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審問官

香利奈さんに道を示してあげたかったので。

もう少しお付き合いください。

「それでね。瀬利香さん。少し聞かせて。どうしてお姉さんを追いかけて一人で行ってしまったの?」

代わりに答えようとするウチらを手で制して、瀬利香ちゃんの目を見て聞いた。

「おねえちゃんにおうちに帰って欲しかったから」

小さな声で瀬利香ちゃんが言った。


 ミクリンママは顔を香利奈さんに向けるとまた質問。

「香利奈さんはどうしてうちに帰らなかったのかな?」

「わたしは実母と折り合いが悪くて、すぐにケンカになってしまうし・・・。綾乃や瀬利香が辛い思いをする位なら家に帰らない方が良いと思って。友達の家に泊まっていたんだ」

「香利奈さんは・・・!」

アンナが何か言おうと口を挟みかけるのをウチが押し留める。

首を横に振るウチを見てアンナは口を噤んだ。


「香利奈さん。でも妹さんたちはそんなこと望んでいないようだけど」

アンナが我慢できなかったのだろうボソリと口を挟む。

「僕は香利奈さんの気持ちもわかる。僕も親と折り合いが悪いから。親だから憎めないから辛い事はある」


「綾乃や瀬利香が望んで無いのは知ってる。でもその娘の言った通りで、心が苦しいんだよ」

「解ったわ。理由は聞かないわ。ただあなたがどうしたいか知りたいわ」

「独立したい。自分の力で生きたい。ただ瀬利香や綾乃と離れたくない気持ちもある。春まで我慢して、高校出たら近くに就職して部屋を借りたい。瀬利香が高校を出るまでは近くにいてやりたい。でも今は空回りばかりで結局この有様だよ」


「ウサピョン商業の三年生だったわよね。簿記と英会話の資格は?」

「日商も全商も二級です。TOEICは745点。あと情報処理と文章デザインが一級持ってます」

「優秀じゃない。それなら推薦でも受けられないの・・・って親の世話に成りたくないっか」

「判ってても割り切れない。だから少しでもお金貯めようってバイトしてたら学校にちゃんと行けないし、もし進学できても部屋を借りて学費迄払ってたらやってけない。全額奨学金で賄える訳じゃない。現実に二学期からはろくに学校も行けてないし」


「来月からうちの事務所に来なさい。仕事はきついけど給料は良いわよ。ここのバイトよりはずっと割の良いバイト先よ。但し条件があるわ。学校には明日から休まず通いなさい。そして春までは実家で暮らす事。それなら春までバイトとして雇います。如何かしら」

「本当に良いんですか?」


「ねえ香利奈さん。今なら申し込み期間中だから1月の全商一級は会計と原価計算を受けてごらんなさい。高校の教科書でも勉強できるから。受からなくてもその出来次第で本採用も考えてあげるわ。それに進学もあきらめないで。本採用後も通信大学ならバックアップしてあげます。うちとしては会計士の資格を目指して貰えればさらに嬉しいんだけども」


「お願いできるなら、死ぬ気で頑張ります。この街で瀬利香や綾乃の側で暮らせるなら絶対期待に応えます」

「お義姉さん(号泣)」

「あの、香利奈さん。母さんの事務所年末・期末は修羅場で本当に地獄ですよ・・・ってイタタタ」

ミクリンママはミクリンの頬をつまみながら続ける。

「先に言って置くわ。仕事は大変よ。税理士はAI化でどんどん仕事が減っているけど、会計士はAI化出来ないのよ。会計監査は機械には無理。それでもAI化の幻想にとらわれて公認会計士は減っているの。お陰でうちの会計事務所はてんてこ舞い。その代わり給料は保証するわ。うちに就職して会計士になってくれたら一生食いっぱぐれないわよ」


「はい、頑張ります」

「エ~ン、良かったよー(泣)」

「おねえちゃんが帰って来てくれるよー(泣)」

「気の毒に絡新婦に絡めとられちゃった・・・タタタタタタタッ、痛ーいよー(泣)」


 食事のあと兵頭姉妹は、ポコポコ走る香利奈さんのディオの後ろをカッチンと瀬利香ちゃんの自転車が連なってついて帰って行った。

調書を取り終えた兄ちゃんも合流して、アンナとミクリンはそれぞれ自転車でウチは兄ちゃんと帰る事に成った。


「ありがとうございます。僕、香利奈さんの事他人事に思えなくて。香利奈さんみたいになれれば良いなあって思います」

「あなた達は少し自重して。暴走しすぎよ。特に姫香、今日は朝までじっくりとお話ししましょう。今まで話せなかった分まで。また明日から私忙しくなるから」

「やぶ蛇だー。アンドリン~、アンナ~どっちでもいいから今晩泊めて~」

「ウチは今日は、ミクリンはしっかり説教されるべきだと思うな」

「アンドリンの薄情者~。とほほほほーもう悪ふざけはコリゴリだよー」


 画面が真っ暗になり涙目のミクリンの顔の周りだけ丸くぬける。

何故かそんな光景がイメージ浮かんできて、それが楽しくて、嬉しくなって声をあげて笑ってしまった。

ミクリンママも可笑しそうに笑いだして、つられてミクリンもアンナも一緒になって大笑いした。

話しの経緯が見えていない兄ちゃんだけが一人取り残されていた。

今回のお話はこれで一段落。

思っていた以上に長い思い話になりました。


アメリカの論文が日本の雑誌掲載された時にAI化で無くなる職業の上位に会計士が入っていたそうです。

しかし欧米では税理士も含めて会計士と言い、税理士と会計士が分かれたいない為の誤解でそうです。

実際に税理士業務はAI化が進んでいますが、会計士事務所はミクリンママの言う通りいつも修羅場らしいです。


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