閑話 週末は何かが起こる(ミクリン視点)
瀬利香ちゃん拉致事件の現場に現れたミクリン視点です。
土曜日の朝一番にアンナにラ〇ンを入れた。
もちろん香利奈さんの事でだ。
わたしも西爪君にはああ言ったけど、そんなこと知ったこっちゃない。
ここまでかかわってそれで終わりじゃあ、気になって仕方ないんだよ。
『ポンポコ東の空手部って、僕が投げ飛ばしたヤカラで間違いないと思うんだよ。ニッチをだまして連れ去ろうとした奴らだからロクな奴じゃないし、あれで心を入れ替えたとも思えないんだよ』
『それじゃあ、香利奈さん達も危ないよね』
アンナからの情報は、当事者なので確度は高い。
『カラオケ店の名前もミユキさん達が言ってて店の名前と一致するし、ミユキさんの話しじゃあ店員もグルみたいだしね』
『カラオケ店って言えば完全に個室でしょう。店員もグルなら何かされてもそとからはわからないよね。スマホ取り上げられたら終わりだよ』
『あのヤカラ達なら、ドリンクとかに変な薬いれるとかやりかねないと思うんだ』
強姦目的でニッチとアンナを拉致し大量のハングレを動員して、おまけに中学生への大麻密売。
うちの弟まで巻き込みやがって、許せない。
『…。ヤカラ殺すべし(ボソッ)』
『ミクリンなんて言ったの?』
『だいじょうぶ。ただの独り言。それよりわたしたちも行った方が良いよねえ。待機してて何か起こりそうなら通報くらいは出来るでしょう』
『うん、僕もそう思う。絶対行った方が良いよねえ』
香利奈さんのバックには現職の刑事がついてるんだから滅多な事は起こらないだろう。
『事件が起こりそうならすぐ通報だよ。…リアル警察24時』
『ミクリン、なんて言ったの?』
『何でもないよ』
『変装して現場の監視をしようよ。昨日西爪君から集音器強奪してたよねえ』
『…アンナは顔を見られてるし、わたしも気づかれない様に変装は必須だよね』
『フリルのドレスはバレそうだから無理だよねえ。やっぱりキュアパインかな。キュアベリーはちょっと僕には似合わないよねえ。』
『まあ何でもいけど、赤が良いよ。赤い服装。スペイン宗教裁判も赤だしね』
『キュアパッションもありかなあ。ダークなイメージも良いよねえ。それなら顔も隠せるから赤いパーカーにしようかな』
『わたしも何か変装を考えてく行くよ。確かジャンクヤードって荒ポン町だったよね。場所判る?』
『地図アプリで分かるから近くのお店で待ち合せようよ』
『それじゃあ1時に荒ポン町のマ〇クで待ち合わせしようか』
『僕も赤いのパーカーで行くよ。1時にね』
荒ポン町のマ○クに行くとアンナがすでに待っていた。
「えっーと、ミクリン。なんでセーラー服着てるの?」
「うん、中学の時の制服なんだ。これならポン高生だって気付かれないでしょう」
そう言うアンナは包帯だらけのティデベアがプリントされた真っ赤なパーカーに黒のロングスカート。
オマケに右眼はいつもの赤いカラコンだよ。
「それからアンナもパーカーをかぶっても顔バレするから、マスクも付けた方が良いよ。ワタシ準備してきたから」
わたしはそう言うと準備していた真っ赤なマスクをアンナに手渡した。
渡されたマスクには大きく二字の漢字が書いてある。
「えーっとハイサツ? 何このマスクは」
「面貌だよ。カッコいいでしょう。ヤカラ殺すべしで輩殺だよ」
「……。分かった。向こうに着いたら付ける」
「あ、そうそう。決め台詞もいるよねえ。カイシャクしてやるとかハイクを詠めとか」
「……。うっうん。赤だからキュアパッションかなって。思うんだけど」
「それなら瀬利香ちゃんが言ってたキュアパパイヤとかアンドリンのマネして黄熊仮面とかも良いね。」
「……うっうん。考えてみるよ」
「確か香利奈さん、ジャンクヤードに二時とか言ってたから、そろそろ行こうか」
「ねえミクリン。通学ヘルメットは良いけどなんでゴーグルがついてるの?」
「カッコいいでしょう。お気に入りなんだ」
「………。じゃあ行こうか。」
わたしたちは自転車でジャンクヤードに向かった。
店の駐輪場に自転車を止めると店の裏に回る。
物陰から様子を窺うとポコポコポコポコと変なエンジン音が近づいてくる。
香利奈さんだ。
店の前で待っていた二人組の女性と一緒に店に入って行く。
「アンナ、どの部屋に入ったかわかる?」
「うん、こっちだよ。この壁の向こう側の部屋」
わたしは昨日西爪から強引に借りたコンクリートマイクとか言う代物を壁に充てた。
「何か話してるようだけど良く聞こえないなあ」
「ピザとフライドポテトと唐揚げだって」
「ああメニューオーダーしてたんだ。ってアンナ顔隠して!あの黄色い車アンドリンのお兄さんのじゃない?」
「あっ本当だ。あれ?カッチンと師匠が降りてきたよ」
「店に入ったね。こりゃ面白くなってきたねえ」
西爪から奪ったコンクリートマイクはまるで聞こえない。
細部まで聞こえるアンナの地獄耳はすごいなあ。
「ミクリン!大変。瀬利香ちゃんとカッチンが部屋に乗り込んじゃったよ!」
「マスク付けて!わたしたちも乗りこむ準備だよ」
そう言うとわたしはピンクのマフラーを首に巻く。
「…そのマフラーは、リオが喜びそうだね」
「あーっ! 瀬利香ちゃんが攫われた!」
「アンナ! わたしたちも打って出るよ!!」
わたしは大急ぎでマスクを付けるとアンナと一緒に通用口に向かった。
もちろんアンナがこっちに逃げたって指示するからだけどね。
「ジャジャーン!まさかの時のスペイン宗教裁判」
わたしのお決まりの決め台詞。
「行くなら僕たちを倒して行け」
「お前たちの罪状は三つある。恐喝と誘拐と麻薬と暴行だ。あっ四つだった」
そしてお決まりのギャグ。
「ゲッ! あの時のゴスロリ女!」
まあバレるだろうねえ。
服装変えてもアンナの右目のカラコンが自己主張してるもん。
でもどんなギミック使ってるんだろう目が光るって。
今度教えてもらおうかな。
「ちがーう!僕は赤い病み熊、プ○さん仮面だ」
ポーズを決めるアンナの横で私もポーズを決める。
「そして、アタイはシ・ニンジャのソウルを宿し者!」
さっき付けたサクラ・エンハンスメント代わりのピンクのマフラーも決まっていると思うんだ
顔は通学用メットとゴーグルとマスクで隠れてるし。
「アンナ、ミクリン何やってんのー!」
アンドリンの怒鳴り声が聞こえる。
カッチンと香莉奈さんも表に飛び出してきた。
「ちっ違うぞ! アタイはシ・ニンジャの……」
「わかったから、来て!」
アンドリンがわたしの手を引っ張って黄色い四駆に拉致されちゃった。
やりすぎたかなぁ。
ミクリンは割とロクでもない事を考えてました。
しっかり反省すべきです。




