心労でハ……そうな11才
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メイドのリーネとアレニカとシュリツピーア王国の近衛騎士のウラスタ卿(渋いおじ様)を伴い、フートロザエンドに一時帰国した私。
公爵家に戻ると、ハ……の父、コーヒルラント公爵が私に飛びついてきた。ぽっちゃりの肉で圧死するじゃないか!気を付けてよっ!
「お父様、のんびりしている時間は御座いませんの。まずはお母様の所に参ります、お父様の困り事は例の商業施設の件ですか?」
「そうなんだよ…困ったよ」
私は歩きながら、お父様にシュリツピーア王国での懸念事項を纏めた資料を渡した。
「後で執務室に参ります。リーネとアレニカ…付いて来て。ウラスタ卿、少しお休み下さいね。バルト君、卿にお茶をお出ししてね」
「畏まりました」
バルト君にそうお願いし、渋く微笑んだウラスタ卿に微笑み返してから、お母様の普段居る私室に向かった。
部屋に向かう途中、メイド長のラビスさんと行き会い
「シュリツピーア王国へ付いて来てくれるメイドの再考をお願いしに来たの」
と伝えると案の定、アレニカに鋭い目を向けたラビスさん。
「やはり…何度も念押しして確認したのに、ソレでしたか」
「はい、ソレだったわ」
「じゃあやっぱりマエリアにお願いしようかしら…」
うん、申し訳ないけどマエリアさんにお願いして欲しい。マエリアさんはご本人曰く、婚約者に裏切られて男性不信のイキオクレだそうだ。でも明るくてとても優しいメイドで、次期メイド長に…と言われている人なんだけど…仕方ないよね。
「とにかく奥様にご報告致しましょうか」
はい、メイド長。
という訳でお母様にご報告した。お母様は困ったような顔をしていた。
「ルベル卿にね…卿にご迷惑をおかけしているわね」
「フリデミング殿下とご相談して正式に謝罪をするつもりで…」
「私っ…ルベル様にご迷惑なんておかけしてませんっ!いつもご挨拶程度しかお声かけしてませんでしたしっそれにルベル様はいつも微笑まれていて、不快なお顔なんてしてなかっ…」
「お黙りなさい!」
急に割って入って自己弁護を始めたアレニカにお母様が一喝した。
迷惑をかけてないのに、いつも声かけね…もはや追い回しの犯罪ね…お母様を同じことを思ったのだろう、険しい顔をしている。
「アレニカ…それはお互いに好意のある者同士、若しくはお仕事で接点のある方なら自然な行為でしょう。相手に失礼の無いように笑みを浮かべるのも社交辞令です。あなたの一方的な行為は、追い回しと一緒です」
お母様の言葉にアレニカは益々金切り声を上げた。
「ルベル様は私がご挨拶すると、とても嬉しそうでした!だから私っきっと好かれて…」
うわーーーっ!何たる思い込み!お母様もメイド長も驚愕の表情をしてアレニカを見ている。
仮にアレニカと本当にルベル様が想い合っている恋人同士というなら、今頃ルベル様の前には自称恋人が山のようにいるだろう。
このモテっぷりのことを以前ルベル卿に聞いたことがある。
「モテるとは良い事ですか?悪いこともありますか?」
ルベル卿は大層困った顔をして
「良いことは顔に免じて、許して貰えたり融通を聞いてもらえたりする…でしょうか。悪いことは同僚から妬まれ、気の無い女性に始終追いかけられ懸想されて、手洗い所くらいしか気の休まる所が無い…と言ったところでしょうか?」
と隠すことなく話してくれた。私は実直なルベル卿に好感を持った。
「寝所は休めないの?」
私が突っ込んで聞くと、ルベル卿は一瞬目を丸くしたがまた困った顔をした。
「寝所は…寝込みを襲われることも多々ありますので、気の休めない所…ですね」
多々あるんだ…それ辛いね。
「それじゃ眠れないじゃない…」
私が呟くと、漆黒の獣は色気のある微笑みで私を見た。
「ご存じです?静かな山で夜空を見ながら眠るとそれは気持ちいいのですよ」
ひえぇ…なるほど~しかし顔に似合わず…と言うと私も色眼鏡で見ていることになるけど…ルベル卿は豪胆で山で野営?も気にならないようだ。
私はピンときた。
「もしかすると…ルベル卿は女性とお付き合いしたら『思っていたのと違う』と言われてフラれたりしません?」
ルベル卿は破顔した。うっわ!笑うと獣がワンコになった!
「凄いですね~ハラシュリア様は…そうです、その通り。どうも私は夢見がちな女性に好かれるようでして、中々女性とのお付き合いは長続きしませんね」
「女性との逢引に山に誘ってるんでしょ?」
「バレましたか?」
そう…あの漆黒の獣の小説のグーテレオンド様は薔薇の花を抱えて甘く色っぽく寝所に侍りそうだけど、このルベル卿は川魚をそのままガブリと食べて、お洒落なお店に行くよりは山に入り浸り…そういう感じなのだ。
「実は私が休日の度に山に休息を取りに行っているので、フリデミング殿下が興味を持たれてご一緒に付いて来られたこともあるんですよ?」
フリデミングの奴、何やってんのよ?王子殿下のくせに護衛と野営…
「まあ…フリデミングのことだから、自分でゴソゴソ動き回って虫に刺されて怒ったりしてたんじゃない?」
ルベル卿は…大爆笑をした。こんな笑い方をするんだ…
「凄いですね…見てらっしゃったみたいですね。その通りです、殿下は藪で刺されて文句は言われましたが、釣りも狩りもそれはそれは楽しまれていましたし、夜は寝袋の中で爆睡されてました。面白い方ですね」
「ええ…面白くて思い込みやすい馬鹿だから行動が読み辛いけど、王族には無い柔軟性があるわ」
ルベル卿はまた色気のある微笑みで私を見ていた。
「ハラシュリア様もフリデミング殿下も…共に良い伴侶に巡り逢えましたね…」
「まだ伴侶じゃないわよぉ…」
ルベル卿は色気は抑え気味の爽やかな笑顔で
「羨ましいですね、私にもこれほどに想い合える伴侶が現れるといいのですが…」
と言った。
「何を浮ついたことを言うのですか!」
というメイド長の叱責する声に、考え込んでいた意識を浮上させてアレニカの方を見た。
「兎に角、あなたがルベル卿に好かれているなら答えはすぐに出るでしょう?あなたがハラシュリアの側付きを外されてこちらに帰ったと知ったら、ルベル卿からご連絡があるんじゃないかしら?ハラシュリアなら間に入って連絡してあげるわよねぇ?」
お母様が若干嫌味っぽい言葉使いでそう言いながら私に聞いてきた。
「ええ、構わないわ。ルベル卿が仰るならね」
その時にアレニカがちょっと嫌な目付きで私を見ているな…と思ったけれどその時はそれでお終いになった。
「アレニカは再教育を施します」
メイド長は鼻息荒くそう言っていたけど…仕事を放り投げても自分の思い込みで動く性分の人が、そう簡単に変れるものなのだろうか。
気を取り直して私はリーネと一緒にマエリアさんにお願いをしに行った。私から直接シュリツピーア王国への随行をお願いしようと思ったからだ。
「マエリア、ちょっとお時間貰える?」
「…っはい」
マエリアさんは次期メイド長に推されるくらい有能な人だからこそ、お母様もメイド長もコーヒルラント公爵家から出したくないはずだけど、マエリアさん自身はどうなんだろう。
マエリアさんとリーネと一緒に私の部屋に入って対面のソファに座って貰った。
私がアレニカとルベル卿の一件を伝えて、出来ればマエリアさんに来て欲しい…と伝えるとマエリアさんは大きく溜め息をついた。
「あの方達…フリデミング殿下がこちらお越しの際にご一緒のルベル卿を見て騒いでいるのも知っていたけど…他国にまで行ってコーヒルラント公爵家の恥を晒して帰って来るなんて…」
マエリアさんの仰る通り!
マエリアさんは薄茶色の瞳を私に向けた。睫毛が長くて実は色っぽいマエリアさん、本当に不思議…どうしてこんな明るくて優しくてエロ可愛いマエリアさんが婚約者に裏切られるようなことになるんだろう?
「あの…私事ですが、私も攫って騎士様を嗜んでいる…サラジェなんです」
おおっ!いきなりマエリアさんの告白ぅ!この唇プルン色気のあるマエリアさんがサラジェなのぉ!?意外ぃ~
マエリアさんは、はあぁ…また溜め息をついて首を傾げている。エロ可愛い…
「小説の中の騎士様とルベル卿は別の方だって認識出来ないのでしょうか…これだからにわかサラジェは…」
にわかサラジェ!!
ぎゃーーーん……心臓が抉られるようです…にわかサラジェの私には真正サラジェらしいマエリアさんのこれだからにわかは…の言葉が突き刺さります!
「あら…ハラシュリア様、胸を押さえてどうされましたか?ああ、そろそろお胸が成長される時期ですものね。張って痛いこともあるでしょう?」
いや全然…って思いながらマエリアさんの豊かなお胸を見てしまったよ!爆乳乳母のタフネさんには負けるけど、立派なブツをお持ちのようで…フフフ。
つい自分の秘めやかなお胸を見下ろしてしまった。こ、これからバイーーーンとなるんだもん!(予定)
私が自分の胸をサワサワ…と触っている間に、マエリアさんは気持ちを固めた様だった。ポン…と膝を一つ叩くと
「はい、決めましたわ。私もシュリツピーア王国に参りましょう」
ビシーッと一言放ってくれた。隣でリーネが「マエリアさんで良かったですぅ」と半泣きだ。
ところが
その日の夕方、お母様がシュリツピーア王国の側付きはマエリアさんにお願いすることにした…と残りのメイドに告げたら…何だか物凄く言い募ってきたらしい…え~と、夜に使用人の控室でマエリアさんに個人攻撃して…ね。
何故私が知っているかと言えば、近衛のウラスタ卿がその現場を見たらしくて、夜、部屋に来て報告してくれたって訳。
「女同士って何であんなに隠れて陰湿なことするんだろうねぇ~」
「実は男性同士も結構陰湿なところは御座いますよ?」
と、ウラスタ卿は渋いお顔で苦笑いをしていた。
「でもマエリアさんは大丈夫かしら…」
「私がさり気なく、外からマエリア嬢をお呼びしましたので、見られたと思ったメイド達は急いで逃げておられました。マエリア嬢は表面上は平気そうでした、勝気な方のようですね」
そう言って一礼してウラスタ卿は退室された。
そうか…兎に角、明日マエリアさんに文句を言っていたメイド達と面談させてもらえるように、お母様にお願いしてみよう。それに…お父様の困り事も明日、登城して腹黒お兄様達に説明しないといけないし…あ!その資料を作らないと…私、徹夜か?これ徹夜しないといけないのか?
「あああ…本当に私11才なのぉ…前世では11才なんて、もうちょっーーーーとのんびりしていたと思うんだけど、なんでこんなに忙しいのぉ」
叫んところで、仕事は減らない。腹黒は待ってくれない…
リーネに入れてもらった温かいココアを飲んでから渋々、書類作成に取り掛かった。
空耳の存在が薄くなっています




