閑話 ドンジャラ放浪記-2(カッチン視点)
カッチンが麻雀に詳しいのもイカサマに精通してるのも勿論あのおっさんの影響です。
あのおっさんは家庭での話題が無いため、こんな話しかしていなかった様です。
”アンナちゃん、あいつら三人で通しをしてるから徹底的に鳴いて場をかき乱してやるんだよー。”
その一策鳴いちゃえ。
「ポン。」
順子なんて崩しても牌が見えいてるからトイトイ狙うんだよー。
その九萬も鳴くんだよー。
「ポン。」
九萬鳴いたから三策は二枚とも切るんだよー。
一筒の暗刻を槓すれば、次に自模るのは九策で一萬と九策で聴牌っちゃうよー。
「カン。」
えーい、ついでだから一策も槓しちゃえー。
「も一個カン。」
やったー、九萬でたー。
「ロン。嶺上開花。」
でもね、アンナちゃん。
ロンしたら嶺上開花じゃないんだよー。
「姉ちゃん、チョンボじゃねえの。嶺上開花付かないぜ。」
こいつバカなのかなー。
普通にトイトイだよー。
「でも通るんだよーこいつー(泣)。混老頭が付いてるからー(泣)。」
「なんだよーそれ。ゼッテー不合理だ―!!」
泣きわめいても現実は変わらないんだよー。
私たちはゾーンに入って、牌が見えてるんだよー。
「不合理こそ博打だよー(泣)。不合理に身をゆだねてこそギャンブルだよー(泣)。」
もう負ける気しないよー。
「麻雀って楽しいよね。今日もいろんな人と打ててとっても楽しいよ。」
「「「うるせー!全然楽しくねえわー!!」」」
良いよー、アンナちゃん。
バッチリあいつらのメンタル削ってるよー。
「くっそー。おめえら、やるぞ。」
やるって、お前らさんざんやってきてるだろーがよー。
「あの女、出来るだけ鳴かすな。場が乱れるからな。」
なにが場が乱れるだよー。
お前らが世の中乱してるんだから、今更なんだよー。
”アンナちゃん、ピンフ・タンヤオ狙いだよー。捨てる牌は指示するよー。”
「チー。」
「ポン。」
「カン。」
「チー。」
「カン。」
「チー。」
やっぱりこいつらバカだよー。
考え無しに鳴きまくって手配進んで無いんだよー。
アンナちゃんのマネして混老頭狙ってもちゃんと牌が回ってないんだよー。
「エッ?エッ!アレー?」
ほらね、アンナちゃん。
ちゃんと自摸牌見てれば和了れるんだよー。
「えーと僕、今日これ和了がって良いんですよねえ。自摸。その役の名前の意味は、海に映る月を掬い取る…海底撈月。」
「「「嶺上開花じゃないんかーい。」」」
アンナちゃん、すごいよ。
二つも役の名前知ってたんだね。
でもね、それ間違ってるから。
「アンナちゃーん(泣)。海底撈月じゃないよー(泣)。ただの自摸和了だよー(泣)。」
「アー驚いた。ビビらせるなよ。」
でも翻数聞いたらおしっこ漏らすよー。
「でも平和、タンヤオ、一盃口に三色も付いてるよー(泣)。おまけにドラがカンドラとカン裏で三枚乗ってるよー(泣)。」
ほーら、ちびったでしょー。
「てめー。ぶっ殺されてーのか。」
脅しはヤカラの常套句だよー。
口だけのガキどもにビビる訳無いよー。
「圧力を背景にした取引は通じないよー(泣)。いい加減、悟った方が良いよー(泣)。」
ここは実弾を見せて分からせた方が良いかなー。
それじゃあホットプレート出そっと。
「こいつ本気で焼き土下座させるつもりだ。」
初めに言ったはずだよー。
「便利なんだよー(泣)。悪ぶりたい子の仮面を剝がすのにー(泣)。」
おバカさんはちゃんとお話を聞いているべきだったんだよー。
「どうすんだよこれ。」
「クッソー。ラス親だ。もうなりふり構ってられねえぜ。」
あんた達は初めからなりふりなんて構って無かったんだよー。
日本語はしっかり学習しなきゃだぞ。
おやおや、あいつら親に字牌ばかり送りはじめたよ。
字一色狙い見え見えなんだけどなー。
あれあれ、あいつの手配が一枚違う牌に変わってる。
あっ、自摸牌二枚持っていったな。
親の牌も一枚変わったよ。
裏で渡したみたいだね。
これはちょっとヤバいかも。
アッこいつも二枚持っててる。
親も二枚持ってちゃった。
バカだよこいつら。
親が多牌してたら親チョンボだよ。
牌を握ってるところを抑えればいつでも勝ちじゃない。
もう少し考えて、イカサマやりなよ。
全員多牌って誰を捕まえてもそこでゲーム終了だよー。
あーあ、白か西の双碰待ちで聴牌っちゃった。
牌を一枚右手に握り締めてるのは単騎待ちのポーズですか?
どーせ、どちらでも行ける様に一枚ずつ二枚隠してるでしょ。
あーあ、リーチかけたね。
ありゃりゃー、アンナちゃんの自摸牌が変わっちゃってるよー。
牌山入れ替えたみたいね。
自摸切りで負けちゃうね。
字一色、四暗刻、大三元、リーチ、一発、やばいね、これは。
”アンナちゃん、この牌捨てたらあの親の右手握り潰して―。右手の中でズルしてるからねー。”
「来たちゃたよー(泣)。ぬるりと―(泣)。」
「ロンだぜ!」
今だよ、アンナちゃん。
さあその右腕を握り潰せ―――!
「いてー!何すんだ!」
アンナちゃん、絶対に放すんじゃないよー。
「ぐっ、ああああ。」
あれぇー、今ミシって音がしたかな。
骨ごとやっちゃったの?
アンナちゃんすごいね。
「一枚多いよねえ。イカサマ?チョンボだよねえ。」
そうそう、アンナちゃんもっと畳みかけてやらないと。
「親チョンボだよー(泣)。多牌は満貫罰符だよー(泣)。」
私とアンナちゃんのペアには死角は無いんだよー。
「負けたら困るんだよー。許してくれよー。」
初めの威勢はどうしたのかなー。
えらく威嚇してくれたけど素人にビビってたらパパに笑われるんだよー。
威嚇って言うのこういう風にやるんだよー。
「死ねば助かるよー(泣)。」
さあお待ちかねのホットプレートの登場だよー。
コンセントを入れて設定温度はマックスにするんだよー。
「お餅おうどんは命より重いんだよー(泣)。」
アンナちゃんは大丈夫なんだよー。
そんなに青い顔しなくても、焼き土下座するのはその三人だけなんだよー。
「「「ゴメンナサイ。許してください。」」」
うーん、違うんだなー。
土下座する時はホットプレートに両手と頭を付けるんだよー。
「クズの決心をいつまでも待てないんだよー(泣)。」
あれー?
ミクちゃんもチエちゃんも見学に来たの?
「駄目だよー。二人ともリオちゃんのお勉強のお手伝いしなきゃだよー(泣)。」
「「「「「何でもしますから許してください。」」」」」
そう言えばリオちゃんは、お勉強頑張っているかなー?
ミクリンが青い顔で降りてきたのは実はこう言う訳です。
「火傷させるとアーシらも補導されるから堪えて!」
この後ニッチの懸命の説得で不良三人組の焼き土下座は回避されました。




