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定番はハンバーグとドリンクバー-2

二人で参考書の問題を解きながら手捏ねハンバーグに舌鼓を打つ。

視覚のずっと先にいるニッチ達は自分たちの近況報告を兼ねて情報交換中っと。

時々ニッチ達に意識を割きつつ、アンナと問題集の解法について頭を絞った。

と、急にニッチ達の会話の雲行きが変わった。

慌てて意識をそちらに集中する。


『だからさー。金払うし。』

『そうだよ。三本いや二本あれば足りるから。』

『そんなこと出来る訳無いだろう。バレたらアーシの店だって捕まるかもしんねえのに。』

『大丈夫だって、バレないから。絶対喋らないって。』

『アーーー。もうこの話は無し無し。アンタらも学校にバレたら停学だよ。』

『だから、そんなヘマしないって。』

『カラオケ屋の店員もツレだし。みんなやってるけどバレてないって言ってるし。』

『そういうのが一番危ないの。そんな話ならもう帰るわ。』

『待ってよ。ここはウチらが払うから。』

『ドリンクバーだけで恩に着せられたくないからアーシが払うから。』

ニッチがレシートを持って席を立った。

追いすがるようにナギサとミユキが追いかける。

ウチは意識の糸を三人の後ろに繋げて後を追う。


ニッチ達がレジを済ませて、店を出て行く。

ウチは意識の糸を繋げたまま集中を切る。

気付くとアンナがウチの眼をじっと見ていた。


「えっ、どうかしたの?」

ウチが聞くとアンナは慌てて口を開いた。

「うううん、何でもない。」

そう言うとアンナが窓際から外を見ながら続けた。

「ねえ、僕らもそろそろ終わろうか。あまり遅くなると仮の母が煩いんだ。」

あれ?なんだかアンナの右眼も光っているような?


ウチらも荷物を片付けてファミレスのレジに向かう。

ウチは視界ドローンでニッチ達を追いかけつつ会計を済ませた。

三人は駅前に向かって行くようだ。

アンナも電車の時間が気になるのか外を気にしている。

ファミレスを出るとアンナも駅の方に向かって帰って行った。


ウチはさっきの意識の糸を手繰って三人の会話を探る。

ガ〇トの前で視界ドローンから会話へと集中を切り替える。

『だからさあ。一度行ってみりゃあ分かるって。』

『そうだよう。先輩がアルバイトやってるからバレないって。』

『そういう話じゃないんだよ!やってることが違法なんだからアーシを巻き込まないでよね。』

『いい男も紹介するからさあ。』

『う・る・さ・い。アーシは帰るんだからもうついてこないで。』

ニッチは二人と別れて駅の改札に向かって歩いて行った。

『ニッタチャーン、また連絡するから、明日そのカラオケ屋に行こうよ。』

ナギサが手を振って二人は無料駐輪所に向かって歩いてゆく。


なんとなく事情はわかる。

ニッチとは小学からの友達だ。

ニッチは派手な見かけや言動とは違い親孝行で家庭的な娘だ。

忙しいニッチのママの代わりに中学生の弟の面倒をみつつ、店の手伝いで突き出しや店で出すメニューの仕込みなんか作っている。


だからピアスをしたりブリーチやパーマを当てたりと校則は破っても、店やニッチのママの迷惑になるようなことは絶対やらない。

そう言うところは非常に真面目で頑固なんだ。


ナギサとミユキも店の事を知っているからニッチに酒を持ち出させようとしているのだろう。

二人の言動に不穏なものを感じる。

ウチはしばらくナギサとミユキを追いかけることにした。


『ニッタのやつエラソーに、ポン高受かって調子乗ってんじゃないの。』

『どうせ、まぐれで受かっただけだろうに。ポン高でも底辺だろうから、底辺らしくしてりゃ良いのにさ。』

まぐれじゃねえわ。

ニッチはウチみたいに塾とか行く余裕ないから、家の手伝いの合間にコツコツ勉強してたんだ。

ウチの塾の参考書をコピーとって地道に頑張ってたんだよう。

何にも知らないお前らが勝手なこと言うなし!!

ニッチをよく知ってるウチはフツフツと怒りがこみあげてくる。


それに底辺でもないし。

ニッチよりずっと成績の悪いウチは何なんだ、どん底かよう。

『ワタシラ金払うって言ってんだから、何が不服なわけ?』

『明日さあ、どっかに呼び出してシメてもらおうか。』

『空手部の男子に連絡入れてちょっと脅してもらおうよ。』

『軽ーく、ビビらせたら言う事聞くんじゃねぇ。』

『そうすっか。』

やっぱりこいつらチェックしてて正解だった。


『じゃあ、カラオケ屋行って作戦練ろうぜ。先輩にも一言入れといた方が良いし。』

ウチは駅前の駐輪所から自転車に乗る二人から意識を外すと大きく深呼吸をした。

ウチの友達に手ェ出したら絶対許さない。

明日の放課後はニッチに張り付きだなあ。

ウチがそう決断したその時、ナギサとミユキを窺っていた人影が有ったことにその時は気付かなかった。


不穏な空気で、話が動き始めました。


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