遂げなければならない〝メインクエスト〟では各都市を回る。

 この〝メインクエスト〟を踏破すればこの世界は用済みだから、和風都市はもう二度と訪れない。

 訪れる必要はない。

 目的は達成された。


 スマホで『マップ』を開くと、次の目的地として『神樹都市セネカ』に赤いピンが立っている。


「神……神ねェ……」


 あたしは元の世界に想いを馳せる。


 世に神が御坐すならば。

 なぜ世界は救われなかったのでしょう。


 侵略者に怯えて怪物に脅かされる現実を覆い隠してまやかしの平和を謳う政府。

 無数の骸の上に成り立つ『人類の平和』。


 第一世代は正常に育たず。

 第二世代は結託して反乱を起こし全処分。

 第三世代は調整失敗。

 第四世代は――アンゴルモアの襲撃によってあたししか残らなんだ。


 神がいるならば、その大いなる力とやらでなんとかしてくれよ。

 あたしたちを救ってくれ。


(神はいない)


 いるのは人間だけ。

 神だの仏だの、そんなものは人間の妄想でしかない。


 何かに縋っていたい人間が生み出した空想の産物だ。


「……行ってみないとわからんな」


 百聞は一見にしかず。

 どうしても「あたしとはウマが合わなさそうだな」と考え込んでしまったが、行ってみたら案外悪くないかもだ。


 大天才のあたしにも知らないことはまだまだたくさんある。


「ってことで、チキン! 頼むわ!」


 あたしはSAAを天井に向かってぶっ放す。

 今度は弾じゃなくてチキンこと《フェザーホーク》が現れた。


 ふーん?

 ちゃんとサモンアタックアクティベーターに戻ってんじゃんか。


 なんだろ。

 召喚獣出てこいって思えば召喚獣になって、殺してやるって思えば弾が出てくんの?


 仮説を立てておこ。


「フォっ!?」


 目の前に現れたチキンはその翼で顔を覆った。

 なんだよ。


「あたしになんかついてんの? ――あ」


 見ると《ポンチョ》に返り血が付着している。

 買ったばかりなのに……。


 ま、まあ、また神樹都市ってとこに着いたら買えばいいよな。

 買ったものはインベントリに保管されるから荷物にならねえもん。


 一旦脱いでおくか。


「フォ! フォ!」

「んあ? まだなんかあんの」

「フォー!」


 恐る恐る右翼の先っぽで死骸を指差すチキン。


「チキンさんさぁ、鷹なのにネズミとかラットとか食わんの?」


 プルプル頭を横に振るチキン。


 食わんのか。

 召喚獣って何食べてんのかな。


「あたしは元の世界のためにメインクエストをやらなくちゃあならない。そのメインクエストが手っ取り早く終わるんなら、なんだってする。ひとつの命で他の全てが助かるのなら、そのひとつは切り捨てるのがあたしの大正義だ」

「フォ……」


 なんだその非難の目は。

 分が悪いトロッコ問題だろこれ。


 とにかく。

 あたしは飛ぶためにチキンを呼んだんだ。


 チキンに説教したいわけじゃあない。


「飛べよチキン。セネカってとこまで」


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