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どこまでも一緒

宜しくお願い致します。

「ふーん…」


サイフェリング陛下はちょっぴり怖い顔の暗部のお兄さんからの報告書を見て、腹黒く笑っていた。


「全く意外性もなく予定通りの動きをしているな。ここ数年で施行された法案の見直しを宣言したか…ほぉ~それと軍備強化の方針を打ち出したか…何だか不穏だなぁ~どこかの国と戦争でも始めたいのかなぁ?…ああそうだ、私達の捜索の方はどうなっているんだ?」


サイフェリング陛下の言葉に、暗部のお兄さんは素早く返した。


「はい、ミルトマイデラ公からは漏れがないように捜索しろ、との命は受けていますが宰相閣下からは、捜索は形だけでやっているフリをするように指示が出ています」


「うん結構、結構」


私とフリデミングはお菓子を食べながら聞き耳をたてている。


ミルトマイデラ公は順調に腹黒息子達の手の中で踊っているようだ。心配だった王太后様は、部屋に軽い軟禁状態で留め置きされてはいるが、体調等は問題はないようだった。


ただ問題は……


「何故、うちのお母様が一緒に軟禁されてるのよ?」


「お母様も思い立ったらすぐに行動されるから…」


私の対面に座ったジュリアーナお姉様は眉を下げている。


「もうっお母様ったら、危なっかしいんだから!」


室内にいる腹黒兄妹達が一斉に叫んだ私を見ている…な、何よ?


「ハラシュリアに言われたくないだろう〜?」


皆が半笑いを私に向けてくる。いやいや?私これでも老成してるし落ち着いてますが?半笑いをされるはずはないと思うのだけど?


暫く、暗部のお兄さん達が代わる代わるサイフェリング陛下の元を訪れていたが、その報告らしきものが終わった後、陛下が


「フリデミング…ちょっと話がある」


そう言ってフリデミングを連れて行った。何だろうか…?


フリデミングと陛下はすぐに戻って来た…が、フリデミングの顔色が悪い。どうしたの?ちょっとお待ちなさいな?もしかして腹黒にあーでもないこーでもないと、クチでは言えないことをされちゃったの?まさかまさか!?


私はフリデミングの側に駆け寄り耳元に囁いた。


「フリデミング……あなた華を散らせちゃったの?」


「変な想像するなよ!?違うよっ!」


「心外だな…ハラシュリアは2階から逆さまに吊るされたいらしいな?」


囁き声を何故聞き取れたのか…腹黒陛下が鋭い目で私を見ている!胴体と足が切り離されてしまう!?


戦慄いている私の横でまだ顔色の悪いフリデミングがサイフェリング陛下に聞いていた。


「ハラシュリア…に話していいですか?」


「構わんよ、ハラシュリアの気持ちを尊重するようにね」


なんだ?フリデミングとサイフェリング陛下のやり取りに首を捻りながらも、フリデミングに誘われて庭に出た。


護衛に少し離れてもらって2人きりになると、フリデミングはやっと口を開いた。


「シュリツピーア伯父上から…シュリツピーアに来て養子に入って王位を継いでくれないか…て言われているらしい」


「だ…誰が?」


「俺が…」


フリデミングがシュリツピーアの…王位を継ぐ?嘘…?でも待って?そうだよ…もしかしたらフリデミングが潜入調査に行くように言われたのも…もしかしてその為?


私が茫然としているのを見てフリデミングは手を握ってきた。


「ハラシュリアよく聞いて。俺はハラシュリアの気持ちを尊重する。ハラシュリアが嫌だと思うなら俺は行かない」


「なっ!?」


フリデミングは更に言葉を続けた。


「だって俺はハラシュリアの居る世界でしか生きていけないから、ハラシュリアがシュリツピーアに来ないとなったら俺は従う」


お……重ーーーーい!なんだそれは!?いやいやちょい待てよ?


「ちょっと待ってよ?シュリツピーアの伯父様ご夫妻は御子がいらっしゃらないわよね?あなたを養子に迎えたいのはかなり切実なことじゃないの!それを吞気に私に従う…とか言ってる場合じゃないでしょう?これはあなたの個人的な拗らせ恋愛を最優先にしてよい事じゃないわよ。王族の血脈に関する重要な案件じゃないの」


「でも俺はっ…」


私はフリデミングの顔の前に掌を向けた。


「ちょっと待って、根本的なことを聞いていい?フリデミングはどうしたいの?シュリツピーアなんか知らないと決めて、フートロザエンドに帰ってそのまま生活出来るの?」


フリデミングはグゥ…と息を吸い込んだ。私はフリデミングの手を取った。親指の付け根に剣タコ出来てるなぁ…


「まだシュリツピーアの伯父様とお話していないのでしょう?それから悩んでも遅くないでしょう?フーレイさんも言ってたでしょう?私達は()はまだ若いのよ?時間はあるわ。早く決断してしまわないでもっとゆっくり考えましょう」


フリデミングはちょっと涙ぐみながら俯いている。


「でも俺はハラシュリアがいなきゃ駄目だ…」


やっぱり重ーーーい!いや知ってたけどねちっこいなぁ相変わらず…まあ私の答えなんて決まってるけど?


「フリデミングこれだけは言っておくわね。私もフリデミングの行くところに付いて行くから。それがどこでもよ!いいわね?」


フリデミングはポロッと涙を流した。手巾でフリデミングの目元を拭っていると、離れた所に立っている侍従のフーレイさんと目が合った。


…っ!まさか私がフリデミングを泣かせていると思ってる?


ところが、私がフーレイさんに気を取られている間に、グイッと体が引っ張られ…フリデミングに口付けをされたーー!馬鹿ーーー!皆見てるしぃ!?


唇はすぐに離されて、その後にギュウギュウと抱き付いてくるフリデミング…ああ、遠くから見守ってくれているのであろう、フーレイさんと爆乳乳母のタフネさんの生温かい眼差しが恥ずかしい。


そうして、その日の午後…時間を空けて頂いてシュリツピーア国王陛下と国王妃との面談に赴いたのだ。


シュリツピーア国王陛下は会うなり、先にこう話された。


「先ずは言っておきたいのだが、サイフェリング陛下にこの打診した時に彼から『あくまでフリデミングとハラシュリアが了承すれば』という前提で進めて欲しいと言われたんだ。優しいお兄様だね、彼は。王命で末弟なんて有無を言わさず他国へ出してしまえるのに…君達の希望を尊重するそうだ」


フリデミングと私はシュリツピーア国王陛下のお顔を見た。


「だからね、フリデミング返答は急がないよ?時間をかけてゆっくり考えて決めて欲しい。希望としては聡明な君に私の後を継いで欲しい。だけど家族の元から引き離してしまって苦しめるつもりは無い。それはよく考えて欲し…」


「私は…」


フリデミングがシュリツピーア伯父様国王陛下の言葉を遮るように声を上げた。


「私は…ハラシュリアが一緒ならどんな場所でも頑張れます」


フリデミングがそう言うと国王陛下と国王妃はパッと笑顔になった。


「そう…そうか、うん。ハラシュリア」


「っはい!」


国王陛下に呼びかけられて慌てて返事をした。


「フリデミングもそうだが、他国に渡りいきなりシュリツピーアの第一王子妃の責務を負わせることになる。苦労をかけることも多々あるだろうが、私達も全力で助力をする。フリデミングと共にシュリツピーア王国を支えてくれるだろうか?」


ああ…!そうか、国王陛下夫妻は最初から私とフリデミングを2人一緒に迎え入れてくれるおつもりだったんだ。


ポロッと涙が零れた。


何となくフリデミングがシュリツピーア王国に養子に行ったら私とはそれまでなのかな…と思ってた。フリデミングが頑張って訴えても王命で引き離されてしまうんじゃないかと思ってた。


「フリデミング…とずっと一緒に居れるんですね…」


また国王陛下夫妻の顔が輝いた。


「何それぇ!?ハラシュリア可愛いっ!」


「やかましいわっ!今感動しているんだから妙な合いの手入れないでよっ!」


可愛い可愛いを連発して顔を真っ赤にしているフリデミングに威嚇していると、いつの間にか国王陛下夫妻がすすり泣いておられた…あらやだ、私また泣かせちゃったの?


「私達には…もう子供は難しいし、こんな幸せな子供達を迎え入れることが出来るなんて…」


「私、孫は女の子がいいわ!」


国王妃気が早い…もう孫かい!


「フリデミングもハラシュリアもまだ小さいし、これから成長するまでは実の子供のようにあれこれ世話出来るよ?」


「まあぁ!陛下そうでしたね!ハラシュリア、そうと決まったら一緒にお買い物に参りましょう!」


「いやあの、お待ちになって下さい。一応自国の国王陛下と第二王子殿下と実姉が行方不明というお芝居の最中ですので…浮かれて遊んでいるのは外聞が…」


私が恐る恐る指摘すると国王妃は、肩を落とした。


「あらやだぁ、本当だわ。もうぅ…ベネディクル様も悪足掻きは諦めたら宜しいのに…」


と、年齢不詳の可愛らしいお顔の割に毒を含んだ国王妃の言霊が効いたのか…その日の夜、暗部のお兄様が火急の報告を入れてくれた。


ミルトマイデラ公がとうとう、サイフェリング陛下とジュリアーナお姉様とライトミング殿下の捜索を打ち切るように命令を下した…と。


腹黒国王陛下がまた夜中に臨時子供会議を招集した。陛下は最初から忍び笑いをずっとしていた。


「痺れを切らすのが予定より早かったな」


「せめて10日くらいは捜索しないとマズイんじゃないかな?」


忍び笑い中のサイフェリング陛下にライトミング殿下が問い掛けると、ケールミング殿下が暗部からの報告書を読みながら答えた。


「勿論、宰相や内務省の役人…フートロザエンドの前国王陛下夫妻や公爵閣下方から猛反対を受けている。おまけに俺達の大叔父のジューク=ヴュリアンデ元帥閣下がミルトマイデラ公が探すのを放棄するなら、軍が責任をもって捜索を受け持とう!必ず捜してみせる!とか宣言しちゃったそうだ」


「因みに、大叔父はこの芝居は知っているの?」


フリデミングがライトミング殿下に聞くとライトミング殿下が頷いた。


「だから困ってるんだよ、あのじーさん参加したくてうずうずしてたんだよ、きっと。だから大袈裟に煽ってるんだよ…悪目立ち過ぎ」


げ…元帥閣下、確か前国王陛下の弟だよね?そんな御大にボロカス文句を言うライトミング殿下。まあ大叔父様だし、身内だからいいのか?


「兎に角、あまり雲隠れされると調子に乗ったミルトマイデラ公が掻き回して来るので困る…と宰相が泣きついてきてはいるね」


「最終判断まで許可してないんだろう?」


ケールミング殿下は書類を確認しながらチラッとサイフェリング陛下を見た。


「ミルトマイデラ公が議会を掻き回した後、それを内々に打ち消して処理しているのはそろそろ限界だ…と宰相補佐や事務官が訴えてはきている」


「本人は法案や新たな施策をだして、国政を動かしているつもりなんだろうな…実際法案が変更されて施行されるまで時間がかかる。あの人が学舎の教育棟や寮棟の建設予定地に視察には行かないからバレるはずはないと思うが…学舎と寮の建設工事の方は抜かりなく進めてくれ」


「御意」


ケールミング殿下は短く返事をすると暗部のお兄さんから受け取った書類にサインを書き入れて次々に渡している。


今ミルトマイデラ公は悦に入って王様気分を味わっているのかな…


「よし…そろそろ玉座に座る父上を拝みに行くか!」


サイフェリング陛下がそう言ったので、私は思わず拳を握り締めていた。フリデミングを見ると両手で拳を作っていた。


するとフリデミングの横に座ったライトミング殿下がニヤニヤ笑いながら私の顔を覗き込んでいた。何でございましょうか?


「似たもの夫婦ぅ~」


まだ夫婦じゃないわっ!



いつも誤字ご報告ありがとうございます。助かっております。

そして感想もありがとうございます^^とても励みになります~

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