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世紀末救世龍伝説

 フェンスの中は世紀末救世主伝説の世界だった。

積みあがった廃車の山。

プレハブの事務所らしき建物と二階建てのプレハブの宿舎のような建物。

そして巨大なテント倉庫の開け放たれた扉の向こうには分解されたバイクや自動車が散乱している。

二台のコンテナトラックがその前に城壁の様に停車しており、改造車両が積み込まれていた。


「アンナ、警察に連絡して」

「リオ、アンテナが立たないようー。どうしよう」

「それならそれで何とかするよ」

 ウチは右手を掲げると指先に魔力を集中させる。

そして上空めがけて魔力を放つ。

通信衛星が引き寄せられてくる。

「ワア、一気に四本立った。モシモシ警察ですか誘拐事件です。場所は…」


「みんなそこから動くんじゃないよ。ってアンナ以外は動けないかな?」

 ジムニーの四人はすでに放心状態である。

「ナンマンダブ、ナンマンダブ」

 イワケンはカブにしがみついて震えている。


 イワケンとジムニーの四人の方を見て黒のカラコンを外すと結界の魔方陣を編む。

そしてウチはアンナ以外のみんなに風の結界を纏わせる。

「リオ! 両眼が光ってる。魔方陣が浮いてるよ!」

「隠しててゴメン。ウチ本当は龍の転生で魔力もちなんだ」

「いや、それ初めに僕に言ってたし。羽が生えてるのも、宙に浮いてるのも見てたし。多分みんな知ってると思うんだけど。」


「えっ? そうなの?」

慌てて車の中の四人を見る。

失神してる兄ちゃんは置いといて、他の三人はうちの方を見てコクコクしてる。

「なんで? なんでバレてたしー」

「アーシの目の前であんなに派手に暴れまわっててなんでバレないと思うのよー」

「でっ…でも二回とも顔は隠してたし……」

「あんたアーシにドックタグがどうとか言ってただろうが」

「ジャンクヤードの時にわたしたちを車に乗せたのはアンドリンだったよねえ。」

「リオちゃんはパパの前でお義姉さんにヘルメットを返してたよー(泣)」


 ウチとした事がウカツだった。

そんな些細なことまで見抜くみんなの推理力を侮っていた。

「なんかアーシらバカにされてるような気がするんですけど」

「アンドリンは絶対私たちの事舐めてるよねー」

「気付かれないと思ってるのがオカシイよー(泣)」


「よーし! バレてるなら遠慮はいらない。思いっ切りぶちかましてやりますか!」

そう告げると、ウチはカバンの中ならジャージを引っ張り出すと、ブレザーとベストを脱いだ。

ブラウスの上からジャージを纏うとブラウスのボタンを外し袖を抜く。

「アンナ―。悪いけどブラウスの裾引っ張ってー」

アンナはウチのブラウスをジャージから引っ張り出しながら聞いてくる。

「えっーと、リオ。何してるのかなぁ?」

ウチはジャージのズボンをはいて、スカートを外しながら答える。

「着替えだよー。ほら、制服破るわけにいかないじゃん」

「それはそうなんだけど、もう悪者たちみんな集まって来てるんだけど…」

「ゴメーン、アンナ。ウチの制服預かっといて」

脱いだ制服をアンナに押し付けると、アンナごと風の結界の中に押し込んだ。


「リオ! 出してよー! 僕も行くから!」

アンナが叫ぶ。

「アンナはウチの制服が破れない様に守ってて!」

三人も車から降りてきてアンナに駆け寄る。

「リオちゃーん(泣)。奴ら来たよー(泣)」

「莉凰、龍崎の事頼んだよ!」

「やっちゃえー! アンドリン!」


ウチが口笛を吹くとイワケンのカブが震え出した。

「カモン!」

”ブルルルル、ウー、ワンワンワン、ワオーン”

「イワケン、メット貸しな」

カブがイワケンのメットをハンドルに引っ掛けてうちの下に走ってきた。

ウチはそのメットを被ると一歩踏み出す。

「ピンクのハートは愛ある印しるし! ()ぎたててフレッシュ、桃豚仮面!」

「「「「おーい、名前まちがってるぞー」」」」


ウチが眼光鋭く振り返ると、トレーラーや作業場からわき出した悪者共が集まって来ていた。

ハングレやヤクザだけじゃない。

アフリカ系やアラブ系、南米系や欧州系やアジア系の明らかに不法就労者らしきヤカラが大半を占めている。

そして屋柄先輩の手下どもがハイゼットカーゴのリアゲートからぐったりした龍崎と虎谷を引きずり出そうとしていた。

その足元には苦悶の表情を浮かべた笹原が転がされている。


「お前ら! 汚い手でその二人に触れるな!」

ウチは怒りを込めて背中の羽に魔力を注ぐ。

ポコペン!

背中から羽が飛び出したのを感じる。

振り返る二人向かって一気に間合いを詰めると、そいつらのヘルメットシェードを両手で突き破る。

そのまま二人の頭を鷲掴みにすると両脇へ放り投げたやった。

そして両脇に龍崎と虎谷を抱え上げると羽をはばたかせて後方に飛び帰る。

ぐったりとした二人を結界の中に押し入れると、ニッチとミクリンが二人を抱きかかえた。


「気を失てるみたいだねえ。二人の事はアーシらに任せといて」

「アンドリン早く戻っておいでよ。急いで逃げよう」

「僕が扉を壊すからリオも急いで!」

「もう後はパパ達に任すんだよー(泣)」


「ウチ、笹原も連れてくる」

「なんで? アンドリン、そいつはハングレの仲間だったんだよ。身から出た錆だよ。あんたが危ない事する必要なんてないんだから」

「そうだよ、そんな奴の為に莉凰が危険な橋わたる事無いんだから」

「警察が何とかしてくれるから帰って来るんだよー(泣)」

「でも、龍崎と虎谷を必死で守ったから。龍崎はうちの友達だから。虎谷だって良い奴だったから」


「みんな心配かけてゴメン。でもね笹原って奴、このままほっときゃ殺されちゃうかもしれないよ。ウチの友達を命がけで守った奴には恩を返さないといけないんだ。だから助けるよ、ウチは」

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