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詩諸の記憶書庫  作者: 詩緒(暫定的に)
2/3

中途半パ。

中途半パ。この端という漢字すらかけない。

それが僕の。僕という存在だ。

勉学、仕事、趣味、なんにしても、だ。

色々なことに悪戯に興味をもち、かいつまみ、他人より少しだけ早く慣れること。

そして人の顔色をうかがう事は上手く。


それからしばらく続けるうち、自分の手には届かぬ、雲の上の存在を知るや否や、


「自分には向かぬ、こんなものはつまらぬ」


と言い捨て、諦め、投げ捨てる。

あるいは些細な失敗をする、或いは少し難解な理論を説明されると、


「自分にこのような難解なことは理解できぬ、わからぬ」


と、やはり投げ捨ててしまう。



この文章にしてもそうである。

とある偉大な作家の文を読み、いたく感銘し、

自分もそのようなものを書いてみたい、などと考え、

今まで使いもしなかったような台詞回しをし、

知りもしない言葉を雰囲気で使い、ありもしない言葉を勝手に作り上げ、

したり顔で話を書き進め、自画自賛していく。


真似事ではない。これではただの猿真似である。

そう書いたが、僕は真似事と猿真似の違いを知らない。

ただ字面を見て猿真似の方が質が低そうだ、と。そう思っただけだ。


つくづく、自分の語彙力のなさを痛感し、呆れる。

こんなものでよく、

「私は物書きだ」

などと周囲にのたまえるものである。



話を戻すとしよう。どうせ猿真似をするのならば、この中途半パな人間も。

自分自身にしなければよかったのだ。

中途半パのパも書けぬ、しがない物書きの自堕落な男性。

誰がそんな面白みの欠片もない筆者の自己投影に興味を示すだろうか。


もっと大衆の目を惹きたければ美少女にしてしまえばよかったのだ。

その方が需要は多いはずである。


漢字も書けぬ、言葉も知らぬ、しかし美少女。

そして、その彼女を影から支える冴えない地味だが天才文学少女。

二人はクラスメイトで、学校では一切交流も会話もなかった。

しかし少しずつ仲良くなっていき、お互いの距離は近づいていく。

一緒に仲良く遊び、時には喧嘩もしながら。

やがて地味な少女は一つの話を書きあげる。しかし知名度がない。

そこで彼女は美少女がこれを書いたもの、ということにして作品を投稿し、

美少女は作家デビューする。

美少女は有名になり、一方で全く評価されずにいる地味な少女。

しかし文学少女は何の見返りも求めず、ただ支え続ける。


結末は、罪悪感から美少女が真実を告げ、

文学少女が評価されるハッピーエンドでもいいし、

逆に見向きもされなくなってしまうビターエンドでもいい。

あるいは、文学少女は美少女に友情以上の感情を持っていて、

作品の言葉を借りて告白し、結ばれる、そんな百合展開物でもいい。

いずれにしても、このようなしがない男の物語よりは。

よっぽど面白いのではないか。


しかしだ。どんな使い古された、その上、猿真似の表現を使って何になろう。

俺はもっと素晴らしい、誰もが思いつかぬような作品が書けるはず、と。

俺はそんな『平凡』な人間とは違うのだ、という驕りである。

驕り、とは違う感情かもしれないが、所詮この男の乏しい表現力では。

驕り、というほかになかったのである。


そんな感情が、この男を、偉大な作家の猿真似をする、という愚行へと走らせた。

その結果、こんな使い古された表現以下の、

三文小説にもならぬものとなってしまった。


大失敗である。と、また偉大な作家の猿真似をしてこの話に終止符を打つとする。

はい……はい、お預かりします。

って……随分と癖の強い方ですね。

自己肯定感がかなり低い方です……。

もっと自分に自信持ってくださっていいのですよ? ――詩緒


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