ミクリン怒りの鉄拳
今回龍崎の出番はもうありません。(多分)
その日は調子に乗ったミクリンが、アンナの参考書から次々に写メ撮りした演習問題をラ〇ンで送ってきた。
“今日帰ったら全部終わらせる事、出来なきゃ折檻“のコメ付きで。
そしてウチはやったよ!
やり切ったよ!
後半は白目剥きながらだけども、やり切ったよ!
燃えたよ、真っ白に燃え尽きた。
我が生涯に一片の悔い無し。
「それでアンドリン、燃え尽きてるところ悪いんだけど正解が二割ってどういう事。舐めてんのか、ゴラー!!」
「だからそれはですねえ。白目がね。いろいろと・・・」
「アンドリン、あんた寝ながらやってたでしょう。後ろ半分考えた形跡すらないんだけど」
「あのね、リオちゃんはね、関数記号と対数記号を全部無視して計算してただけで、多分寝てたから記号が分からなかっただけなの(泣)。だから夢の中では考えていたの(泣)」
問題と解答を一目見てそこまで即答できるカッチンの洞察力ハンパネー。
「ふざけないで!ニッチもアンナも寝ずにしっかり考えて、六割から七割の正答を出してるのにあんたがそれでどうするのよ! テスト明けの打ち上げがかかってるんだからね。前回から順位十二あげないといけないのよ!」
「いえ、一気に十二は少し酷かと……」
「何言ってるの、上げシロがたくさんあって良いじゃないの。今の順位から1/3上げるだけでいいのよ。あんたチーズインハンバーグメンチカツを食べたくないの! あきらめたらハンバーグ終了だよ!」
「クー――。ミクリンセンセイ! ハンバーグが食べたいです!!」
「完全に御厨にだまされてるよ、莉凰の奴」
「でも御厨さんもリオに親身になってるよねえ。僕は御厨さんってもっと他人に無関心な人だと思ってたよ」
「実際に御厨は自分ファーストの奴だけど相手が莉凰だからねえ。自分に興味を持ってくれる相手には悪い気もしないよ」
ウチは泣きながら昨日の演習問題のやり直しをさせられている横でミクリン達は何やら話し込んでいた。
演習問題を解きながら盗み聞きなどうちの集中力が持たないし、演習問題だけでも意識が飛びそうだからミクリンに恨みの視線だけを送っておいた。
ミクリンは一瞬ゾクッとしたように体を震わせたがすぐに話の続きを始めている。
「アンドリンは文系脳だから数学や化学が極端に弱いんだよ。理系をもう少し平均近くまで引き上げて、得意の文系で嵩上げしたらやれないことも無いんだ。ムツカシいけど不可能じゃないよ」
「それでアーシ達はどうよ」
「二十位台ってあまり点数差がないんだよ。ニッチもアンナも各教科で一、二問正答を増やすだけで一気に順位は上がるよ。全科目で二問アップが目標だね。それで二十位以内に入れるよ」
「すごいねえ御厨さんは。僕もなんかやれそうな気がしてきたよ」
「まあ自分の為でもあるしね。私もカッチンの回答を解読してあんた達に教える事で一気に設問の理解が広がるんだ。これで学年ベストテン入りを目指すぞ!」
「で、あの桃豚仮面はどうするの?」
「??桃豚って、アンドリンの事だよね??」
「ちがうよ。ピグレ○ト仮面。またの名をキ○アピーチ」
「ややこしくなるから安奈は黙ってようか。御厨も莉凰の黒歴史だから聞かないで」
「そう言いつつニッチが煽っているような…。まあ良いや。何かいい案は有る?」
「莉凰は一人で考えてると脳みそがオーバーヒートして意識が飛ぶんだわ。まあ一発殴れば復帰するんだけどね。ぶん殴るやつがそばにいないと何時間もそのまんまだから高校の入試の時も苦労したもんよ」
「ぶん殴るって、昭和のテレビじゃないんだから」
「師匠がかわいそう」
「まあ誰かと一緒に勉強すれば何とかなるんじゃねぇ」
・・・そうか。
中三の受験勉強で意識が飛びそうになった時、頭に鈍痛がしてたのはニッチの仕業か。
ニッチ許すまじ!!
「それなら僕の家で師匠とニッチとで勉強会するのはどうかなあ」
「ダメ、無理!アーシは安奈のお母さんに嫌われてるし、莉凰も歓迎されないと思うから許可が出ないと思うよ。安奈がゴリ押しして安奈のお母さんとこれ以上気まずくなるのも嫌だし」
「それじゃあファミレスで、僕がお金を出すから」
「却下!安奈がお金出す必要なし。アーシの家は狭いから無理だし、莉凰の家も別な意味で無理。図書館は声が出せないから対象外。どこか良い所無いかな。土日、教室使えないかなあ」
「仕方ないねえ。うちにおいで。父さんは出張中だし母さんは土日も仕事だから昼間はわたしと弟だけだから。金曜日の放課後から日曜日まで三日間!睡眠は雑魚寝!飲食費用は個人持ち! アンドリンは強制参加! 逃げないようにニッチとアンナが引きずって来る事。カッチンはどうする?」
「行くよー(泣)。仲間外れはイヤだよー(泣)」
「ナンかウチだけ扱い酷くねぇー」
「アンドリンの為の勉強会だろう!立場解ってんの!」
「・・・ゴメンナサイ」
ミクリンは結構、龍崎にライバル意識を持ってます。
龍崎の挑発に乗ったのはそれも有るからかな。




