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夕暮れの決闘

「もう十二月だよ。なんでアーシらが呼び出されたわけ?」


 冬の一日は短い。午後四時を過ぎるともう肌寒くなってくる。


「なんか、ウチらの魅了を解いてくれるらしいよ。性戦士様がさぁ」


「魅了って何なの? ミリンかなにか? アーシはそんな物使ってないし」


 店の手伝いも有るのに呼び出されたニッチはすこぶる機嫌が悪い。


 その怒りはすべて柳瀬とかいうアホの子にぶつけて欲しい。ウチにさえ帰ってこなければイワケンでも可。


「安藤…全部声に出てるんだけど。俺のせいじゃないからな! 安藤たちが煽るからこんな事になったんだからな」


「イワケンくん、それは良くないよ。同級生なんだろ。日頃から人間関係を作っていないからこういう事になったんだよ。君の最期は見届けてあげるから安心して逝ってきなよ」


「サイゴの! いってきなのく! その字オカシイ! 御厨さんってだったかな? あんたが一番煽ってたよね。 性欲まみれの性犯罪者とか…。あいつSNS読みながら泣いてたよ」


「メンタル弱いねえ。そんなヨワヨワなメンタルで性犯罪…性戦士はつとまるのかな」


「そうだよ、そんなヨワヨワな性格じゃあミクリンは論破できないからね。闇落ちしたミクリンにかなうやつなんていないよ」


「やっぱり性衝動は抑えたほうが良いよー(泣)。通報案件だよー(泣)」


「もう止めたげて。柳瀬そこで泣いてるから。悪ぶってるけど良いやつなんだから」


「イワケンに同情される時点で人間終わってるんじゃないの。ほらウチらの魅了解くんだろ。ホレホレ」


「アーシは味醂もらえるとか言うから来たんだし。無いなら帰るからな」


「味醂じゃねえわ! 魅了だ! お前らみんな岩崎のチャームで騙されてるんだ! 俺が救ってやるんだ」


「だからその新味料って、ペットボトルで売ってる調味料でしょ。照り焼きにつかう」


「違うよ。チャームだよ。僕らは岩崎くんのチャームにかかって彼に好感を持つようにされてるんだって」


「はー? 今でも好感度低いのに、この状態からイワケンの好感度が下がったらイワケンの命無いし」


「でも柳瀬くんは岩崎くんを倒したら僕たちを自分の女にするって言ってるそうだから、岩崎くんを殺すのはしばらく控えたほうが良いよ」


「分かったよアンナ。まずわたしたちで聖戦士をぶち殺した後に、岩崎くんを殺せば丸く収まるっていうことだね」


「丸く収まってないからね。なんで俺まで殺される事になってんの。警察が黙ってないからね」


「岩崎くんにはそれがご褒美だってアンドリンが言ってたから」


「警察は大丈夫だよー(泣)。パパに行って身元不明死体にしてもらうからー(泣)」


「岩崎の魅了が解けたらコイツラ五人とも解き放たれるのか? ひょっとして五人とも魔族だったのか?」


「失敬な! 僕は由緒正しき水龍リントブルムの力を継ぐ聖龍の化身莉凰師匠の、力を受け継いだ一番弟子アンナだ!」


 アンナ…その設定まだ生きてたんだ。やっちゃったウチが言うのもなんだけど巻き込まれたくない…。


「誰が魔族よ! アタイはシニンジャの力を…」


「御厨、遊ばない。面倒くさいことに成るから。魔族は兵頭だけだから。アーシは味醂さえ貰えればすぐ帰るから。聞いてる?」


 ニッチが膝を抱えて泣いている柳瀬の胸ぐらをつかんで引き起こした。


「チエちゃん、ひどいよー(泣)」


「ゴメンナサイ、帰りに味醂買います。お願い、殴らないで」


「新田ー、もう勘弁してあげて。柳瀬も反省してるし」


「岩崎ー、お前良いやつだったんだな。誤解してたよー。テイマーの力で魔物を抑えてたんだなー」


「テイマーってなんだし! ウチらにまだ喧嘩売ってんの?」


「もう言いません。許して下さい」


「分かったわよ。あんたは前世の記憶が蘇って戦士だったことを思い出した。けどね、今の時代に戦士なんていらないの。あんたその貧弱な体格で半グレと喧嘩できるの? イワケンは野球部だったけどそれでも半グレの相手は警察に任せたんだよ。ウチの言ってること分かる?」


「でも、俺には加護があったから…」


「前世はともかく今はないでしょう。それにあんた戦士に成るためになにか努力したの? 中学の時は何してたの?」


「別に何も…ゲームしたりゲーセン行ったりネトゲしたり…」


「お前ゲームしかしてねえじゃん! イワケンは才能ないから三年補欠だったけど野球部だったんだぞ。努力もなしに美味しいとこどりなん出来る訳ないんだからな!」


 反省したのだろう、柳瀬はスーパーで本醸造の高級味醂を買ってイワケンと帰っていった。


 ウチらも柳瀬の茶番につきあわされたが、まあ面白かったしコチラにも非が有るのでみんな大人しく帰った行った。


 聖戦士ダンブルグ…あの日一番初めに焼き払った勇者パーティーのタンクの名前だった。


 間違いなく前世の記憶が覚醒したのだろう。馬鹿で良かった…。あれで諦めて帰ってくれたから。


 しかし勇者パーティーはあと四人。特に小狡い賢者や勇者が覚醒したら厄介なことになりかねない。


 どうか気づかれませんように…。


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