悪夢庵《ないとめあん》
イワケン再登場!
集合時間は午後二時、集まった人数は二十四人。
さらに遅れて合流するメンバーも数人いるらしい。
急に決まった打ち上げにクラスの三分の二を集合させる龍崎の統率力には舌を巻くものがある。
大半が制服姿で、多分学校からの直行組だろう。
ウチらは制服だけど、アンナは右眼のカラコンが必須の様で赤い目を光らせてる。
それからミクリンは一旦帰宅してからチャリで来たそうで私服に着替えていた。
ウチらは四人掛けと二人掛けのテーブルを並べて一緒に座っている。
ウチの隣にアンナが、そのアンナにくっ付いて何故かカッチンがプルプルしている。
その向かいにニッチとミクリンと言う並びだ。
龍崎はと言えば、勿論青山君の隣にへばりついている。
向かいには西爪君がテーブルに肘をつきその隣には北野君が座り四人で何か話している。
そう言えばこのテストに西爪君出てきてたなあ。
授業はともかくどうにかテストには引っ張り出せたんだ。
忌々しい奴だけど龍崎の行動力には尊敬の念を禁じ得ない。
「なに、龍崎の奴。いい男三人連れて逆ハーか!」
ミクリンが憎々しげに言う。
「花梨ってもてるんだねえ」
「あんな奴が居るからアーシらの男日照りが続くんだよう!」
「よし今日までのウチらの怨念を全て龍崎にぶつけるんだ!」
「グリモワールによると黒い鳥を生贄にしないと呪文は効き目が無いんだよ」
さすがはアンナ、こういう分野は専門家だ。
「アーシが頼んだ若鳥のから揚げを生贄にしよう。きっと烏骨鶏だ!」
「わたしはただのブロイラーだと思うよ」
「気持ちの問題だよ。ウチらが烏骨鶏だと言えば烏骨鶏なんだ!」
「「「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム我らは求め訴えたり!!!」」」
「クククク....カカカ......!コココ......!キキキ....! (笑)」
「いかーん! 本当に悪魔が召喚されてしまった!」
「カッチン、大きなお餅入り栗ぜんざいが来たよー!」
「ウチのあんみつの白玉も全部上げるよー」
「お餅の天ぷらも食べたいよー(泣)」
「おーい、お兄さん。このお餅の天ぷらお願い―」
「ハーイ。ご注文お伺いしますぅ―。って安藤に新田! それにこの間のゴスロリの娘。お前ら知り合いだったの」
やって来たバイトは誰あろうイワケンだった。
「あんたねー。あの状況でアーシらが知り合いじゃねえって思う方がオカシイだろう」
ニッチが呆れたように言う。
「それでナンの集まり?」
「ウチらはテストの打ち上げ。あんたの所ももう終わったんだ」
「いや、ウチは今週いっぱいテスト期間」
「はーーー? ならなんでこんな所でバイトしてんの」
「わかってねぇなあ。テスト期間中は目一杯バイトのシフト入れるだろうがよ。っで注文は如何致しましょう」
「お餅の天ぷらが三つだよー(泣)。それと白玉ソフト(泣)」
「えーと、この娘なんで泣いてんの?」
「大丈夫。この子は人見知りなだけだから」
「ソーなんだ。ご注文を復唱・・・」
「いいからイワケンはさっさと行って。カッチンが怯えるから」
「ヘーイ」
「アンドリン、あのバイト知り合いなの?」
「うん、中学の時のタメ。」
「とってもいい人だよ。僕たちを助けるため警察に連絡してバイクで追いかけてきてくれたんだ」
「?どういう事なの。そんなこと初めて聞いたよ」
「アーシとアンナがチョットヤカラに絡まれたんだよ。あいつのお陰で大した事なかったから」
そんな事を話していると男子が数人やって来た。
いつもプルプルしてるカッチンは小動物的な庇護欲を掻き立てられるらしく一部の男子に非常に評判が良いのだ。
「兵頭ちゃん。さっきバイトに絡まれたりしてなかった?」
「大丈夫(泣)」
「何かあったら俺たちガツンと言ってやるぜ」
「バイトさんは優しかった(泣)」
「なら良いけどさあ。何かあったら言いなよ」
「アリガト(泣)」
「もー、あんた達みたいな下心見え見えの奴らこそ迷惑なんだよ。さっさと散った散った」
ミクリンが邪険に手を振って追い払う。
「御厨、お前ねーそう言う所だぞ。見てくれは良いんだから」
「中身が伴わなきゃカッチンには釣り合わないの。そういう事は私に勝ってから言いな」
男子はぶつぶつ言いながら散っていった。
「ねえ、今の話俺たちも詳しく聞きたいんだけど」
そう告げる青山君の後ろで、龍崎が偉そうに腕を組んで頷いていた。
別に烏骨鶏は黒い鳥ばかりではありません。
白い羽の方が一般的だそうです。
ただ皮膚や骨が黒いのでそう言う意味では黒い鳥かな?
ちなみにニッチのから揚げは当然ブロイラーです。




