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子供会議

誤字報告ありがとうございます。

あっという間に月日は流れた。


フリデミング殿下のすぐ上のケールミング殿下は、12才になっても軍隊には入らなかった。国王陛下(長兄)の内政補佐をする道を選ぶそうだ。


「兄弟が皆、軍部に固まってしまうと内政の方で国王陛下の邪魔をする輩が出た時に、素早く排除出来ないからね」


排除…またも圧のある単語を駆使する7才になったフリデミング殿下。


男兄弟4人は国王陛下(長兄)を中心にがっちり結束している。双子の王女殿下は基本的に画策には不参加だが、男兄弟達のすることに賛同しているそうだ。


珍しく…というか年齢を重ねても兄弟(兄妹)達は仲が良い。父親の望む?『簒奪』などという恐ろし気な事態は起こりそうもない。


「前から何度も言っているが俺達は皆、地頭が良い。何が理に適っていて、どういうことが非効率で生産性の無いことか分かっているんだよ。だから一番面倒くさい国王なんて皆がやりたくないし、サイフェリング国王陛下に面倒を押し付けていると思っている。事実、兄上が一番の適任だし本人が長兄だからと腹を括って取り組んでおられるのを、俺達は全員理解している。だから全力で支えるつもりなんだ」


うん、ご兄妹皆様がサイフェリング陛下のことを尊敬しているのは近くで見ていると良く分かる。


分かって無いのは、父親だけだ。最近は王太后様も頭の固い中年に苦言を呈されているけど、王太后様にまで逆ギレ嫌味を言っているらしい。気を付けないと、おば様達に勘違い野郎だと陰口を叩かれるよ?


「あの人、今度は国王陛下に縁談を持ち込もうとしているらしいよ。しかも評判の芳しくない令嬢だとか…」


とうとうあの人扱いか…それにしても自分の息子に嫌がらせをするにもほどがあるよね。


という訳で本日は王城に呼び出されている。


「皆、忙しいのに済まないな。本日の議題は、父上の悪足掻き第三弾、婚姻作戦の撲滅についてだ」


フートロザエンド王族の家族会議?に何故だか参加しています。王城の一室にサイフェリング国王陛下、ライトミング殿下、ケールミング殿下、フリデミング殿下、ララヴェラ王女殿下とナナヴェラ王女殿下…そして何故だか私。


あのぉ~私は親戚でもないし、只の友達枠だと思うんだけど…


「婚姻の打診を受けているとされるのは、ソレアーナ=ダストス侯爵家令嬢…21才だ」


「げえっ6才も年上!」


ライトミング殿下が国王陛下の話に絶妙な合いの手を入れている。仲良いな~


「21才…婚期を逃されているのかしら?」


「初婚?まさか一度婚姻歴があるとかはないわよね?」


ナナヴェラ殿下とララヴェラ殿下のヒソヒソ声もバッチリ聞こえております。双子は隠す気無いね。


「軽く素行調査をしたけど、自慢出来るのは家柄と実家の領地経営くらいだ。本人は妃候補に名前が挙がっていてもいつも通りに派手な友達と遊び歩いている」


「駄目だな、却下」


サイフェリング陛下が投げ捨てるように言った。


「年上だって構わないんだ。国王妃として責務を負える子女じゃないと話にならん」


「このダストス侯爵令嬢に関しては、王太后に耳打ちをして候補から外すように話はついている」


スラスラと調査結果を読み上げているケールミング殿下。すでに宰相様のような貫禄がありますね。


「懲りずに他の候補を推してくる可能性は?」


フリデミング殿下がそう聞くと、皆が一斉に私を見た。え?私が何?


「ハラシュリアの可能性が高いな」


ケールミング殿下がそう言った瞬間


「却下」


と瞬時に返したサイフェリング陛下に


「ちょおぅおい待って下さいよ!何か腹立ちますねぇ?」


思わず国王陛下に不敬な言葉を発してしまった。フリデミング殿下が私の隣の席から勢いよく立ち上がった。


「あ、兄上にこんな子供のハラシュリアじゃおかしいよっ!何考えてるんだよっ!」


「ちょっと!フリデミングのその発言も腹立つよね!そりゃ選ばれたら断らせて頂きたいところだけど、勢いよく拒絶されるのも乙女としては認めたくないと言いまs…」


「乙女だって…ぷっ」


「ライトミング殿下ぁ今、笑ったな⁉笑いましたね⁉今、全世界の7才女児を敵に回しましたよ!」


「はい、静粛に。でも父上の推してくる令嬢よりはハラシュリアの方が適任だということも、悲しいかな現実です」


ケールミング殿下の発言に皆が黙り込んだ。国内問わず、諸外国を探せばまだまだ良縁が転がっていそうなサイフェリング陛下にわざわざ難ありな令嬢を推しつけようとする父親。


「私の妃が問題を起こせば、それを理由に退位を促すつもりかな…」


愁いを帯びた尊顔を見せる15才の陛下。


「もぉ~さ面倒だからちょこっとだけ、父上に実権を任せてみたら?」


ライトミング殿下がニヤニヤ笑いながらそう言うとケールミング殿下が大きく溜め息をついた。


「簡単に言うけど、傾くのは早いよ?半年任せたら立て直すのに数年はかかる。俺の試算と予測では、まずサイフェリング陛下の打ち出している政策を全て白紙撤回に持って行くだろう?既に事業として動き始めている、年代別学舎と幼児預かり所の閉鎖…それだけでもとんでもない損失だ」


「やはり、そこを潰そうとしてくるかな?」


サイフェリング陛下が目を細めてケールミング殿下を見ると、見られたケールミング殿下はゆったりと頷き返した。


「あの人の性格は読んでいる。兄上に対抗意識を持っているから、兄上の功績を潰しにかかるよ。それが愚策であろうとなかろうと。それに振り回される臣下達の気持ちを考えろって感じだな」


今…私って家族会議に参加しているのよね?これ、16才以下の子供の集まりよね?前世の国の朝議を思い出したわ。恐ろしい…子供達。


「ねえ…お父様にはっきり申してみたら?」


大人しくしておられたララヴェラ殿下が急にそう言ったので、私達はララヴェラ殿下を見た。殿下は困ったような泣きそうな顔をしていた。


「お父様に、どうしてサイ兄様をお認めにならないのか聞いてみたら?」


「ララ姉様、それは駄目だよ」


フリデミングがララヴェラ殿下の傍まで行って手を握って微笑んでいる。これだけ見れば可愛いらしい7才児の微笑みだけど、中身がジジイだから犯罪臭が半端ない。


「大人って子供に間違いを指摘されたら、怒ってしまうんだよ。恥ずかしいことだと言われると認めたくなくて、怒りの矛先を指摘した子供に向けるんだよ」


…おいっ!7才児のくせに大人顔負けの正論をぶちかますな!怪しい7才児だと国の秘密機関(所在は不明)に目を付けられたらどうするんだ!


私が内心ビクビクしていたら兄弟達は一斉に溜め息をついて


「フリデミングの言う通りだね~」


と全く同じ言葉を全員が仰った。怪しい7才児の発言は上手く聞き逃されたようだ…


だが火種は子供達から起こらずに、別の方向から起こってしまったのだ。緊急でまたちびっ子会議が招集された。議題は『大人の矜恃をえぐる事件の対策と傾向』


今回議題の案件を目撃したのはサイフェリング陛下とケールミング殿下だったのだが、6才年上の侯爵令嬢を妃候補から外しましょう、という話を王太后様がミルトマイデラ公に話した時に、嫁が旦那にチクーッと針の一刺し攻撃を浴びせてしまったというのだ。


「もういい加減にして差し上げれば?サイフェリング陛下も立派になられたわ。いつまでもあなたが構う必要はありませんでしょう?」


この王太后様の言葉を聞いて、サイフェリング陛下もケールミング殿下も肝が冷えたそうだ。


「あんなに恐ろしい思いをしたのは久々だった」


ケールミング殿下の普段はにこやかな顔が、その話をしている時は顔が引きつっていた。


「それで、ミルトマイデラ公はどう返されたのですか?」


私が聞くと、フリデミングもライトミング殿下も前のめりになった。


「サイフェリングはまだ子供だ、親の私が決めてあげなければいけない…だったか?」


サイフェリング国王陛下は、面倒くさそうにそう言った。


ケールミング殿下は目頭の辺りを指で揉んでいる。おじさんっぽい仕草だね、12才だけど。


「すると母上が『ミルトマイデラ公!サイフェリング陛下と呼称をお付けくださいませ!息子と言えども一国の王なのですよ⁉』と言ってしまった…これって男の、大人の矜恃が踏みにじられたっぽい案件だろ?」


あ~あ、王太后様の仰っていることに間違いはない。もう15才だし子供でも無い年齢の上に、一国の王に対して呼び捨てはいかん。私室の奥の寝所で話している時ならいざ知らず、ソレは駄目だ。


「侍従、メイド、補佐官、臣下の居る前でそれは良くないな、母上の言う事は当たり前だ」


ライトミング殿下の言葉に皆は頷いている。でも言われたミルトマイデラ公はどうだろう?妻に捩られたと穿った受け取り方をしていないだろうか?


王太后もサイフェリング陛下も自分を馬鹿にしている…そう勝手に解釈しないだろうか?


おじさんの拗らせほど扱いにくいものはない…


「マズイな」


思わず私が口に出してしまったので、王族方が私を見た。見られたので仕方なく自分の見解を話すことにした。


「今まではサイフェリング陛下への嫉妬心で、緩い嫌がらせに留まっていたことが強硬な手段に出てくる可能性も出て来ました。まさかとは思いますが、マティアーラ王太后にも更なる厳重な警護をお付けすることを進言致します」


……しまった。調子に乗ってやってしまった。調子に乗るのはうちの陽気な兄上だけでいいのにっ!


国王陛下以下皆が目を丸くして私を見ている。やがてサイフェリング陛下がクックッ…と忍び笑いを始めた。


「いやいや面白いな~さすがハラシュリアは格別だ。私の妃候補に是非推しておこうかな?」


「そっ⁉それは有難き幸せ…じゃない困ります、ええ、困ります。是非とも素早く速やかに候補から外して頂けると助かります…」


不敬にも国王陛下を全否定してしまった形になって声も段々小さくなる。


サイフェリング陛下は忍び笑いから大爆笑に変えると不穏な言葉を発した。


「まあ、今更横入りするのも国王としては情けないしな!」


横入り?


私が怪訝な顔をしていると、ナナヴェラ殿下が笑顔になって私に抱き付いてきた。


「そうそう!今更ですわよ~お兄様!ハラシュリアはフリデミングのお嫁さんですものねぇ~?」


っぃぃぃえええええ⁉それなんだ⁉どういうことだ⁉


慌ててフリデミングを見ると、フリデミングはキョトンとしている。


「あらぁ知らなかったの?ずっと前からフリデミングとハラシュリアは婚約していると聞いているけど?」


それどういうことだ⁉ララヴェラ殿下ぁ⁉


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