幸せの青い鳥(担当者とも呼ばれる)
「私にお仕事をください!!!!!」
電話で小学館の担当様に訴えます!
ソウ:お金がないと生きていけないんです! 作家で食べていきたいんです! ご注文をくださったらお話でも何でも書きますから、私に書くお仕事をください!!
担当:お話を書いたら見せてください。出来が良ければ本にします。姫さまじゃなくてもイイんですよ? 他のお話でも大歓迎です!
ソウ:それって児童書ですよね?
担当:そうです。児童書です。ジュニア文庫は児童書ですから。
……やはり児童書か……。実は長期的な作戦で、児童書は視野に入れてないのです……。児童書の「姫さま」は愛着がありますし、すでに出版されているから細く長く書いてゆくつもりですけれど、次の新作に児童書は考えてない。今は仕事の幅を広げる時期だと思っています。違う分野のお話を書いて実力を示したい。私は児童作家になりたいのではなくて、筆でご飯を食べてゆきたいのです。だから児童書以外も書けるとプレゼンして、幅広い分野で書くお仕事がしたい……。う~ん……。そうなると、担当様にお仕事をくださいと言うのはちがうのかなぁ……???
ソウ:どうやったらお話が書けるようになりますか? 初めて書いた長編でデビューさせてもらったので、基本的なことをまったく知らないのです。
担当:アリスとペンギンの南房先生(売れっ子先生。作品多数!)いわく、最後まで書くのが大事だそうですよ。担当者は良かれと思ってプロット(話をざっくりまとめたもの)でアレコレ言ってしまいがちですが、言われても途中で挫折せずに最後まで書くのが良い練習になるそうです。
プロットと聞くと苦い思い出が……。二巻の時にプロットでOKもらうまで3本くらい新作を考えました。やっとOKが出たので、細部を詰めるやり取りを4回した。そして本文を書こうとしたら担当様から待ったがかかった! 担当様はもう少しプロットの細部を仕上げてから本文を書くという流れにしたかったらしい。反して私は早く本文を書き始めたかった。早く書きたい私と、ちょっと待てという担当様。キレた私はメールを送った。
ソウから担当様へメール
これ以上プロットを検討する必要はありません。必ず面白くて愉快なお話にします。時間がもったいないので本文を書き始めます。
たった一冊本を出しただけのひよっこが、何十冊と本を出しているベテラン編集者様に噛みついた! 本当なら仕事を干されても文句は言えません! 担当様が「アンタ、もういらんから」って言えばジ・エンドですから! それなのに心の広い担当様は私の無礼なメールをスル~してくださって「ソウさんなら書けますね!」そう言ってGOサインを出してくださったのです。その節は申し訳ありませんでした!
その後、作家さんと話しているときにプロットの話になりました。その方はすでに複数の本を出していらっしゃる先輩作家さんです。
先輩:プロットのOKが出て、いま仕上げているの。
ソウ:担当様と何回くらいやり取りなさっていますか?
先輩:いま14回くらいかなぁ。でもまだ途中です。
えええええ!? 私より遥かに実力のある、そして実績もある先輩でさえ14回! そしてまだやり取りは続くらしい! 私、たった4回でキレちゃダメだったんだ!!!
先輩:原稿を出したら、さらに何度も校正をしますよ。校正も10回以上はやり取りします。
げげげ!! 前回の校正はたった5回でキレた……。私、担当様に「そんなにダメダメ言うなら他の人に書かせたらいいですやん!」って噛みついた……! そう言えば担当様が「今回の校正はたった5校で終わったから素晴らしくスムーズでした!」って言ってた! 私、キレちゃダメだったんだ!!
そして今回の二巻は、たった3校で終わったのですよ……。後でどうしても足してほしい一文を追加したので4校になりましたけれど、担当様的には3校で良かったらしい……。これから校閲様が見てくださいますけれど、担当様いわく、小さな変更しかないらしい。そりゃそうだ。時系列とか話の矛盾とか大きな変更が生じる箇所は担当様がチェックしてくださっているもの。校閲様は正しい日本語かチェックしてくださるのが主だから、単語を書き換える程度の変更しかないはず。
でも言わせてください! たった3回でしたけれど、当初はボロクソに言われたのですよ!! 「荒唐無稽でうちのレーベル向きじゃない」「構造が複雑すぎてわからん」「話がデカすぎてわからん」「歴史に興味がない子はワケわからん」「言葉が難しすぎて理解できん」「文体が読みにくい。文体を変えよ」「同じ語尾ばっかであきる」ボロクソのけちょんけちょんでしたわ!! ショックで3日寝込みましたから!! 泣きながら全部の課題を書き直して提出しましたから!!
そして担当様とは別に、自分で自分に猛烈なツッコミを入れていました! 一般的に政治と宗教の話はしてはいけないと言われています。なぜならモメるから。考えの違う人同士で政治や宗教の話をすると深刻にモメるから。ヘタすると戦争になるから。ですから私は「小説で政治と宗教の話だけは書くまい!」そう堅く心に決めていました。 ところが完成したお話は、政治と宗教がガッツリ入った政治と宗教てんこ盛りの話! いたいけな子どもが読む児童書に、なんで政治や宗教がカラむんだ!! バカか!? 私はバカなのか!? 間違いないバカだ! 大馬鹿野郎だ!! なぜ売れなくなる要素をわざわざ盛り込む!?
でも言わせてください!(← こればっかりやな)前のお話も次に出るお話もそうですが、私が考えたお話じゃないんですよ! 主人公たちが勝手にわああああって走って行って、知らないキャラたちがわああああって出てきて、どんどん話が進んでゆくのですよ! 私はオタオタしながら話を記録するだけで精一杯なんですよ! 「ああ! 政治の話はやめて!」「宗教の話は禁忌だから!」私はキャラたちに言うのですが、アイツら知らん顔で暴走するんですよ!! なんなら担当様から「このお話、末裔の方に訴えられませんかね?」って心配されたくらいなんですよ! それとは別に「特定の国の怒りを買うかもしれない……」と心配になったほどなんですよ!(← さすがにこれは国名を変えた)そんな不穏なお話なのに、児童書……。いたいけで無垢な可愛い児童たちが読む、清く正しく美しい児童書……。
これだけ読むと「どんだけ暗い話なんだ?」と思われるかもしれません。ぜんぜん暗くないです! 明るくて愉快でハッピーエンドのお話です! いたいけな児童にも読んでほしいが、日々がんばっている大人の方にも読んでほしい! そして愉快な気持ちになって元気になっていただきたい!! ですから時代考証とか歴史に基づいた部分はガチです! 歴史上の出来事をベースにして、本当にあった話かもしれない……という説得力は十二分にあります!! ってか本当にそうだったんじゃないかと私はニラんでいます! だって信長にイジめられてた秀吉が信長の草履をふところであっためるなんて不自然でしょう!? いじめっ子の草履なんて、ふところに入れたくないですもの!!
……すみません。つい暴走してしまいました。とはいうものの、私の名前で書いた私の本の文責は、すべて私にあります。一言一句、責任を持って書いていますので、訴えられてもよその国からニラまれても真摯に受け止めます。でもできれば訴えないでください……。
話を元に戻します。閑話休題です。
児童書の担当様に仕事をくださいとお願いしていた場面です。
担当:お話を最後まで書くのも良い練習になりますが、ノベライズを書くのも良い練習になりますよ~! すでに完成している漫画や映画を文字にするのは、すごく良い練習になります。それにノベライズは初版の部数が多いですから印税も多いですし。
担当様はドラえもんやコナン君のノベライズを担当されています。以前にこれらのノベライズの初版部数を大まかに教えてもらいました(詳細は企業秘密なので、さすがに教えてもらえなかった)が、とんでもない部数でした! 印税は出版部数で決まりますから、部数が多くなれば印税だってハネ上がる!!
ソウ:良い練習ができるうえに、莫大な印税までもらえる! ノベライスのお仕事って素晴らしいですね! やりたいです! 私にやらせてください!!
担当:でも仕事の依頼がないと、できませんねぇ……。
ソウ:その仕事を割り振るのは誰なんですか!? 誰が割り振ってるんですか!? その方に仕事をくださいってお願いしますから、教えてください!! 誰ですか!?
担当:そういえば、私ですねぇ……。
なんてこったい! 幸せの青い鳥がこんなに近くにいた!! そしてこの青い鳥は、自分が青いと気づいてなかった!! おい青い鳥、私に仕事を寄こせ!!
担当:でもまずは、二巻を書いてくださいね~♪
そうですよね……。そっちが先ですよね……。そして二巻が好評ならすぐ三巻の作業になるし、不評だったらサヨナラですよね……。いずれにしてもあなた様から、ノベライズのお仕事はいただけませんね……(涙)。
そして担当様からのお仕事をあきらめた私は、賞金を手にすべく新しい公募に着手しました。なろうで公開している「お願いですから……」です。一等賞をもらえたら生活費が手に入る! でも賞金がいくらだったか忘れた(← こういう所がビンボーから抜け出せない理由だと思う)。
規定枚数は書けたので、さっさと次の公募に応募しよう……。そう思っていたら主人公のマユが泣いて私に訴えました。
マユ:私まだ元の世界に戻ってません! お願いですから元の世界へ戻してください!
ソウ:ハルモニアにいたら王か王子と結婚できるんだから玉の輿じゃん。そっちで楽しく暮らせばいいじゃん?
マユ:私は自立して筆で生きていきたいんです! 結婚なんてできません! お願いだから元の世界へ戻して! 書きかけの原稿を担当様に渡したいんです!
ソウ:そうなん~? もったいない……。
こういうやり取りがありまして、今は「お願い……」の続きを書いています。書いても一円にもならないのですけれど、縁があって知り合ったキャラが泣いて頼むなら責任は果たさねばなるまい……。そしてマユの話が始まる前のサブキャラの話を書いているのですけれど、サブキャラとは思えないエピソードの濃さで、この二人の話で本が書けるんじゃなかろうかと……。二人にそんな話があったなんて、ぜんぜん知らんかったさ……。結局今回もキャラたちに翻弄されてオタオタと記録係をしています。
………………いつか…………。いつか、自分で考えたお話を書きたい…………。




