モーニングにアンコは有りだと思う
この五人で女子力が高いのはニッチだけ。
リオはハンバーグしか作れません。
アンナのポテサラは、アンナママの作品です。
カッチンの家は、ほぼスーパーのお総菜がおかずです。
ミクリンは?
朝まだウチらが起きる前にミクリンママはスーツに着替えて起きてきた。
「ごめんね。おもてなしも何もできなくて。朝は食パンが有るから食べてね。それから冷蔵庫の中のものは好きに使っていいから。って言ってもほとんど冷食なんだけども」
そう言い残して出勤していった。
「うわあ、これふっくら堂の特製食パンだよ。並ばなきゃ買えないんだ。僕の仮の母親もこの間の日曜日に朝から並びに行ってたよ」
「それオイシイの? アーシんちじゃあそんな高級食パンなんて買えないよ。悪いから少しで良いよ」
「普通の食パンとドライフルーツ入りが有るよ。ウチフルーツ入り食べて良いかなあ」
「どうせあの人の事だから自分の部下にでも並びに行かせたんでしょ。遠慮することないよ。食べちゃおう」
「でも、パンが切れてないよう―(泣)」
「うっせ―なあー!寝られないじゃないかよ」
キッチンで騒ぐウチらの背後にいつの間にか不機嫌そうな顔の弟君が立っていた。
「おっ、少年。いやね、食パンが切れてないのだよ」
「雄太。あんたオハヨウ位言えないの」
「姉貴は口うるせえ。だいたい女が五人も集まって食パンも切れねえのかよ」
そう言うと弟君はミクリンの持つ包丁を取り上げてガスコンロに火をつける。
軽く包丁を炙るとまな板の上に食パンを横にして置いて手早く六枚に切り分けていった。
「オイ誰かこの食パンを除けてくれ。それからもう一斤持ってきな」
弟君が包丁を布巾で拭きながら言った。
「アーシはパンの端っこが良い」
「貧乏くせーなあ。真ん中食えよ」
「端っこを焼くとこれはこれでうまいんだよ」
「じゃあ端っこ全部やるから、真ん中も食え」
そう言いながらドライフルーツ入りを切り分けて行く。
「雄太なんで包丁を炙るの?」
「温めた方が、パンの油分が解けてスムースに切れるんだよ。それに縦より横の方が崩れずに切れる」
「断面もきれいだよー(泣)」
「えっーと、ナンでこの人泣いてんのかなあ?」
「感動してるだけなんだ。カッチンは僕が守る!」
「じゃあ、あんたはその姉ちゃんを守りながら冷蔵庫からトマトと卵とレタスを出せ」
「そっちのパンのヘタの姉ちゃんは野菜を洗ってレタスをむしる。トマトも切ってくれ」
「泣いてる姉ちゃんは食パンを焼け」
「それで、ハンバーグのあんたボ-ッと見てないで昨日のハンバーグ残ってるんだろう。さっさと温めろ」
「それから姉貴は食材に一切手を触れるな。その代わり皿くらい洗って並べろよ」
「なんでよ!」
「姉貴が触ると食材がゴミになる」
「そんな事無いわ(怒)!」
「お妙さんの卵焼き以上の物を作ってから反論しろ!」
そう言うと弟君はフライパンに卵を落として次々に目玉焼きを作っていった。
「いやー、さすがにミクリンの弟だねえ。上から目線の仕切屋の血は争えないねえ」
「アンドリン、失礼じゃない。わたしはこいつほど感じ悪くないから」
「でもシッカリした弟ジャン。アーシの弟なんてつまみ食いするだけで、料理の役に立った事ネエもん」
「どうだか、ただの内弁慶よ」
そう言いつつもハンバーグに目玉焼きとサラダとトーストという朝からボリューミーな朝食のプレートが六皿並んだ。
弟君は自分のプレートと牛乳を入れたマグカップを持って部屋に帰って行った。
さすがにJK五人に囲まれての朝食は気が重いのだろう。
「オーイ、少年!デザートに紅白饅頭か栗最中はいるかい?」
「トーストにアンコなんか食うかよ!バッカじゃねえの」
罵声が帰ってきた。
きっと照れ隠しに違いない。
私は小倉トーストは有り派です。




