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早起きは予習の時間

月曜日の朝はいつもより三十分も早い電車で学校に向かった。

「オッハヨー!」

まだ4~5人しか居ない教室に入ると、アンナが居た。

「オハヨー、安藤、今日は早いね。」

他の子が声をかけてくる。


ウチは挨拶を返すとアンナを見ていう。

「オハヨー。アンナもえらく早いねえ。ウチの方が先につくと思ってたのに。」

アンナはうつむき加減で小さな声で返事をした。

「おっ、おはよ~。久しぶりだから、早めに来て予習しておこうかなっと思って。」

「ウチも。アンナに偉そうなこと言っといて何も説明できないとか恥ずいじゃん。」

そう言って、龍崎のノートの写メを見ながらノート前回の授業の抜けてるところをまとめ直す。

「情報の佐藤以外は黒板の写メ撮りさせてくんないし、ノート取るのってマジ勘弁って思うよねえ。」

「うん。」


うつむき加減にアンナが頷いた耳元で

「リップとカラコン付けてくれたんだね。サンキュー!」

そう言うとアンナは真っ赤になってうつむきながら小さく

「うん。」

と呟いた。


「ゲッ、莉凰が勉強してる!!」

ニッチの声がした。

「ナニ?悪いの!」

「悪いよ!アンタが成績上げたらアーシは誰を見下せばいいんだよ!」

「見下すなよ!!」

「ナッ、莉凰はバカなんだから無駄な努力は止めよう。」


「リオはバカなんかじゃないよ!」

アンナが怒りの籠った低い声で言った。

「エッ?誰コレ。」

「ボ・・僕は物じゃない。コレって言うな。」

「アッ、ワリー。でっアンタ誰?」

「僕は、岡部安奈。」

「エッート。莉凰、コレ誰?」

「コレって言うな!」

アンナが怒って声を荒げる。


「ニッチ、アンタ失礼だよ。クラスメイトの岡部安奈じゃん。」

「居たっけ?」

「居たわ!一学期から。少し地味で目立たなかっただけだから。ニッチみたいに悪目立ちしてなかっただけだから。」

「その割に、リップにカラコンも入れてるじゃん。」

「これは、僕の本来の姿を隠すためのものさ。」

「ヤバみ―――。アンタいってんじゃないの。ってか莉凰とお揃いじゃん。」

少し驚いた声でニッチが言った。


「これは、リオが僕に本来の姿を隠して生活するように勧めてくれたんだ。」

「うん、ウチがアンナにプレゼントした。」

「でっ、二人で予習?」

「龍崎のノートの写メ貰ったから二人で活用しようてっ思ってね。ニッチも一緒にやろう。」

「ジョウーダン、アーシはゴメンだわ。今更お利口さんぶっても始まんないし。」

ニッチは少し不貞腐れたようにそう言うと、自分の席にカバンを投げ出しスマホをいじり始めた。


ニッチの気持ちもわからなくはないんだ。

ニッチのママは離婚して、カラオケパブを一人で切り盛りしながらニッチと弟を育ててる。

弟を進学させたいニッチは、家事や店の手伝いをしていて結構忙しい。

ニッチはやればできる子なんだけど家の経済状態を考えると地元の国公立以外の選択肢は難しい。

結構悩んでるんだよね。


「アンドリン、いったい何してるの?狂ったか?」

「リオちゃんがお勉強してる――(泣)。」

「ミクリン、あんたいい加減にしろよ。それからカッチンはナンで泣くし。」

「岡部さん久しぶりじゃない、アンドリンと予習してたんだ。」

「僕、しばらく学校出てなかったから・・・。」

「そんで、龍崎がノートの写メくれたんだ。」

「エッ、龍崎のノート!すっごく興味あるんだけど。わたしにも見せてよ。」

ミクリンが食いついてきた。

「なあ、カッチンここんとこ良く解らないんだョ。」

「判らないんなら説明するようー(泣)。」

四人で始めた予習をニッチがつまらなさそうに見ていた。


予習のおかげで授業で当てられた質問も正解することができてウチは鼻高々だった。

今日は良い気分で昼休みを迎えることができそうだ。

お弁当が待ち遠しい。

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