神崎巡査部長の事情聴取
どうにか盗難車解体ヤードを脱出したウチらは、少し離れた空き地に退避した。
山裾からエッチラオッチラと青山君と西爪君が自転車で走って来る。
「オーイ! こっちだよー!」
ミクリンが手を振って二人を呼ぶ。
それに気付いて二人が空き地に入ってきた。
その二人を追い越して次々とパトカーや消防車が走り抜けて行く。
「宇蘭と龍崎は?」
青山君がミクリンに問いかける。
「大丈夫。三人とも車の中。アーシらが確保したから」
「三人?」
西爪君の問いかけにニッチが答える。
「笹原とか言う奴もいっしょだよ。でもケガしてるから…」
「どういう事だよ。そもそもお前らどうしてここに居るんだ?」
青山君がニッチを問い詰める。
「アーシはイワケンのカブで追いかけたから…」
「わたしとカッチンは、莉凰のお兄さんに運んでもらったんだ。」
「あのね、ウチらが着いた時には兄ちゃんとイワケンとニッチ達が屋柄を追い詰めてたんだ。笹原君は龍崎と虎谷を庇って屋柄達にボコられて、それでも二人を取り返そうとして…」
「それでね、僕らも加勢してどうにか二人を取り返せたんだけど屋柄達はあのフェンスの中に逃げ込んじゃったんだ」
「ほー、岡部と安藤は自転車で俺たちを追い抜いてここ迄たどり着いてたんだ」
青山君が胡乱な表情でウチらを睨む。
「そう言えば岡部はムチャクチャ自転車早かったもんなあ」
西爪君が感心した顔でアンナに相槌を打つ。
「そうなんだよ。アンナのロードサイクルはビア○キだからね。こんなひどい見た目にされてるけれどニ○ーネ7なんだよ。やっぱりイタリアの名車だけの事はあるよね」
ミクリンがまくし立てる。
「そうじゃねえだろう! おかしいだろうが! 西爪もちょっとは疑えよ」
青山君が納得いかなそうにそう言った。
「まあ良いわ。今はそう言う事にしといてやるよ。それで宇蘭と龍崎だけど…」
「よく寝てるよー(泣)。とっても幸せそうにー(泣)」
「ねえ青山。アーシはこの二人ぶん殴っても良いと思うんだけど」
「そうだよ。この二人を庇って笹原君はボコボコにされたんだよ。ウチが代わりに殴っても良いよ」
「すまん。けど勘弁してやってくれ。二人も笹原を助けるために必死で説得したのは事実なんだ」
「…安藤の場合は何か私怨を感じるんだけどな」
西爪君が鋭いところを突く。
…君のような勘の良いガキは嫌いだよ。
いきなり一台のミニパトが空き地に滑り込んできた。
…なんで?
驚いて振り返るウチらの眼のまででミニパトのドアが開く。
「あんたたち! こんなところで何してるの!」
神崎巡査部長だ。
いかん、完全に怒ってる。
「ち…違うんです、神崎さん。ぼ…僕らはみんなでピクニックに…」
いや、アンナその言い訳は無理が有るだろう。
うすら寒いこんな山道の空き地で、もう七時前で周りはもう真っ暗だし。
「すみません、おまわりさん。俺の知り合いの女子が二人ヤカラに絡まれて、無理やり酒を飲まされて連れ去られかけたんです。それで友人の笹原って奴が助けようとしてケガをした見たんで、救急車の手配をお願いできないでしょうか」
「笹原君って岩崎君のカブを盗んだ人で良いのかしら。連れ去られそうになったのは虎谷さんとお友達の様ね。男子二人と虎谷さんのお友達は初めてだけれどそれ以外の子はみんな一回以上会った事のある人ばかりね」
胡散臭そうな顔で青山君を見ながらも神崎巡査部長は救急車を手配してくれた。
「本当にこいつらは関係ないんです。俺たち四人が笹原の所に行ったのはタクシーの運転手が証言してくれます。安藤のお兄さんに迎えに来てもらっただけで安藤たち五人も心配して付いてきただけですから。なあ笹原」
「ああ、こいつら四人が俺の所に自首を進めに来たんだ。そうしたら屋柄が来て…」
青山君がジムニーの中の笹原君にそう言うと笹原君も苦しそうに顔を歪めながらも肯定の返事をする。
「まあその話は後でゆっくり聞きましょう。でっ安藤さんと岩崎君はどうして白目を剥いてるの?」




