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オババの縁結び

更新が遅れました、よろしくお願いします。

久しぶりに登城して、フリデミングに会いに来ていた。


何てことは無い、フリデミングから手紙が届いてその内容が


『次の作戦を決行する時が来たようだ』


と、極悪集団の頭領のような台詞だったので、何か悪巧みでも計画中なのかと心配になって訪ねてみたのだ。


「フリデミング~」


「やあ、ハラシュリア!」


…何をしているの?いえ、裏庭で木刀を持って素振りしているのは見れば分かるんだけど、どうして急に?


「急にどうしたの?」


木刀を振る手を止めると、フリデミングは私を手招きした。木陰のベンチに2人で腰掛けた。


「ハラシュリアの言う通りにして、暫く父上を野放しにしておいたんだ」


実父を放牧しているような表現をしている5才児。


「そうすると、ライ兄上とケール兄上に接触して『軍部に入らないか?』と珍妙な勧誘をしてきたらしい」


本当に珍妙ね…例えば軍の人事担当の教官あたりが、将来有望そうな若者に声をかけるのならいざ知らず…あの方から軍に入りなさい?まあ、才能が有れば薦めるのは分かるけど。


「それで殿下達はどうしたの?」


「面白そうだから入ってみるんだって」


「…そう」


王子殿下ってお手軽でいいわね?面白そうですって?そんな世の中を舐め切った態度で渡って行けると思っているのかしら?ここは強面の将軍閣下とかから入隊お断りでもされちゃえば、目が覚めるんじゃないかな?


…と思っていたのに、第二王子のライトミング殿下12才はあっさりと軍の採用試験に合格してしまい、あっさりと入隊してしまった。不正は一切無いとのことだった。


「いや~簡単だな、軍の採用試験」


とか、後日お会いした時にライトミング殿下は仰っていたけど…


そんな訳あるか!


聞くところによると、一応12才から入隊可になっているとはいえ、殆どが1、2年後に何とか合格出来る技量と力量を備えてやっと合格するかな?という感じなのだそうだ。


まだひょろっこい子供が入隊出来るなんて、まずはない。歴代を見ても唯一の1人、現在の元帥閣下で在らせられるフリデミングの親戚にあたる、ジューク=ヴュリアンデ閣下だけだということだ。親戚だからなのか、剣士の血筋かな?


「で~フリデミングも軍に入るの?」


「ん~そうだな。このまま父上が良からぬ思想に取り憑かれているのならば、兄上達を魔の手から守って差し上げねばならないしなぁ~」


良からぬ思想…魔の手…すごい圧を感じる単語を連発しているけれど、本気なの?


「フリデミングは何を警戒しているの?」


今日も私が登城した時、木刀を振り回していたフリデミング。私が近付くと一緒に木陰で涼もう!誘ってくれた。私はフリデミングに会うなり、一番気になっていたことを聞くと彼は5才児らしからぬ不敵な笑みを見せて、答えてくれた。


「父上の王位簒奪を警戒している」


「なっ⁉」


息を飲んでフリデミングを見詰めていると、フリデミングは少し表情を緩めた後、王城の王族の居住区のある方を見ていた。


「俺や兄上達を煽って反逆を企てたい…今の段階ではそこまでは思っていないかもしれないが、長兄である国王陛下より()()()()()()()()()()…と思いたいのか、本気でそう思っているのか、それは分からないけど…どうしてだか未だにサイフェリング国王陛下を認めない発言を繰り返している。馬鹿だよな~父親だという矜恃が邪魔をするのか、息子より劣っているという事実を認めたくないのか、子供に嫉妬するなんてなぁ~それに付き合わされようとしている俺達、下の子供の気持ちを考えろって…」


「大人って年を取れば取るほど、若い子に嫉妬するし下の子達に素直に負けを認められなくなるからね」


「実感籠っているな?」


私はフリデミング殿下に澄ました顔を見せた。


「これでも前世で亡くなる前は、女性初の内務省の幹部役人にまで昇進したからね!その時も気を付けてはいたけれど、機転の利く若い役人が入ってきて、仕事を手際よくこなしているのを見ると…嫉妬した。でも心の中で折り合いを付けて、若い子の良い所は褒めて、直せるところは教えて…それはそれで楽しかったけどなぁ~ああそうだ~出来る若い子を褒めてあげたら、泣かれたことがあるんだよね」


「そいつはどうして泣いたんだ?」


「彼は男爵家の3男だったのだけど、子供の時以来、久しぶりに褒められたんだって。彼は、一を聞いて十を知る…本当に頭の良い子だった。それが親、特に男爵家の跡取り息子の長男から見れば恐怖だったらしいということね。実兄から面と向かって、どこか見えない所に消えてくれって言われたそうなのよ?在り得ないわっ!私なら優秀な人材は手元に置いておいて、辣腕を振るって欲しいけどね~男の人って本当に嫉妬深いのね」


と言って、チラリチラリと空耳馬鹿を見てあげた。見られた空耳は顔を赤くした。


「俺のは嫉妬じゃない!そのぉなんだ…あんな死に方をして俺に告ったくせに、次に逢ったら忘れてるなんて…ったんだ」


「何だってぇ?」


本当に聞きとれなかったから聞き返してあげた。モゾモゾ喋るな!はっきり喋れ!


「こっちは悩んで会うのも迷って…いざ会ったら俺を憶えてなくて無視した!」


私は胡乱な目をフリデミングに向けた。


「無視は…しないでしょう?あなた仮にも王族だったし、ご挨拶はしたと思うけど?」


「でも俺に気が付かなかった!」


そりゃ死に際の枕元に呼ばれた時に初めてまして?ぐらいの感じだったし…いつどうやって気付けというのよ?


「あのね~今更ですが、子爵令嬢で内務省の末端役人と第四王子殿下で軍属の方が、お互いに気が付く範囲までどうやって近付けるのでしょうか?」


「一目見れば分るとオババが言って……何でもない」


今、何か言いかけたな?オババ?誰だそれ?


「そうだ、どうして私が…ルベリナ=クレガレンがクリシュエラ=バンティラード王女だとどうして分かったの?それに…これは偶然かな?私も今回は前世のことを憶えていたし、フリデミングを見て一発でライゼウバークだと分かったんだけど…」


「やっぱり…不完全…」


何かブツブツ言っているフリデミング。怪しいぃぃ…ジッと睨んでいると、フリデミングは観念したのか口を割った。


「その、クリシュエラ殿下が亡くなって…俺と殿下のことを人の記憶から魔法で消すことは出来ないのかと、城の魔術師に相談したことがあるんだ。そんな魔法は無いってことを言われたんだけど、その時にクリシュエラ殿下に死に際に言われた言葉が本当で来世で巡り逢うのか?と魔術師に聞いたら、俺の体には術がかかっている気配は無いと言われて…巡り逢いはどうすればいいかと聞いたら、城下町にあるオババの館という所に言って相談しろと言われた」


「オババの館?あ~思い出した!そこって以前魔術師団の副団長を勤めていた女性が始めたお店だっけ…あれ?」


そう、思い出したついでにそのオババの館といえば当時、若い女性達に大人気の魔術専門店で…何故人気店かと言うと


『縁結びの魔法』


これをかけてくれるらしい。簡単に言うと意中の人と出会いやすくなる魔法…らしい。そんな怪しげな呪術的な何かが存在するんだろうか?んん?そんな魔術店に行ったの?空耳は何してるんだ?


「クリシュエラ殿下と会って誤解を解きたい、と言うと来世で誤解が解けるように術をかけてあげようと…言われて術をかけてもらった。だから術が効いて、記憶を保持していたし…お互いが逢えば分かったとおも…いてぇ!」


私は不敬を忘れて、フリデミングの後頭部を思いっきりはたいていた。


「この馬鹿っ!そのオババの館は縁結びの魔法で有名な店じゃないか!そんな怪しげな呪術を使うからこんなややこしい事態に陥っているんじゃないの!お前が勝手に空耳していたくせにぃ!」


私が尚もフリデミングの頭を平手でべしべし叩いていると、侍従のフーレイさんがまたも走り込んで来た!


「ハラシュリア様!それ以上叩いたらフリデミング殿下の後頭部が変形します!」


…私がそんなに怪力だと思っているのか?そうなのか?


「俺と巡り逢いたいくらいっ俺の事好きなのに…俺がそんな気が無いのを黙っているのは申し訳なくて…」


「はぁ?私がいつあんたを好きだとか言ったか?勘違いするなっ空耳のくせにぃ!」


この私とフリデミングの発言を侍従のフーレイさんや他のメイド達がしっかり聞いていたらしく、後ほど国王陛下と王太后に伝えられていたなんてその時は知りもしなかったのだ。


そんなある日


急に王太后様が公爵家の我が家に遊びに来た。


お母様とお茶でも飲むのかな~と自室で恋愛小説を読んでいたら、お母様に貴賓室に来るように呼び出された。


王太后様が私にお話があるんだとか…何だろう?


部屋に入ると、人払いがされてお母様と王太后様と私の3人になった。


「ハラシュリア、侍従のフーレイから話を聞いています。あなたがフリデミングに気があるようにフリデミングが勘違いをして、迷惑をかけているようだ…と」


ひええええぇ⁉合っているけど正解ですけどっこんな6才にも満たない幼児の私に懸想の話題はキツイですーーー!


「ハラシュリア、正直に話して?フリデミング殿下と何があったの?」


お母様⁉何があったと聞かれたら生まれ変わりを跨いで、誤解をされてました!としか言いようがないのだけど、そんなことを話そうものなら気触れだと言われそうだし…どうしたものか。


「う~んと私がフリデミング殿下の事を好きだと言ったと、殿下が勘違いしちゃって…殿下が困るなあ、俺は別にハラシュリアの事はそんな風には思えないのだけど?と言われて、言ってないのに断られた?みたいになってるのかな?」


間違ってない…と思う。簡単に略すればそんな感じだ。生まれ変わって~を省くとこんな感じだ。言葉遣いが5才児にしては生々しくて疑わしさが半端ないが、王太后様とお母様は、一斉にまああ!と声をあげている。


「フリデミングは何を生意気言っちゃってるのかしら!」


あれ?王太后様そっちに怒るの?


「殿下が聞き間違えたのよね?男の子って早合点して、舞い上がりがちだから」


お母様…!お母様は自分の息子とフリデミングを比べているんだろうな。ええ、うちのお兄様はお調子者です。すぐに浮かれる陽気な男子です。


「そうそう、調子に乗った挙句、お前の事は異性としては見れない!とか言うのよねー!嫌だわぁ」


「気の無い男性でも『気の無いフリをしているけどお前、俺の事気になってるんだろう?』とか言われたりね~?」


「やだぁ~あるある!」


「気持ち悪いのにふざけるな!ですよね~」


「鏡を見ろ!っていう感じよね~」


段々論点がズレてますよ、おば様達…。


そして、勘違い男性あるあるを散々話し倒して、王太后様は帰られた。3時間ぶっ通しだった。座っていてお尻が痛くなってきた。退席させてくれたらいいのに、5才児にキツイよ。


「ねえ、ハラシュリアは…フリデミング殿下のことは嫌いじゃないのよね?」


お母様がお花を摘みに行こうとした私にそう言って聞いてきた。


私は正直に答えた。


「ええ、勿論。ちょっと先走る傾向はありますが、素敵な人だとは思ってます」


そう、思い込みの激しい空耳だけど、人としてはとても気の合う異性だ。もう長い付き合いだしライゼウバークの時から、あいつの趣味趣向も大体分かっているし、何せ気安く接せられる。


私がそう答えるとお母様は、安堵したような顔をした。そうだよね~いくらなんでも私がフリデミング殿下のことを大嫌いだと言ったら困るよね~。


そうこの発言がまた数年先に、遅効性の毒のように私とフリデミングを襲って来るのだが、気が付くのは数年先だった。


オババの魔法は、効力があるのかないのか……運次第です

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