表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/27

腹黒参謀

賄賂や犯罪を助長するつもりはございません、念のため。

賄賂に味を占めたのか、フリデミングは父親におねだりを続けている。


お父様アレ買って~!…うん、よくある親子の光景だ。問題ないだろう…私もその恩恵を受けているのだ、詐欺的な何かに加担していると言われてしまうかもしれない不安はあるが、もう食べてしまって腹の中だ、もう戻せない。


はい、何とか5才になりましたよ、ハラシュリア=コーヒルラントでございます。目の前で『オモチ』という名の東方の菓子をご機嫌で食べている彼、フリデミング=フートロザエンドも5才になりましたよ。


ところがね、オモチも頂いてそろそろ帰ろうかな~という時にミルトマイデラ公が部屋に飛び込んで来たのだ。


「フリデミング~お前の食べたがっていた『ナミカトワト店のライライの丸ごと一頭焼き』を準備したよ!」


それはっ⁉馬鹿が一頭食べたいとほざいていた例の魔獣肉か⁉


私はフリデミングの馬鹿を顧みた。空耳馬鹿は急いで私から目を逸らした。


「あんたぁぁ…!」


私が空耳に飛び掛かってやろうかと構えた時、モワッとした熱気と共に黒々と良い照り焼きになった、多分コレがライライという魔獣なのだろうな~という生き物がどーーーんと巨大皿に乗り、部屋に運び入れられてきた。なんと4人がかりで担がれていた…これは料理、なのか?


デッデカイ!うえぇぇ⁉ライライの焼けた目がダラーンとしてこちらを見ているのが、キモイィィ!


「ぅ…うわーーっすごいや!」


…また5才児の驚きの演技をしながらミルトマイデラ公に空耳馬鹿が走り寄ろうとした時に


「へぇ~またすごい食べ物だね」


と…国王陛下(13才)の冷ややかな声がして、お兄ちゃん達(国王、第二、第三)がニヤニヤしながら廊下に立っていた!


宿敵?から、わっ…賄賂を頂いていた現場を押さえられてしまったーー⁉


私はガクガク震えながらフリデミングの方を見た。しかし、フリデミングは一瞬で笑顔になると


「わ~っ!兄上達も食べるよね!」


と無邪気に笑い、ライトミング殿下とケールミング殿下に抱きつくと素早く兄弟達の後ろに隠れた。


ああっそれは!何時ぞや言っていた、何かあったら~後ろに隠れて知らないフリを~のそれかっ⁉


…ちょっと待て?私はどこに行けばいいの?何だかたまたまこの部屋に居た為に、熾烈な派閥争いに参加してしまったようで、立ち位置的にはミルトマイデラ公と殿下達の間に、偶然にも立っていた。


中立…という意味ではないのですよ、はい。誰か…助けてよ。空耳フリデミングを見るも、目を逸らされた。


おいっこらっ!何故お前だけ殿下達の後ろに可愛く隠れているんだよ!私が独りで晒し者状態じゃないかっ!今、国王陛下(13才)にめっちゃ冷ややかに見られてるよ!


「…ふーーーん美味しそうな魔獣肉だね、おや?ハラシュリア子女も一緒かい?フフフ…では子女も交えて皆で頂くとしようか?父上、ありがとうございます」


「ありがとうございますーー!」


兄弟達が声を揃えて叫んだ。私はそのノリに乗り遅れて、一人でガクブルと震えていた。いや…ミルトマイデラ公も若干震えていた。仲間だ…


ふざけんなよ、空耳馬鹿っ!今世の寿命が10年は縮んだじゃないか!


「ハラシュリア!一緒に食べようねー!」


とまたブリブリの無邪気演技をしながら近づいて来た、空耳馬鹿に向かって私は膝蹴りをした。


「っいでーー!何するんだよ!」


「煩いっ!淑女を1人で孤立させるなんて⁉あんた紳士の風上にも置けない奴ねっ!」


「淑女が蹴りなんてするかよっ!この暴力女っ!」


「何だとっ⁉」


フリデミングの胸倉を掴んだ時に、物凄い勢いで襟首を掴まれた。犯人は侍従のフーレイさんだった。


「はい!そこまでです!」


私もフリデミングもフーレイさんに空中に吊るされていた…あのぅ私達、一応王子殿下と公爵家令嬢なんですが?え?言う事を聞かないダメな子に出自は関係ありません?ごもっともです…


そしてとんでもない緊張感に包まれながら、勿論王族達にも囲まれながら…私はモソモソと高級魔獣肉を頂いていた。流石高級魔獣肉…外側の皮がパリッと香ばしくて肉は味わい深くて、とても美味しゅう御座います。


只々、周りの空気が悪いだけです。勿論空気が悪いのはミルトマイデラ公だけだ。兄弟殿下達は、楽しそうに騒ぎながら魔獣肉を食べている。


こういう時に陰気な雰囲気を作っちゃうのがミルトマイデラ公のいけない所よね~気持ちを切り替えて子供達と一緒に騒いで食事を楽しめばいいのに…


何か大人の事情があるのかもしれないけど、あなた子を持つ親でしょう?その子達が頑張っているんだから、邪魔したりしないで見守ってあげなさいよ。


「ハラシュリア~~ホラァ!」


物思いに耽っていた私の目の前の皿にドカッと何かが置かれた。ブシャッ…と鈍い音がしてダラーンとした白濁した眼球を向けたライライが私を見詰めていた…


「どう~美味しそうだろ?」


ジロリと自分の横に座る空耳馬鹿野郎を見た。空耳と一緒にライトミング殿下とケールミング殿下がニヤニヤしながらこちらを見ていた。


男ってさっ!こういう、どーーーーーーーーでもいいような低俗な嫌がらせを喜々としてやってくることあるよねぇ⁉あのねえ?私を誰だと思ってるのよ?元王女殿下で元おひとり様のおばさん役人だよ⁉


魔獣の目玉よりシミや皺の方が怖いしぃ、何なら髪の毛の中に白髪を一本発見した時の方がもっと恐怖に陥るわ!


私は魔獣の目の玉をフォークで刺すと、一気に口の中に入れた。


「ハラシュリア⁉」


「ぎゃあ!目玉食べやがった!」


「嘘だろっ⁉」


「子女⁉大丈夫なのか?」


やかましいわっちびっ子共めっ!お前達は今、王都で人気のお料理本の『魔獣のお料理アレコレ~珍味を手軽に食べやすく~』も知らないのか?魔獣の目玉には、女性の肌を綺麗にする成分と怪我の治りを(これがシミや皺も該当するかは不明)早くする魔成分がたんまり入っていると人気になっているのだよ?女子人気の珍味だよ!これを食さないで何を食するって言うのよ⁉


「大変に美味しゅうございました…」


私は目玉の筋の一部が口の端から飛び出したままの状態ではあるが、フリデミング以下ちびっ子達(国王含む)を見るとニヤリと笑ってみた。


「きゃああ!」


何だその女子みたいな悲鳴はっ!叫び声をあげたケールミング殿下とフリデミングの馬鹿を目玉を咀嚼しながら見ていると、フリデミングの侍従のフーレイがさんが走り込んで来て


「今度は誰と喧嘩ですかっ⁉」


と、何故だか私に聞いてきた。大変遺憾です…私は誰とでも殴り合いの喧嘩をしている訳ではありません。


家に帰り、何故だかお母様が目玉事件のことを聞きつけていて、すごく怒られた。王子殿下を怖がらせるなんてどういうことですか⁉と、問答無用に叱られた。


いやいや?最初に嫌がらせをしてきたのはあっちじゃないかぁ…これはアレか?特権階級の権力の圧力か?私、あいつらから虐げられているのか?


その目玉事件から暫くして、フリデミングから魔法鳥でお手紙が届いた。


『父上が賄賂はマズイと思ったのか、おねだりを聞き入れてくれなくなった、作戦失敗だ。第二弾の作戦を考え中だ、報告を待て。』


「作戦だったんかーーい!いつの間に私も極秘作戦?に参加している体になっているのは、どういうことだーーい!」


その手紙の先を読むと、どうやら実父から自然に見せかけて財力(小遣い)を搾り取ってやろうかと作戦を練ることを兄弟達が全員で画策しているみたいだった。まあ子供のお遊びの範疇みたいだけど?


あの腹黒ちびっ子達に完全に父親は遊ばれていた。…早く気が付いて、子供達に弄ばれているよ?


その極秘作戦の手紙から3日後、また手紙が届いた。


『ライ兄上が別荘に父上を呼び出して…そこからどうしようか?と言い出しているんだが、何か案は無いか?』


「べっ…別荘にぃぃ⁉物凄く犯罪臭い気配がするから却下よっ!空耳馬鹿っ!取り敢えず向こうから動き出すまで様子を見なさい!」


内容を読んで仰天して、手紙の返事を急いで書いて送ると


『了解した、ハラシュリアの作戦を遂行中』


と返事が来た。


あれ…いつの間に私が参謀みたいな命令下してることになってんの?もしかしてこの腹黒作戦の首謀者として勝手に祭り上げられていて、罪が露呈した時に私に全部責任を擦り付けられてしまうっていうことなのか?


その日からまた暫くして、王太后殿下主催の茶会が催された。当然ながら、お母様と私は参加した。そこで私的に中々の事件が起こった。


お母様がご婦人方とのお喋りに夢中になっている間に、1人でぼんやりと庭園の方を見ていたら私より少し年上のお姉様達(10才~12才くらい?)が6人、私を囲んでいた。皆ニコニコと笑顔だが、私は知っている。


こういう胡散臭い微笑みを向ける女は碌なことは言いはしない。


「ハラシュリア=コーヒルラントね」


わおぅ!呼び捨て…私は記憶にある貴族年鑑の照合を頭の中で始めた。黒髪、翡翠色の10~12才くらいの子女。


「あなた殿下方の茶会に頻繁に顔を出しているようね?」


この黒髪のきっつい顔の子女、私をいくつだと思ってるのかな?まだ5才児だよ?普通の5才児はこんな含みのある囲み攻撃受けたら泣いちゃうと思うけど?


まあビビらせて脅かすのが目的かな?


「よいこと?私は未来の国王妃候補なのよ?それを弁えて接しなさいな」


あのね、何度も言うようだけど私まだ5才児なの…以下省略。


まあいいか、5才児として対応させてもらいましょうか。


「お母様ーーこのお姉様が国王妃って本当なの⁉」


「っひ⁉」


私がそう叫ぶと王太后殿下(空耳母)と公爵夫人(実母)とおまけにフリデミングのお姉様達の双子のナナヴェラ殿下とララヴェラ殿下もすっ飛んで来てくれた。


「マグノリア=ノリアント子女が未来の国王妃ですって…本当なの?」


私の言葉を聞いたナナヴェラ王女殿下が声を荒げた。


やっぱりっ!貴族年鑑の人物像でデビュタント前くらいの黒髪で翡翠色の瞳を持つのは、ノリアント伯爵家のマグノリア子女しかいない。


「…ノリアント令嬢、国王陛下はまだ妃候補すら選んでおりませんけど?」


王太后が目を鋭くしてノリアントおねーさまを見ている。


あらまあ、ノリアントおねーさまは顔色を真っ青に変えた。そしてあろうことか私を扇子で指し


「この子が勝手に言っているのですわ!嫌な子っ!」


と私に当て擦ってきた。私はララヴェラ殿下とナナヴェラ殿下の後ろに隠れた。双子は私を庇ってドレスの後ろに隠してくれた。


そして私は負けじとお母様に無邪気を装って聞いてみた。


「あの黒髪のおねーさまに、私とは弁えて接しろ!って言われたけど、おねーさまは弁えなきゃいけない、どこかの国の王族の方なの?」


「…っひぃぃ!」


ノリアント令嬢は悲鳴を上げて真っ青になった。うちのお母様と王太后は更に目を鋭くした。


そう、公爵家令嬢である私が弁えなきゃいけないのは、公爵家以上の家柄の方だけだ。伯爵家は私より下位だ。


それからノリアント伯爵家令嬢は茶会で殆どお見掛けしなくなった。私に対して取り囲んできた他の令嬢方も揃ってお見掛けしていない気がする。


なんとなーーく、話を聞きつけた腹黒殿下達が何かしたんじゃないかと、気にはなっているが確たる証拠が無いので、確かめようがなかった。おかしいな~私ってさ、殿下達の参謀扱いだと思ったんだけど…ここにきて仲間外れですか、そうですか。

裏で暗躍していたのはちびっ子達だった……(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ