第5話 お姉さんとレッスン(実地)
「よし、じゃあ、このダンジョンが男の体内であるとほぼ実証できたところで!」
”実証できたのか?w”
”強引w”
”まぁ、とりあえず進もう”
「では、ダンジョン探索のコツをおさらいしながら進んでいくぞ! まずはレッスンワンだ!」
”おkw”
”レッスンw”
”ダンジョン初見だから助かる”
「最初に見るべきは、ダンジョンがどんな材質で出来ているか。石なのか、鉄なのか、木なのか。石だとしたら、どんな石なのか。それによって、そこがどんなダンジョンなのか、そしてどんなモンスターがいるのか予測することが出来る」
”なるほど”
”学びがある”
”考えて潜ってるのね”
「で、ここのダンジョンなんだが……赤黒くて、よく見ると脈打ってる。材質も石というよりは肉。触ると、ほんのり温かい」
”ほんのり温かいw”
”ドアップやめてw”
”人肉ダンジョン……”
「つまり! このダンジョンは……!」
”ダンジョンは!?”
”ごくり……”
”wktk”
「全くの謎っ!」
”ズコー!”
”謎なんか~いっ!”
”わからないことがわかった”
「そう。わからないことがわかった。これは結構重要だぞ。完全に未知のダンジョンで、どんなモンスターが出てくるかも謎だ。つまりこれは、かなり注意して進む必要があるということだ」
”なるほど”
”対策取れないもんね”
”要注意……っと”
さすがの掛け合いで配信を進めていくカヌカリ。
オレも、我が体内のことながら「へぇ~」っと思わず他人事で見入ってしまう。
「と、いうことで用心しながら……って、オイっ!」
尻尾ふりふりでダッ! っと、先に駆けていくシバコ。
”イッヌ行ったw”
”用心って言ってる矢先からw”
”しょうがない、彼は犬なんだ”
”シバコちゃん女の子やぞ! たぶん”
「仕方がない! 追うぞ! JK、走れるかっ!?」
「は、はい、なんとか……!」
”JK呼びかよw”
”JKがんばって~”
”追え追え!”
「みんな! 走りながらレッスンツーだ! ダンジョンの材質の次に見るのは、ダンジョンの構造だ! 侵入者を迷わせるもの、罠にはめるもの、侵入を拒むもの、様々なダンジョンがあるが、ここのダンジョンは、ずっと一本道だ! 敵が隠れてそうな場所もない! これがどういうことかわかるか!?」
”わかりません!”
”教えてください、先生!”
”どういうことなんだってばよ!?”
「つまり! このダンジョンは超単純っ! 多分、ダンジョンの主が単純なんじゃないかな! あっはっはっ!」
”草”
”ヨルくん、単純で草”
”ダンジョン主、馬鹿にされてて草”
いや、まぁ、たしかにオレは単純だけどさぁ……。
こんなに単純単純言われるのって……まぁ、探索しやすくてミカに危険が及ばないならいっか……。
ドローンカメラが、走るカヌカリとミカを後ろからTPS視点で撮影している。
ピタピタどエロサマーニットワンピに収容ベルト二本を肩からたすき掛けにしたカヌカリが、ダブルパイスラッシュ状態で、パイのパイをぶるんぶるん揺らして走っていく。
そして、その後ろを、幼馴染のミカが健康的な夏の肌を裏腿を見せながらついていっている。
”エッッッッ!”
”JKの足エッッッッッッッ!”
”ヤバ杉内でしょ!”
”今、もっとも揺れてる配信”
”オレも揺れてます!”
う~ん、カヌカリは狙ってやってる配信者だからいいけど、幼馴染がそういう目で見られてるのは……なんかイヤだなぁ……。
そう思った瞬間。
ボゴッ! ボゴッ! ボゴッ!
と、ドローンカメラから隠すように、ドローンとミカの裏腿の間に次々地面が隆起していく。
”ちょっwww なんか勃ってる!?w”
”勃ちスギィ!”
”なにこれ? トラップ? 的な?”
”ダンジョン主も立ってんだよ!”
”オレのダンジョンも立ってます!”
「あははは! 主くん! もしかしてキミ、今、『JKの太ももを、みんなに見られるのイヤだな~』とか思わなかったか!?」
「え、はい、思いましたけど……? あ、いや、ほんのちょっとだけ……」
「やはりか! キミがそう思ったから、ダンジョンが変化したんだな! つまり! キミはこのダンジョンを好きに操作できる! ということだ!」
”マジかよ、いらんことすんなよ”
”JKの太もも隠すな”
”オレたちに嫉妬すんな”
”サービスしろよ!”
「ええ……? そんな……今までこんなこと出来たことないんですけど……」
ってか、これ結構な新事実じゃないの?
なのにみんな太ももの方が大事かよ。
「そりゃそうだろう! だって、今までは犬の首から下げたカメラからしか内部を確認できなかったわけだからな! 仮に変化が起きてたとしても、気づきようがなかったのだろう!」
「あ、言われてみればたしかに……」
”カヌカリ頭いい”
”だてに最強配信者じゃないな”
”なのに、さっきは死にかけてた……”
”てかダンジョン主、天然っぽいな”
「ということで! 私達を犬のところまでワープさせてくれたまえ! ショートカットを作るなりして! 出来るだろう、キミなら!」
「はぁ……まぁ、ちょっとやってみます……」
「うむ、頼んだ!」
”カヌカリ、早くも主を使いこなしてて草”
”ショートカットは頭いいなぁ”
”一気に探索が進むな!”
”もしかして一番難易度低いダンジョンじゃね、ここ?”
「………………すみません、どうすればいいかわかんないです」
”ズコー!(本日二度目)”
”無能”
”無能乙”
”エロが絡まないと出来ないのか?”
”JKがお願いすれば出来るとか?”
「なるほど! それはあるかもしれんな! では、JK! 彼がショートカットを作りたくなるように、いい感じでお願いしてみてくれ!」
「え、えぇ……? 私がですかぁ……? えぇ~、なんかイヤだなぁ……」
「そこを頼む! バイト代一万円上乗せするから!」
「──! ……しかたないですねぇ……ちゃんと払ってくださいよぉ……?」
「ああ! 今、配信を見てるみなが証人だ!」
”一万把握”
”ほれ、上乗せ代”
”支援”
”JKに届け!(スパチャ)”
”みなさんナイスパです!”
次々と何十万円分ものスパチャが飛び交う。
カヌカリ、恐ろしい子……。
「そ、それじゃあ言います!」
「お、おう……!」
なぜか変に緊張するオレ。
「ヨ、ヨ、ヨル……? ショートカット、作ってくれないかな?」
上目遣いで拳をあごに当てキュルル~ンって感じでドローンカメラを見つめるミカ。
”うおおおおおお!”
”JKのおねだりエッッッッッッッ”
”エッッッッッッッッッ!”
”うおおおおおおお!(スパチャ)”
”……いい(スパチャ)”
”ありがとう(スパチャ)”
「…………ごめん、ミカに言われてもやっぱわかんないわ」
「こらっ! ヨル! なに私の名前出してんのよ!」
「はぁ~? お前だってオレの名前出しまくりだろ!」
スマホを通して言い合うオレとミカ。
「おい、走りながらそんなにことしてると、あぶな……」
カヌカリがそう言いかけた時。
「あっ──!」
ミカが足をもつれさせてコケ──。
ボガっ、ググ、ゴゴゴ……。
そうになったところを、地面が、お供物を受け取る両手みたいな形に隆起してミカを受け止めた。
「……え?」
”できるじゃん!”
”出来たじゃねーか”
”JK助けてて草”
”喧嘩してたのに優しい……”
”やだ! イケメン!”
”私がJKならホレてる”
「フッ……どうやら、まだ意識してコントロールすることは出来ないらしいな! まぁ、動かせるってことがわかっただけでも十分だ! そして、みんな! 敵が見えてきたぞ! このままの勢いで突っ込む!」
”また突っ込むのかよ!”
”相変わらず懲りてねぇ!”
”JKは安(全)地(帯)に隠れてて~!”
”っていうかシバコめっちゃ倒してね!?w”
”うおおお! いっけぇ~!”
「さぁ~! みんな、次はレッスンスリー! 実戦だァ!」
カヌカリが、特殊警棒を振り上げてモンスターの群れへと突っ込んでいった。