島田紳助さんと松本人志さんに会った……後の話
島田紳助さんと松本紳助さんを間近に見ることができた後の後日談です。
番組が放映されてエンディングのときに、私のシーンが再び流れました。たぶん……番組的にも面白がってくれて、エンディングで流してくれたのだと都合よく受け止めています。
翌年のお正月に、紳助さんからお年賀状をいただきました! ビックリした! スーツでビシっと決めた紳助さんの写真と、手書きの住所と「遠くからありがとね」という一言が書かれていました。これを30人の美女全員に出したのか……。すごくメンドクサイと思う……。私ならできない……。改めて紳助さんを尊敬する出来事でした!
それから時間はたち、私は紳助さんとも松本さんとも無縁の生活をしています。でも生きていれば、またお会いできるかもしれません♪ その時に「お前はあの時の!」そう言ってもらえたら、もう一度ご無礼の段を謝罪したいと思います。生きてりゃイイコトありますって!
お話は番組収録の当日に戻ります。
私はコンビニでお祝いのビールとサンドイッチを買ってホテルへ戻りました。緊張と長距離の移動でクタクタなので、ビールを飲んだらコテンと眠れるはず……。そう考えながらホテルのドアを開けた瞬間…………「無理!!」野生のカンが叫びました。臭くもないし、快適でキレイなホテルなのに、本能が「この部屋は無理いいいいいい!!!」そう訴えます。今ならフロントへ行って部屋を変えてもらうでしょう。でもその頃は部屋を変えてもらうという発想がなかった。
ソウ:仕方ない……。酒を浴びるほど飲んでグデングデンに酔った勢いで寝ることにしよう……。
買ってきたビールとサンドイッチを部屋へ残して、私はフラフラと町へ出ました。橋の近くに古びた雑居ビルがあって、スナックの看板が光っています。昭和な感じでずっと前からそこにある感じのお店です。観光客もいない東京のはしっこで長年お店をしているということは、常連さん相手のお店でしょう。それならぼったくられる可能性は低いかも……。私はおそるおそる、お店のドアを開けました。
お店は3人ほど座れるカウンターと、小さなテーブル席だけ。こじんまりとしたお店です。昭和な感じのソファやテーブルが置いてあって、棚にお客さんたちがキープした焼酎がズラリと並んでいる。キープが多いのは常連さんが多い証拠だし、焼酎だからウィスキーとかブランデーに比べて安いはず。でも念には念を入れて……。
ソウ:5千円でウィスキーの水割り、2杯飲めます?
年配のママと、お連れ合いらしき男性が顔を見合わせます。
ママ:5千円? 飲めるわよ。
パパ:お釣りがくるよ。
良かった! 私は安心してお店に入ります。カウンター席に案内されて、あったかいおしぼりで手を拭いていると、突き出しの煮物が出てきました。煮物とは! まさに昭和!!
ママ:お一人?
ソウ:はい。そうです。
ママ:お仕事で?
ソウ:じつはテレビに出してもらったんです!
ママ:あら! そうなの!?
私は熱く紳助さんと松本さんの話をしますが、ママもパパもお笑いには興味がないらしい。軽くスル~されました。
ママ:せっかくあなたが来てくれたんだから、小田さん(仮名)を呼ぶわ!
ソウ:小田さん? どなたですか? (なんで??)
パパ:なんでアイツを呼ぶんだよ!
ママ:だって最近、お店に小田さん来てないもの!
パパ:呼ばなくていいよ!
ママ:うるさい! アンタは黙ってて!
なんと! 二人の痴話ゲンカが勃発しました! 電話をかけようとするママと、その手を押さえて止めるパパ! お互いに一歩も引きません! なんでこうなった!?
ソウ:いや、私は一人で大丈夫ですから……!!(だからケンカしないでください!!)
ママ:いいの! すぐ来てくれるから!!
強引に電話をかけるママ。パパは不機嫌な顔です。
ママ:あらあ~! 小田さん!? たまにはお店に来てよ~! 今からすぐに!
ありえない強引さで、小田さんに圧をかけるママ! なんでそうなる!? なんでこうなった!?
小田さんはほんとにすぐに来店しました。早っ! そしてパパも小田さんが来るまでに機嫌をなおしてくれました。 江戸っ子はキレるのも早いが、機嫌が直るのも早いらしい……。
小田さんは中肉中背の50代の男性でした。突き出たお腹、ポロシャツにスラックス。昭和のお父さんという感じです。
ママ:なんだか面白いお客さんが福岡から来てくれたから、小田さんに会わせようと思って!
小田:やあやあ! 初めまして! 遠くからようこそ!
ソウ:…………初めまして…………。
なんで小田さんと引き合わされたんだろう?????
ママ:小田さんのウィスキー、残り少ないんだけど!?
小田:じゃあ新しいの入れて!
ママ:キープ入ります~! ありがとうございます~!
ビンの底に残ったウィスキーで小田さんの水割りを作るママ。そして新しいウィスキーで私の水割りを作ってくれます。
ソウ:え……? これ、小田さんのキープですよね? 私が飲むわけには……。
ママ & 小田 & パパ:いいの! いいの! 飲みなさい!!
全員:かんぱぁ~い!!
そしてママは手早く他の煮物や酢物、野菜スティック、乾き物などを私と小田さんの前に並べてゆきます。ええ? これって幾らすんの!? 私、5千円しか持ってないですけど……。
ビビりながらも黙っていましたが、刺身の盛り合わせが出てきた時はさすがに声をあげました。
ソウ:私、5千円しか……。
ママ:いいの! 心配しないで食べなさい!!
食べながら飲みながらみんなでワイワイします。こうなったらヤケクソです。後は知らん。なんとかなるだろう! 聞くと小田さんは町の印刷屋さんらしい。
ソウ:社長さんですか!
小田:社長っていっても一人社長だよ! 社員なんて一人もいねぇよ! 一人であくせく働いて、家族なんて冷てぇもんだぜ! 俺が帰ってきても出迎えてくれねぇ! 真っ暗な玄関でインコだけが迎えてくれるんだ! でもコイツが可愛くてよぉ! 俺を見て喜んでくれるのはピーちゃんだけだ!
ソウ:ギャハハハ! インコだけでもいてくれるだけ羨ましいですよ! 私なんて誰もいませんよ!
小田:そうか!? インコだけでも幸せか!?
ソウ:間違いありません!!
小田:あんた、イイ人だなぁ! 今日は会えて良かったよ!!
喜んでもらえて良かったです♪ おなかもいっぱいになりましたし、ウィスキーもたくさん頂いて酔っぱらうことができたので、私はそろそろおいとまします。
ソウ:ごちそうさまでした。お勘定をお願いします。
小田:何言ってんだ!? 金なんかいらねぇよ!
ソウ:えっ!?
小田:アンタのおかげで楽しかったから、今日は俺が払うよ!
ソウ:ええええええっっっ!? いけません! そういうワケにはいきません!!
お財布を出す私に、ママの声が飛んできました。
ママ:小田さんがいいって言ってくれてんだから、いいの! お礼だけちゃんと言いなさい!
パパ:そうそう! 小田さんも喜んでくれてるんだから遠慮はやめときな!
小田:またいつか一緒に飲もうぜ!
ソウ:…………それではお言葉に甘えて……。ありがとうございます……。
一円も払わないまま、お店を出る私……。美味しいお料理と、お刺身までいただいてしまった……。それも初対面の方に……。いいのか? これはありなのか???
首をひねりながらホテルへ帰りました。歩いている間に酔いが一気にまわってきた! 千鳥足でフラフラ部屋へ向かいます。これだけ酔っぱらったら、あとは寝るだけ!
ドアを開けた瞬間、一気に酔いがさめました! 「無理! この部屋は無理!!」
だから一体何が無理なんだよ! 怯える自分に腹が立つ! 時間は遅いし他のホテルへ行くなんてできない。どうやってもこの部屋で寝ないといけないんだから!! 背中の毛が総毛立ったまま私はお風呂に入って、言いようのない緊張感を抱えたままベッドに入りました。けれどもお酒を飲んだので、いつの間にか寝落ちしてしまいました。
(ほんま、すみません! 続きます)




