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アンナの悩み

「あービックリした。まさかアンナママが来るとは思わなかったよ…」

「リオー!」

ウチが続きを言いかけるとアンナが涙目で飛びついてきた。

「ありがとう。僕のこと好きって言ってくれて」

「えっ? えっ、何?」

「安藤は本当に…。わたし達は安藤の能天気にちょっと感動してるんだよ」

龍崎がウチに向かって言った。


「えっ? 別にウチコクッた分けじゃないし。百合的な意味でなく、単に親友として好きだと…」

「そんな事はわかってるよ。わたしもニッチもカッチンも絶対あんたのこと好きだから」

「えっ? そんなこと今更言わなくても知ってるし。ウチもみんな好きだし」

「本当にあんたって奴は昔からそうだよねえ。アーシも小学校の時から梨凰にどれだけ救われたか…」


「あーあ、いくらわたしが頑張ってもあんた達にはかなわないヨ。天然は強いわ」

龍崎が溜息をつきつつ言った。

「それ(けな)してるようにしか聞こえないんだけど」

「そんな事ないよ。素のままの安藤がそれだけ魅力があるんだよね。新田はわたしよりずっと大人だし。兵頭には成績では歯が立たないし。どうにか対処できるのって御厨くらいじゃないの」

「オイ! 龍崎、聞き捨てならねえなあ。わたしがあんたに負けるとでも思ってるのか!」

「アンナと一緒に暴走してヤカラのアジトに突っ込んだあんたが言えるの」

「はー? あんたこそヤカラの挑発に乗って酔っぱらって攫われかけた癖にどの口が言うのかねえ」


「ねえ弘明。龍崎花梨って誰にでもケンカ売るの?」

「花梨、またトラ狩り女が幼馴染アピってるよー!」

「ねえ、アンナさんあなた本当は性格悪いんじゃない? 何度言ったらワタシの苗字まともに呼ぶの? 絶対虎谷って呼ぶ気ないでしょう」

「まあ仕方ないんじゃねぇー。龍崎の敵はアーシら一年二組の共通の敵ってことで」

「まあそうだねえ。不満はあるけどわたしも賛同させてもらうよ鶏ガラさん」

「あなたさっきまで龍崎と喧嘩してたじゃない。敵の敵は味方なんじゃないの?」

「ウチのクラスの男子にチョッカイ出す奴は共通の敵なんだよー」

「アーン、弘明ィ~。あなたのクラスメイトが苛めるの~♡」

「「「「だから、幼馴染アピんなーーー!!」」」」


「それでアンナ。お母さんと何があったの?」

龍崎が問いかける。

「成績の順位のことで何か言われたの?」

うちも気になってるから聞いてみた。

「それは大丈夫だったみたい。仮の親は順位表を見てしばらく固まってたけども何も言わなかった」

「えっ、何も?」

「うん。それで僕は一緒に勉強会に参加したリオとニッチの順位の話をしたんだ。それからミクリンもカッチンもどれだけ親切に教えてくれたかとか、二人も更に成績を上げた事とか」

「うん、それで?」

「その後もお母さんが何も言わなくなったから腹が立ってきて僕は言ってやったんだ」


「アンナはたしかお母さんと上手くいってないって言ってたよねえ。」

ミクリンが口をはさむ。

「うん、僕の母親は見栄っ張りだから、中身を見ない人だから。ニッチの事もニッチのお母さんも見下した事を言って知りもしないで悪く口ばかり。それも警察の中で。ニッチのお母さんは笑って気にしないでって言ったくれたけど僕は我慢ならなかった。」


 いつの間にかアンナの言葉が仮の親からお母さんに代わってる…。

「だからお母さんに、僕はこんなだから何を言われても仕方ないけど、友達を罵られるのは耐えられない。リオの事だって一回しかあったことが無いのにどうして悪口を言うんだって。引き籠ってた僕の友達になってくれて学校に連れ出してくれた恩人なのに。こんなに友達を作ってくれて学校に行くのは楽しいのに家に帰るのが苦痛だなんて今まで思ってもいなかったよって。」

そこまで言われるとちょっとハズい、ウチ照れちゃう~。

「そしたらね。お母さんが一言ゴメンって、それでおしまい。っで今日一緒についてきたの」


「良かったじゃないアンナ。きっとお母さんも解ってくれたのよ」

龍崎がホッとした表情で言った。

ウチもホッとして言った。

「ホント、ウチも順位表の改竄がバレたのかと思ってヒヤヒヤしたよ」

「アンドリン! 改竄って何?」

「梨凰! あんた又ロクでも無いことやらかしたんじゃないの?」

「あーんーどーーう! さっさと白状しなさい」

「ちっ違うの。ウチはアンナに良かれと思って…」

「そっそうだよ。リオは僕のことを思って、二人で相談して…」


 結局三人に詰め寄られてすべてを白状させられた。

それを聞いていた虎谷が呆れたように笑って言った。

「ねえ、龍崎花梨。あんたの学校バカばっかりじゃないの? 四十人クラスで四十九番って普通気付くでしょう。あなたの学校、偏差値偽ってるんじゃないかしら」

「うるさいわねえ! バカなのはこの娘たちだけよ。いや、西爪も結構馬鹿だわねえ…。あーー否定できないわー」


「アンドリン。あんたのせいで女子大付属女に舐められたじゃないか」

「くっそー、この借りはいつか返すからなー」

「貸す気もないし、返していらないから」

「青山、あんたの幼馴染がアーシらの事バカにしてんだぞ。何とか言ってやれ」

「弘明ィ~。なんかあの女も怖い~。一昨日も叱られたし~」

「悪いけど俺も新田には逆らわないことに決めたんだ」

「まあ、でも、そのせいでアンナのお母さんがアンナの気持ちに気付いてくれたんだから結果オーライね」


「あとはアンナのヤラカシがお母さんにバレないようにする事だね」

ミクリンがシミジミと言う。

「特に梨凰がヤラカシまくってるからなあ」

「屋柄にも狙われてるし。あいつまだ捕まってないよねえ」

「利根川も羅王元もまだだよー(泣)」


「リオさん。あなたいったい何をやったの?」

「アーシらが拉致られた時、屋柄のアルファードを壊しただろう」

「そだね。壊されたワゴンってリオが破壊した車だよね。」

「違うよ。あれはピグレ〇ト仮面でしょう。」

「瀬里香ちゃんが攫われたときアンドリンが車ボコボコにしたよねえ」

「そうだね。それでシエンタがリオだよね。」

「あれも、プ〇さん仮面と地獄送りの兵頭警部補に怯えたヤカラが暴走したからだよ。」

「そうか、僕らは何一つかかわってない被害者だもんね。」

「そうそう、最後の廃車工場に至っては屋柄達とヤクザの暴走」

「「だもんねー」」


 口を半開きにした虎谷がどうにか声を上げる。

「あなたたち大概よねえ」

「それに俺達もドップリと浸かっちまったよなあ」

「大概の使い方が間違ってるよー(泣)」


ウチは声を潜めてアンナに聞く。

「それで、この間相談事って言ってたのはもういいの?」

「うっ、うーーん」

何か煮え切らないアンナの赤い右目を見つめる。

「もうイイや。みんな居るけどここで言っちゃうよ」

意を決したようにアンナが顔を上げて宣言する。


 固唾をのんで見守るウチら。

「ごめん、ミクリン。あのね、僕ミクリンの趣味がどうしても理解できないんだ」

「「「「……」」」」

「勧められたけどニンスレって良くわからないよ。なんか失禁しまくる小説って理解できなくて…」

「それってあれでしょう。梨凰が借りてきて途中まで読んでホッポッてたやつでしょう。なんか兄さんがハマって一生懸命読んでたけど」

莉鳳(リホ)姉ちゃんの突っ込みが入った。


「あー、あれアーシも勘弁だわ」

「そんな事ないよー(泣)。みんなぶち殺して壮快だよー(泣)」

ああっ、やっぱりカッチンはちょっと怖い。

ミクリンすらちょっと引いてるもん。

「ウチもプリキュアやマイメロが良いよ。ピンクだし」

「やっぱりリオは心の友だよー」


 今度は龍崎も虎谷が青山君と一緒に置いてけぼりを食らってる。

そこへ大量の音響資材を抱えた北野君と西爪君が入ってきた。

「おー、遅れてすまん」

「ほんとに、西爪のせいで大変だったんだからな」

「あっ、虎谷も来てたんだ」

「げっ! 虎谷宇蘭。何でここに? って西爪が何で虎谷を知ってるんだ?」

「まあ色々あっったんだよ。それで学祭の音源ができたからお披露目もかねて持ってきた」

「「「「「できたんだ!」」」」」

「みんなの声、入ってるぞ。虎谷、お前の声もばっちり使ったからな」

「いったい何のこと?」


 男子三人が音響機器をセッティングしてイントロが流れ出した。

ラジオスターの悲劇だ。

オープニングの歌詞からすべて、ウチらのクラスメイトの音声に置き換えられている。

虎谷が目を見開き驚いて声を上げた。

「良いじゃない。すっごく」

それが次の瞬間悲鳴に代わる。

”Oh.oh”の部分が虎谷と龍崎の声で”ウゥ~フッ~ン。弘明ィ~ン♡”と”ネェ~ン青山ァ~”に置き換えられていた。

「「やめてーーー!!」」

虎谷と龍崎の声が響いた。

ナイスだ、西爪君。

最後までお付き合いありがとうございました。

この章で一旦締めたいと思います。



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[良い点] アンナが救われてよかった。 [気になる点] ニンジャスレイヤーは履修してませんので、わからない。 [一言] リオはいい子。 登場人物沢山な上に、呼ぶときの名前がそれぞれ異なるなんて…
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