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第4話 お姉さんにぶっ叩かれる(物理)

『カヌハラカリンの体内ダンジョン配信 ゲスト JK&シバコ』


「さぁ! 配信をリアルタイムで見てくれてるみんな! そして、後からタイムシフトで見てくれてるみんな! 早速だが、喜んで欲しい! なぜなら、今から行うこの配信は! 私の歴代ナンバーワンの配信になることが、すでに確定しているからだっ!」


 ”お、始まった”

 ”今日も大口叩きよる”

 ”大口叩けるだけの実力があるからね”

 ”JK?”

 ”JKってさっきの?”

 ”シバコおるん?”

 ”さっきの部屋なんだったん?”

 ”ん?w 体内ダンジョン?ww?www??w”

 ”体内ダンジョンってなんだよ……”


「ハハハッ! みんな、早くもタイトルが気になっているようだな!」


 ”カオスすぎる”

 ”状況わけわかめ”

 ”説明はよ”

 ”カヌカリ相変わらずお美しい”

 ”服装エッッッッッ!”

 ”これ誰が撮影してるの? ドローンカメラじゃないよね?”


「うむ! では、みんなのためにわかりやすく一言で説明しよう!」


 右手に特殊警棒、左手に防弾盾を装備したカヌハラカリン(通称カヌカリ)は、すぅと息を吸うとめちゃめちゃ滑舌良く一気に話し出した。


「ここは、さっき映った男の右足のウオノメから入ることの出来るダンジョンで、さっき映った男の部屋からウオノメを通ってもう一回このダンジョンに入ってきたので、ここを逆戻りしてさっきの栃木ダンジョンまで帰ろうとしてるのだっ!」


 ”わかんねーw”

 ”なんの話……?”

 ”ウオノメ……?”

 ”ちょっと意味が……”

 ”設定盛りすぎw”

 ”滑舌いいことだけは、よくわかったw”

 ”一息で言えてすごい”

 ”うむ、意味が全くわからんw”


「そして、私がいるここっ! さっきの男の体内のダンジョン! その道案内役として柴犬のシバコ! そして撮影係としてJKのミカに手伝ってもらってる!」


 ”うおおおJK!”

 ”JKきたこれ”

 ”撮影してるJKを撮影してええええ”


「はい! ということで、来た道を逆に戻って栃木に帰るぞ! あっちには車を置いてきてるからな! このまま置きっぱなしってわけにもいかん! ちなみにここは千葉らしいぞ!」


 ”千葉?”

 ”ガチワープ?”

 ”意味不すぎ”

 ”体内ダンジョンが千葉と栃木で繋がってるって……コト?”


「そう! まずわかりにくいのは、ワープと体内ダンジョン! この二つの謎要素があるからだな! とりあえずガンガン進むので、ワープの方はそれで確認してくれ!」


 ”確認してくれって言われてもw”

 ”出たw カヌカリの後先考えず突撃w”

 ”ガンガンおk”

 ”結局いつもの配信ねw”


 オレは自室のベッドに寝っ転がって、そのカヌカリの配信をスマホで眺めている。

 あれから、再びオレの中に入ったカヌカリとミカとシバコ。

 カヌカリの「撮影助手のバイト代三万円払うから」という誘い文句に「やります!」と即答したミカと、「どのみちこいつがいなきゃ道わからないだろ」ってことでシバコ(無給)を連れて、そのまま彼女たちは配信を始めてオレの体内を奥へと進んでいった。


 カヌカリはともかく、ミカ(日給三万)とシバコ(無給)のことはちょっと心配だ。

 シバコ(無給)は、遊び慣れた場所だから大丈夫だと思うが、あの無謀なKKに巻き込まれてミカ(日給三万)になにかあったらさすがに嫌だ。

 なんてったってダンジョンにはモンスターがいるからな。

 今までシバコ(無給)の配信画面がブレブレだったから、具体的にどんなモンスターがいるのかわからないけど。

 幼馴染が自分の体内で死んで、そのまま放置とか勘弁願いたい。


 そんなことを考えてる間にも、カヌカリ一行はガシガシ進んでいく。


「さぁ! まず進みながらダンジョンの検証だ! カメラをドローンに切り替えるぞ! ここから先は、ダンジョンの主と通話を繋いで進んでいく! 助手のJKくん! ダンジョン主と繋いでくれたまえ!」


「は、はいっ!」


 プルル……。


 オレのスマホにミカから通話がかかってくる。


 ポチッ。


「あ、ヨル?」


「ば、ばかっ! なに本名呼んでんだよ!」


 ”本名草”

 ”ヨルく~ん!”

 ”てか、さっきの切り忘れ配信で名前出てたしw”

 ”そもそもシバコを配信してたチャンネル名がヨルだしねw”

 ”ダンジョンと通話しながらダンジョン潜るの新しすぎるだろ……”


「はいはい、音がハウってるから、そっちはイヤホンつけてね」


 配信慣れしてるカヌカリが指示してくる。


「あ、じゃあパソコンのとこ行って、そっちで配信見ます」


 と、ベッドから立ち上がると。



「うわあああああああああああ!」



 え? なに?


 

「あれ? どうかしましたか?」


「今、めちゃめちゃ揺れた! 死ぬかと思ったぞ!」


「え? 揺れ? シバコは今まで平気みたいでしたけど」


「そりゃ犬だからだろう! こっちは人間なんだ! 踏ん張れないから! 二本足だから!」


「あ、すみません……。今、ちょっと立ち上がったんですよね。歩くと揺れるってことなんでしょうか?」


「だね! だから、そのまま! ジッと動かないで座っててくれ! 私達がこのダンジョンから出ていくまで!」


「はぁ……。もし、トイレとか行きたくなったら……」


「我慢してくれ!」


「えぇ……?」


「我慢だ! 男は女よりも尿管が五倍長いから五倍我慢できるはずだ! もし漏らしたら、お前は今日から男を名乗るな! 女の子だ! いいな!」


 ”意味不明で草”

 ”めちゃくちゃ言ってて草w”

 ”漏らしたら女の子w”

 ”尿管の詳しさに定評のある配信者w”

 ”カヌカリ節炸裂しすぎw”


「ということで、通話もばっちり繋がって、尿管もまだ余裕があるようなので検証を進めていくぞ! どりゃぁ!」



 バシーン!



 カヌカリは、手に持った特殊警棒でバシバシと床や壁を殴りはじめた。


「いたたたた! 痛い! 痛いですって!」


 つま先がジンジンと痛む。

 ほら、タンスにぶつけた時の、あの感じ。

 カヌカリにぶっ叩かれる度に、あんな感じで指の内側がズズゥ~ン……って響く。


「こら! 揺れるだろ! 動くな!」


「めちゃくちゃ言わないでくださいよ! めっちゃ痛いんですから殴らないでくださいよ!」


「うむ……ここまで痛がるとは──やはり、このダンジョンは、この男、ヨルの体内で間違いなさそうだぞ!」


 ”なにこれ、仕込み?w”

 ”アトラクション感ある”

 ”壁や床が実際の体の内側……?”

 ”本当に人体ダンジョンのような気がしてきたw”

 ”仕込みなら手が込みすぎw”

 ”オレの推し、男の中に入っちゃった……”

 ”カヌカリのキャラも相まって犬とJKもおるし意味わからんw”

 ”カオスにもほどがあるやろwwwwwww”


「よし、では次の検証だ! このダンジョンのモンスターは、他のダンジョンのモンスターと同じなのかどうか! では行くぞ、お(とも)たちよ!」


「ちょっと! 私はお供じゃないですよ!」


「ワンっ!」


「もう壁とかは傷つけないでくださいよぉ~……?」


 こうしてカヌハラカリンと犬(無給)、ミカ(日給三万)、オレ(通話のみ)の三人と一匹は、体内ダンジョンの中へと進んでいった。

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