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幕間-4 復活する大賢者

 ジョアンナ・ジョルジュ・モローは、大量の写真を繰りながら嘆息する。

本当に似たような制服が多い。

「ブレザーでしたね。ただタイはリボンだったのかボウタイだったのかよく覚えていないわ。確かスカートはチェックだったと思うけど色まではよくわからない」


 あれからヘリは目的の医療センターのヘリポートに到着したが、犯罪者の盗難車工場の取材映像が取れたということで呼ばれたテレビ局や新聞社のスタッフが大量に押しかけていた。

ジョアンナはその混乱に乗じてうまく医療センターを抜け出すことができた。

頭からパーカーを被り眼鏡とマスクで顔を隠しうつむき加減に夜の廊下を抜ける。

褐色の肌は日本では特に目を引くのでこういう場合は特に気を遣う。


 診療時間をとうに過ぎたと言うのに取材の車が行きかうポルトコシェールに、迎えの車が止まっている。

街中でよく目にする軽自動車だ。

身を屈めてサイドシートに乗り込んだが中は思ったより広い。

「アロー、それでこれからどこに連れて行ってもらえるの?」

「市内にホテルを取ってある。三ツ星じゃないのは我慢してくれ」

運転席の男はそう言ってダッシュボード上に置かれたカバンを指さす。

開けるとスマートフォンとタブレットPC、そしてノートPCと機材一式。

そしてポケットにはホテルのカードキー。


 車はホテルの地下駐車場に入って行く。

「部屋に入ればすぐにオンラインでミーティングだそうだ。なんか有ったら電話をくれ、そのスマホに佐々木義邦で登録されてる。新聞社の駐在員の肩書がついてるがカンパニーの使い走りさ」

そう言って車のキーを投げてよこす。

「このコペン、今日からあんたのクルマだ。車検もナンバーもあんたの名前で登録されてる。新車だぜ」

そう言ってウィンクすると義邦は去っていった。


 ジョアンナは部屋に入るとノートPCの電源を入れる。

ラングレーのボスの顔が映る。

その周りにはPACAFやNSA、国務省の極東担当者の顔も有る。

彼らに見てきた状況を説明するが皆納得しかねているようだ。

話している彼女自身が納得できないのだから仕方ない。

ネット回線で送られてきた取材映像もゲート付近は完全にぼやけて判別できない。

ただ轟音を立てて倒れてゆく鋼鉄の扉と、その上を駆け抜けて行くぼやけた色の塊は見て取れた。

「スクールガールでした。確認できたのは三人。扉を壊した一人と自転車の荷台に乗っていたもう一人は同じ制服を着ていました。羽を付けていたもう一人も多分学校の体操着でしょう」

「解った。早急にその学校を特定して欲しい。君はそこのALTか英語教諭として潜入してもらう」


 翌日には義邦が周辺のミドルスクールとハイスクールの制服カタログを持ってきた。

やはり短時間だった事に加え、ゲートを壊した少女の瞳の強烈な印象が強くて細部まで記憶できていない。

どうにか候補を参考まで絞り込んだ時、義邦のスマホに連絡が入った。

「ビンゴだ! この高校みたいだぜ。昨日の事件でケガをして救急搬送された少年が居たんだが、その少年を保護したというのがこの高校の生徒らしい。」

義邦が引き抜いたドキュメントにはポンポコ高校と大きく印字してあった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「先代の賢者が死んで二十五年が経つ。そろそろ次の賢者が接触を図ってくる頃だと思うのだが」

「もし紛争地帯に現れたなら、接触を図る前に死んだ可能性もあるぞ」

「それで代替わりが有ったとしてもそろそろじゃないか」

「まあ接触が有ればすぐに動ける体制は整っている。我々はその時まで粛々と準備を進めるだけだ」


 アメリカの金融界を支配するワイズマン証券やグレイベアード貿易、ヨーロッパのクルーガー重工業やサージュ商会これらはみな闇の秘密組織ファナティックの関連会社だ。

そしてそれらのすべてを牛耳るものが賢者と呼ばれるものだ。

十代或いは二十代でいきなり組織に表れてトップに座ると生涯そこに居座り続ける。

組織のすべてを把握しており、すべての権限を即座に掌握して手足のごとく使う。

その賢者が死んで二十五年。

そろそろ次の賢者が現れようとしていた。

to be continued ??

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