復活の邪神龍-2
人を呪わば穴二つのリオでありました。
ナニこれ。
オッドアイって、何なの。
いや、両目とも赤くなったらもっと困るんだけどね。
それよりナンで今日なの。
いや、他の日でも困るけども。
ヤバイよ、どうすんのこれ。
大急ぎで龍崎に熱が出て今日は行けないとラ〇ンを送る。
すぐに既読がつくと“それは大変ね。お大事に。”と返事が返ってきた。
これで一安心。
あとは左目対策だ。
大急ぎで着替えて机の引き出しをひっくり返すと、昔買ったサングラスを引っ張り出す。
ハート形のサングラスって、ナンでこんな物買ったし、ウチは!
けれど今、眼を隠すものはこれしかない。
ハートのサングラスをかけて、ディ〇ニーシーで買ったピンクのミ〇キーの耳付きキャップを深くかぶり、ピンクベージュのスプリングコートの襟を立てて、マスクを付けて、ドラッグストアーへ走った。
ピンクキャップにピンクのコートってどこの林家だよう。
完全に危ない人だようー。
すれ違う人の目線が痛いようー。
ドラッグストアーの店員の視線も痛いよー。
大急ぎで眼帯を探すと無言で千円札と一緒にレジにたたきつけた。
「レジ袋はどうされますか」
ウチは小声で呟く。
「いるか!ボケ!」
眼帯の箱とお釣りを握りしめて大急ぎで店を出る。
うつむいて小走りに家路をたどる。
そして家の前までたどり着いた時、
“カシャ”
シャッター音がした。
「あら、安藤さん愉快な格好をしているのね」
龍崎がスマホをかかげて楽しそうに笑っている。
「イエ、人違いなのにゃ。ワチシハ読切新聞の購読セールスレデーなのにゃ」
「あらあら、そうでしたの。マスクで声がコモって良く聞こえませんわ」
そう言うとウチのマスクをゆっくりと外した。
“カシャ”
「ナンで又、写メとるし!」
「ゴメーン(テヘッペロ)。なんとなく条件反射」
「ナンでうちの家の前に居るし」
「お見舞いに来たのよ、安藤―。熱が出たんじゃなかったのかしら」
「そっ、そうなんだよね。それでドラッグストアーに行ってたので・・」
「熱が出たから眼帯買いに行ってたんだ」
わたしの手から眼帯の箱を奪い取る。
「いや、これはビオフェ〇ミンと間違えて・・・」
「熱冷ましに下痢止めを買いにゆくんだ」
今度はサングラスをはぎ取ると、
“カシャ”
「カラコンなんて結構気合入ってるじゃない」
「違うの、聞いて。誤解なの。説明はできないけど誤解なの」
龍崎は箱から眼帯を出すとウチの左目にそれをあてる。
そしてその上からハートのサングラスをかけてウチの手を引っ張る。
「やめて、待って、このサングラスは外させて」
「さあ、行こうか」
引っ張る手にさらに力が入る。
「おねがーーい。この格好で駅に連れて行こうとしないでーーー」
龍崎は無言でサングラスを外すとウチのコートのポケットにしまった。
そして私の手をもう一度引っ張ると、
「さあ、行こうか」
「お願い着替えさせて。後生だから。許して」
「大丈夫よ。電車でたった二駅だから」
「この格好で電車に乗せないで。お願いしまース」
「グズグズしてると電車に乗り遅れてしまうわ」
ウチの手をぐいぐい引っ張って行く龍崎に懇願する。
「ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ」
「さっさと制服に着替えてこい!!」
津軽の地吹雪のような声がウチの心臓に向けて放たれた。
「イエッス、マム!!」
ウチは必死で家の中に駆け込んだ。
林家を語るリオの私服のセンスは壊滅的です。
つま先から頭まで私服はピンクしか持っていません。




