闇に蠢く影
兄ちゃん、ソロキャンプと称して庭やベランダでご飯炊いてます。
アルコールストーブやコンロをネットで買い漁りビンテージ物やオリジナルのコンロやストーブを8つも持っています。
結局青山君や北野君と話すこともできず、あんみつも食いつくされて、ウチは泣く泣く帰る羽目になった。
男子三人は唐揚げとポテトが有るのでもう少し居るとの事で、取り敢えずお開きになった。
ミクリンが会計をしている間にウチはニッチに目配せする。
昨日帰りの電車の中で相談していた作戦があるのだ。
カッチンと瀬利香ちゃんからもう少し情報を引き出す事。
ウチは兄ちゃんに、帰りに迎えに来てもらえるようにお願いしておいた。
今年就職してからキャンプにハマっているソロキャンパーの兄ちゃんは、ランタンだアルコールストーブだ、スキレットだ、コッヘルだと色々買い漁っている。
最近はコーヒーミルやパーコレーターやエスプレッソマシンやらを買い揃えアウトドアでコーヒーを楽しむと言ってジムニーを新車で購入した。
そして休日は朝早くにソロキャンプと称してジムニーで出かけて、昼過ぎには帰ってきて夕方まで寝ている。
オイ、お前ソレってキャンプって言わねーんじゃないの。
まあそういう事で新車の四駆を自慢したくて仕方ない兄ちゃんは、快くウチらのお迎えを引き受けてくれたのだ。
ウチはカッチンと瀬利香ちゃんの所に行って説明する。
「ねえ二人とも、電車で帰るのは大変じゃない? 良ければウチの兄ちゃんが迎えに来てくれるんだ。一緒に乗ってきなよ。家まで送るから」
「良いんですかおねえさん」
「ウチの兄ちゃん自分の車を見せびらかしたくて仕方ないから、人が乗るのは大歓迎なんだよ」
「ありがとー(泣)。助かるよー(泣)」
ウチは兄ちゃんに連絡を入れた。
直ぐに返信が来て今から行くから店の前で待っていろとの事。
カッチンと瀬利香ちゃんを連れて、外に居るニッチの所に向かう。
「兄ちゃんが二人とも送ってくれるって、それまでチョット待ってようか。先に二人を送るから悪いけどニッチは後だよ」
「わかってるって。少しくらい遅くなっても構わないよ。治郎は一食くらい抜かした方が良いんだよ」
「タメジローは、つまみ食い大王だもんなあ」
「アッそうだった。瀬利香ちゃん、来る時に約束したハンバーグ。持って帰りなよ」
ウチはネット通販で見つけたオシャレなピンクのボディーバックからハンバーグを入れたフリーザーパックを取り出した。
「おねえさん。ハンバーグどうもありがとうございます」
「ねえ莉凰。つくづく思うんだけど、アンタどこでそんなボディーバック見つけてくるの?」
「オシャレでしょう。オシャンティーなウチには特別な嗅覚が有るんだよ。ニッチには難しいかな」
「アーシはオシャンティーって言葉の意味が変わったのを今知ったよ」
「おねえさん。あの黄色い車ですか?黄色で可愛い車ですか」
「うん、そうだけど。ピンクじゃないから余り可愛くないよ」
「キュアパパイヤと同じ色だから可愛いよ」
「そうかもね。じゃあ乗ろうか。じゃあアンナ、ミクリン先に帰るわ」
ウチがミクリンとアンナに手を振る。
二人は又何やら揉めていた。
「はー! オリジナルのサドルを捨てたって! もうそれは冒涜を通り越して背徳だよねえ、悪魔の所業だよねえ。今すぐバチカンで宗教裁判にかけてあがようか」
「まさかの時のスペイン宗教裁判!」
「うるさーい! わたしは赤は嫌いなの。チェレステがいいのーー!!」
「もお良いよ。あの二人は放っておこう。カッチンは帰り道を指示してもらうから前に乗りなよ。アーシと莉凰と瀬利香ちゃんは後ろに乗るから」
ニッチは無口なカッチンより瀬利香ちゃんの方が話を聞けると判断したのだろう。
ウチらは次々に車に乗り込んだ。
兄ちゃんがカッチンに話しかける。
「結構いい車でしょ。サイドシートに乗る女性は家族以外では君が初めてなんだぜ」
兄ちゃん、あんたこの車に家族以外を乗せたのすら初めてじゃん。
ボッチの似非キャンパーの分際で何言ってるんだか。
「それじゃあ行くよ」
兄ちゃんは上機嫌で車を出す。
ペラペラと車自慢やキャンプ自慢を始める兄ちゃんに律儀に相槌だけ打つカッチン。
ウチはそのシュールな光景から目をそらして駐車場を見るとパープルの派手なバイクが走り出すのが見えた。
その後ろを黒い自転車の影が二台追いかけて行くのが見える。
そして更にもう一つの影が大急ぎで駐輪場に走ると自転車に跨りさっき走り出した二台を追いかけて行った。
バイクもポコポコとエンジンの音を響かせている割にゆっくり走っているけど、チャリにしては三台とも早いなあと思いつつ視線を瀬利香ちゃんに戻す。
ウチらの車も駐車場を出てさっきのバイクとは反対の方向に走り出した。
ちなみにミクリンの自転車は通学用なのでアルベルトの電動サイクルです。
モチロン色は黒、両立スタンド付きで学校指定のヘルメットも持っています。
設定の段階でイーストボーイにするかアルベルトにするか結構迷って決めたのに結局出番なかったよー。




