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オバチャンじゃねえ!

誤字ご報告ありがとうございます

台風が近づいていて誤字感知レーダーが乱れているようです(また言い訳)

[追記]一部人物名を変更しております。ご指摘ありがとうございます

「おいっあいつ早速、玉座に座ってやがるんだとっ!」


「こらっ口が悪いぞ!」


暗部から送られてきた魔法鳥でのガガリアおじさんこと、ミルトマイデラ公の報告を見て叫んだライトミング殿下を、サイフェリング陛下が窘めた。


「やっぱり馬鹿は一度は座るよな」


「ただの椅子だよね~」


ケールミング殿下とナナヴェラ殿下がそう言って笑っているけど、私は全然笑えない。


あのガガリア親父~!私の横でフリデミングも同じように拳を握っている。


「きっと兄上の作った法案を片っ端から見直しとか改善とか言い出して、潰していくに決まってるんだ!」


「そーだ、そーだ!」


「静かにしろよ、そう上手くはいかないって〜」


ライトミング殿下が、窓際で拳を固めていた私とフリデミングを手招きして、ソファに座らせた。


「一度通って施行された法案だし、年代別学舎もすでに学舎棟と寮の予定地に建設を開始している。全国規模で実施中の幼児預かり所も、今更止めましょうくらいでは白紙撤回は無理。臣下から猛反発を食らう。」


「でも反発なんて言い出したら、あの人のことだから…」


「強硬な手段で抑え込みにかかるか?フリデミングよく考えなさい。簒奪なんて簡単には出来ないんだよ?沢山の後ろ盾と明確な簒奪理由、それと旨味がないと誰も従わない。そりゃ下っ端の下っ端は従うよ?命令だしね。でもある程度の立場の人間は損得勘定でも動く。私の知る限りサイフェリング陛下とベネディクルと天秤にかけてベネディクルに傾く後ろ盾はほぼいないと見ている」


流石にフリデミングも威厳に満ち満ちた伯父様の言葉に黙って頷いている。


このシュリツピーア伯父様国王陛下の口ぶりから察するに、前からガガリアおじさんの監視をしていたような感じだ。


そうか…うちのフートロザエンド王国にお婿に出された、いや…強制的に出されたベネディクル第四王子殿下は国を離れても監視下に置かれていたのかもしれない。


穿った見方をすれば、フートロザエンド王国とシュリツピーア王国間で、婚姻に対して密約とか賠償金、この場合は持参金を渡してベネディクルを押し付けたかもしれないのか…


「ベネディクルは問題児なのだが、引き取ってはもらえないだろうか?金は出します」


とか何とか言って婚姻を打診していたのかもしれない。王太后様は知らないよね?知っていたら…ううん。王族だもの、もしかしたら全て了承されて受け入れたかもしれない。


だけど、産まれて来てくれた子供達は非常に優秀だった。これはガガリアおじさんには大誤算で、フートロザエンド王国、王太后様には嬉しい大誤算だったんじゃないかな?


押し付けられた王子殿下は気持ち悪い男だけど、子供達は皆美形で賢くて助かった!とか…?まあ、あくまで私ならそう思うかな~ってことだけど。


伯父様達と子供達とで色々と密談をしている所へ声がかけられた。


「失礼致します、晩餐会のご準備が整いました」


「分かった~って、すっかり忘れていたけど、サイフェリング陛下とジュリアーナちゃんとライトミング殿下はすでに行方不明中だから、晩餐会には出られないね」


何気なーくそう仰ったシュリツピーア伯父様国王のお言葉にライトミング殿下が顔色を変えて立ち上がった。もしかして今頃気が付いたの?


「やべぇぇぇ!?俺っ暫く隠れてコソコソと生活しなきゃならんのかぁ!?」


「今頃何を言ってるんだ…行方不明且つ、3日も経てば父上が捜索を打ち切って死亡だとでも言い出すかもしれんのに…外には出るなよ?」


サイフェリング陛下の淡々とした説明にライトミング殿下は、うおぉぉぉと言って頭を抱えている。


「体動かせないのは、辛いぃ…ば、晩餐会の料理俺にもくれえぇぇぇ」


何故、私の肩を揺さぶって私に訴えるんだよ、ライトミング。野菜スープと塩パンでも食べてなさいよ。


「兄上こっそり持って来ようか?」


フリデミングの可愛い提案をシュリツピーア伯父様が笑顔で制した。


「心配しなくても同じ料理をここに差し入れるから、三人での夕食になるが楽しんで欲しい」


ライトミング殿下は歓声を上げている。


「私もこの子達とこちらで頂いてもいいかしら?」


おおっ?前国王妃がそう言ってサイフェリング陛下の方を見ている。サイフェリング陛下はまた破顔している。今日は珍しいね…


「勿論、ご一緒に召し上がって下さいお婆様」


と言うと、お爺様もここで夕食を取る…というので、現国王夫妻は晩餐会へ、前国王陛下夫妻は貴賓室でサイフェリング陛下達とお食事…となった。


晩餐会に出席する面子で貴賓室を出て広間に向かっていると、ナナヴェラ殿下がフリデミングに聞いてきた。


「ねえ、親戚の方々もいらっしゃるのよね?フリィは会ったの?」


「!」


フリデミングと私は揃って固まった…。しまったぁ!あまりに色々あり過ぎてすっかり忘れていた。本来の目的である『ナナヴェラ殿下の強制婚姻の相手を探れ!』という任務があったのだった。


しかも先程聞き及んだ情報だと、21才の素行の悪いチャラ男だというルーツとかいう金髪ヤローが相手だと言っていたよね?今ここでナナお姉様に教えるの?どうするの?


横目でチラチラとフリデミングを見て確認をすると、フリデミングも大変に狼狽しているようだ。


「まあいいか~同世代の女の子とかいるといいなぁ」


とか何とか言いながらナナヴェラ殿下は軽い足取りで駆け出してしまった。


「ひえええぇどうしよう…ナナヴェラ殿下が…行ってしまった」


「どうしよう、こういう時って伝えたほうがいいのかな」


そして小走りにナナヴェラ殿下の後を追いかけた私達が見たのは…大広間の前で悶絶する双子の姿だった。


ど、どうしたの?毒にでもあたったの?


理由はケールミング殿下が教えてくれた。


「俺達と年の近そうな赤髪の男がいるだろう?あの彼が、幼馴染王子の溺愛…え~と何だっけ?あ、そうそう幼馴染王子の溺愛~永久に愛して~の登場人物の隣国の王子殿下に似ているんだって」


ケールミング殿下が肩から下げた鞄から、例の物議を醸しだした内容の薄い本を取り出したので、私は勢いよくひったくった。


何故、内容の薄い本が鞄から出てくるんだぁ!?


「こっこれは子供は読んじゃ駄目です!」


「……」


ケールミング殿下は一瞬真顔になったが、にっこりと微笑んで


「うん、だから子供は読んじゃ駄目だよね?返して?」


と、私に向かって手を差し出した。


し…しまったぁ!今この状態ではケールミング殿下と私ではどう見てもケールミング殿下の方が年上じゃないかぁ!取り上げるには無理がある。ぐぬぬぬっ…


「いいですかっ!子供は絶対に読んではいけませんからねっ?」


ケールミング殿下は呆れたような顔をして内容の薄い本を受け取った。


「ハラシュリアってさ…時々オバチャンみたいになるよね…」


オバチャン言うな!


そして薄い本争奪戦を繰り広げていて、油断していた時に事態が急変していた。


ブツブツと「サンミリアム殿下サンミリアム殿下…」と呟いている双子の所に、金髪チャラ男のルーツ公爵子息がニヤニヤしながら近づいて行ってしまったのだ!


ヤバイ!何がヤバイかは分からないが、兎に角ヤバイ!


「なあナナヴェラ殿下ってどっちなの?まあどっちでもいいか。同じ顔だしどっちが嫁に来ても違いはないか」


「……」


ララナナ殿下と一緒に私もフリデミングも…そしてケールミング殿下も固まっていた。しかしケールミング殿下はすぐに立ち直った。


瞬時に双子の前に立つと金髪チャラ男を鋭く睨みつけた。


「お前は誰だ、私達がフートロザエンド王国の王族だと知っていての発言か?」


金髪チャラ男は怯んでいる。ケールミング殿下の方が明らかに年下だけど、腹黒…否、風格がまるで違う。そしてケールミング殿下の横に静かにシュリツピーア伯父様がいらっしゃった。更に風格が違う!


「ルーツ=スライバ…ララヴェラとナナヴェラが他国の王女だと知っての物言いかな?躾がなっていないようだな。やはりお前にはナナヴェラの降嫁は無理だな…うん?リアンデロ、確か16才だったな。お前はどうだい?」


んん?シュリツピーア伯父様の視線の先を見ると……あの赤髪の少年が!?ちょっと待て…!ナナヴェラ殿下!?…を慌ててみたら顔に体中の血液が凝縮されてるんじゃないかというくらいに、顔を真っ赤にしていた。ナナお姉様は憤死寸前じゃないか?


リアンデロと呼ばれた赤髪の少年は、少し戸惑い気味ながらナナヴェラ殿下の前に立つと静かに腰を落とした。


「リアンデロ=ミノアに御座います」


キリリとした少しきつめの目元の中々の美形なリアンデロ様の前で、既に体力ゼロっぽいナナヴェラ殿下は何とか淑女の礼をしていた。


「リアンデロ、ナナヴェラちゃんと少し話をしてきなさい」


リアンデロは御意…と小さく呟くとナナヴェラ殿下をエスコートしながら、晩餐会の会場内に入って行った。このまま放置で大丈夫なのかな…私の横でララヴェラ殿下が「サンミリアム殿下サンミリアム殿下…」と呪文のようなものを呟いてるのも怖いしさ。


晩餐会のお料理は美味しかった。唯一ウザいと思ったのは金髪チャラ男のルーツとルーツの父親の公爵で本当にシュリツピーア伯父様国王の従兄弟なのか?と思うほど横にふくよかな煩いおじさんだった。


脂ぎった親父は滅べ!


さて…一応晩餐会ではあるが先ほどから、ちょっぴり人相の悪いお兄様方がシュリツピーア伯父様国王やケールミング殿下に耳打ちしたりして少しせわしない。


これ、アレだな?現状を密偵の人が報告に来ているんだな。今、ガガリアみたいなおじさんはどういう状態なんだろうか。


クソ生意気な子供達がいないから、飯や酒が美味いねぇ~とか仲間のおっさん(居るかどうかは不明)と祝杯をあげているのかも…


ああムカつく。飛び蹴りしてやりたい…


「何かさ…」


隣で肉料理を黙々と食べていたフリデミングが声を上げたので、フリデミングの方を見るとフリデミングは結構、不機嫌な顔をしていた。


「今頃あの人、祝杯でもあげてるんじゃないかと思ってムカつくよ」


私は思わず吹き出した。私と同じ事を考えていたらしいフリデミングの頬をツンツンと突いてあげた。


「同じ事考えてた!」


「そう?」


「あのガガ…ミルトマイデラ公は喜々として玉座に座ってそうじゃない~?」


フリデミングはフンッと鼻を鳴らした。


「なあ、あいつが嫌味たらしく玉座に座ってたらハラシュリアならどうする?」


私ぃ?そうだな~


「フリデミングは?せーので言おうか?せーの…」


「ぶん殴る!」


「飛び蹴りだ!」


フリデミングと一瞬目を丸くしてから見詰め合った後、2人して大笑いした。


お母様達の予感的中です。またお父様の心配事が増えてしまう。守れ!お父様の◯◯!

ふざけてスミマセン

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