ハンバーグの憂鬱
ウチは待ち時間の間に龍崎にラ〇ンを送っていた。
”ポン高ラグビー部に向かう虎谷を確保”
”了解! 拘束を続けて”
”アンナが拘束中。青山君の退避を要請する”
”青山には撤収要請中。報酬はチーズインハンバーグメンチカツを提供予定”
”不肖、安藤! 全力を以て虎谷を阻止する!!”
現場にパトカーと警官がやって来た。
神崎巡査部長が呆れ顔でウチらに話しかける。
「又あなた達なの。あれほどかかわるなって言ったのに」
「ウチらの前で勝手に事故って犯人が逃げて行ったんだから」
「そうだよ。僕らは悪くない。リオが口笛を吹いたらカブが勝手に引き返してきただけだからね」
「そんな犬みたいなバイクがある訳無いでしょう」
「居るよここに。ねえ、トラガリさん」
「ワタシに同意を求めないで。でもこの先で急にバイクが勝手にUターンして逆走したように感じたわね。それからワタシは虎谷だから、間違えないで!」
神崎巡査部長の事情聴取が続くなか、ウチのスマホに着信音がする。
「虎谷、もうすぐ龍崎が来るって」
「なにそれ、なんで龍崎が来るの?」
「ウチがあんたの尋問中の写メ入りでラ〇ン送ったから」
「あなた、なに余計なことしてるのよー」
「花梨すごく喜んでたよー。スタンプ連打だよ。見る? トラガリさん」
「見ないわ! それから虎谷だから」
イワケンのカブはロックを壊されて細工をされていたらしい。
警察が回収して持って帰った。
ウチらも事情聴取が終わり、警察車両が撤収し始めたころに龍崎がやってきた。
「アンナ、安藤。ご苦労様。約束通りガ〇トへ行こうよ。虎谷の醜態を詳しく聞かせて」
「あなた、弘明はどうしたの」
「ラグビー部は練習上がって小腹すいたから何か食べに行くって」
「どこよ」
「あんたに言うわけないでしょう。さあみんなファミレス行こう」
「そうだ、トリガラさんも僕らと一緒に行かない?」
「そうね、ご一緒させて頂こうかしら。それからワタシ虎谷だから。あんたワザと言ってるでしょう。感じ悪い娘ね」
「来るのは良いけど、あんたには奢らないからね。虎谷宇蘭。それからアンナはとてもいい娘よ」
「あら、あなたごときに借りを作るつもりは無くってよ。龍崎花梨。そうね、その娘じゃなくてあなたの学校の女子生徒がみんな感じが悪いんだったわ。言い間違えたわ。ごめんね、赤眼さん」
「ねえ、リオ。僕ちょっとこの二人が怖いんだけど」
「ウチも怖いから、ハンバーグ食べたらすぐに帰ろうよ」
「あら、つれないこと言わないでよ。私たち一蓮托生でしょ」
そういうとウチらは龍崎に腕を掴まれて連行されて行く。
「香利奈さ~ん」
「ゴメンわたしもう帰るから」
香利奈さんはサッサと帰ってゆく。
「今の人、悪夢庵のウェイトレスさんだよねえ。誰?」
「カッチンのお義姉さん」
「へー、兵頭のお義姉さんって社交的でカッコいいねえ。あまり似てないね」
「まあいろいろあるみたい」
そんな話をしながら四人でファミレスを目指す。
店に入ると四人掛けのテーブルに龍崎と虎谷が向かい合って座る。
もうすでに臨戦状態で火花が散っている。
龍虎相打つ状況にウチとアンナは怯えつつ立ちすくんだ。
「あんた達早く座りなさいよ」
龍崎が急かす。
涙目のアンナがウチに目で訴えかける。
仕方ない。
ウチが虎谷の隣に座る。
アンナは少しホッとした様に龍崎の隣に座った。
ヤバイよなあ、まさか誘ったら着いて来るとは思わなかったよ。




