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座っちゃお!

文章を加筆修正しています。内容に変更はありません。


「アイタタ…笑い過ぎて足攣っちゃった…」


何やってんのこの伯父さん。ジッとシュリツピーアの国王陛下を見詰めていると、やっと笑い終えた国王陛下は笑顔で私を見た。


「サイフェリング陛下の言う通りだね!とても弁の立つ可愛い令嬢だって、フリデミングの婚約者なのだろう?」


「は…はい」


何故か赤面したフリデミングを見て、益々笑みを深くする伯父様と伯母様のご夫婦。


「可愛いなぁ!やっぱりさ、兄妹皆で遊びに来て欲しいよ~」


おおっ!6人兄妹見てみたいですか?


「シュリツピーア国王陛下とフリデミング殿下のお兄様方はとても気が合うと思います」


私は正直な気持ちを素直に伝えた。フリデミングは口を尖らしている。


「あらまあ、不機嫌な顔が陛下に似ていらっしゃる…ウフフ」


ですよね~?国王妃もそう思われますぅ?


「ああそうだった、これも伝えておかないとね。ナナヴェラちゃんの婚姻相手に打診されているのは従兄弟の子供のルーツ=スライバ公爵子息、21才だと思うよ」


「ナナヴェラ姉上の相手にしては年上過ぎない?」


フリデミングが思わず呟いた。ルーツ様というと金髪の優しげな顔の方か…


伯父様国王は困ったような表情をしている。


「はっきり言うとルーツの素行は良くない。この婚姻は私の従兄弟の公爵が推しているとの報告を受けている。ベネディクルが支持しているかは現在調査中だ」


そう仰った伯父様国王の言葉を聞いて、フリデミングは溜め息をつきながらソファの背に凭れかかった。そのだらしない態度にフリデミングの肩を揺すった。


「お行儀悪いでしょう?」


「ちょっと考え中」


んん?フリデミングは眉間に皺を寄せて一点を凝視している。


「あらまあ、考え事をしている陛下と同じ顔をしているわね~」


と国王妃が嬉しそうに言うと、伯父様国王が「私あんな怖い顔しているのか?」と聞いている。


「う~ん、シュリツピーアでも自分が王位に就きたくて画策、フートロザエンドでは王配だけど、王と同等の権限を手に入れそうになったのに息子の兄上に負けた…やっぱり王位簒奪に執念を燃やすよね~派手に動いてくれたら尻尾も掴みやすいのになぁ」


11才のフリデミングは恐ろしいことをブツブツ言っているが、目の前の伯父様はそんなフリデミングを興味津々の眼差しで見ている。


こらっ年寄り臭い言葉を言わない!ボロを出さないように慎ましやかにしてなさいよ!


フリデミングを小突こうとした時、フリデミングが私を見た。


「こういう時はどうしたらいいと思う?」


何故私に聞くのよ?でも聞かれるまでも無いわ、答えは簡単よ。


「尻尾を出しやすいように誘導してあげたらいいのよ」


私は昔、ライトミング殿下がポロッと仰った言葉を思い出していた。


「ライトミング殿下が昔に仰っていたじゃない?一度国王陛下をさせてみたらいいのよ。『頂点に立てる』ように仕向けてみたら?それに乗っかって来たら、それ見たことかと取り押さえてほくそ笑んであげればいいし、乗ってこなかったら…それに越したことはないでしょう?」


フリデミングと伯父様国王はポカンとした同じ顔を私に向けている。


「でもどうするんだよ…」


フリデミングに問われて、羽虫並みの気持ち悪いミルトマイデラ公の目を思い出す。私が王位に立ちたいと切望するなら…まずは


「私だったら手始めに皆が居ない時にこっそり玉座に座ってみたいかな~」


フリデミングが何か言う前にまた伯父様国王が大爆笑した。国王妃も笑っている。


「もうぅ何故笑われるんですぅ!?だって無責任な立場の人なら、玉座座っちゃお~で簡単に座りますよ。本当の意味で玉座をご存じの方なら怖くて座れないと思います」


フリデミングと伯父様は笑いを引っ込めて真顔になった。この人達なら今の比喩で分かってくれたと思う。


「フーレイ!魔紙と魔ペンを持ってこい!」


フリデミングは廊下に向かって怒鳴った。おっ気が付いた?でも手紙?また呪いの手紙第二弾でも書くの?


「ちょっとこんな時に手紙?まさかガガリアみたいなおじさんに呪い殺すぞ~~ってまた書き殴るの?」


フリデミングは頬を膨らませて私を睨んだ。


「そんなこと書かないよ!玉座に座りやすくなってもらうんだよ!」


うんうん、さすがフリデミングは分かってるね。そしてシュリツピーア国王陛下も分かっている顔をなさって大きく頷いている。


「ハラシュリアちゃんは賢いね~うちに養女に来るかい?」


おおっと伯父様、それは王家に養女に来いや!てことですよね?


「そんな話を私の父が聞いたらハゲ……しく動揺してしまいますわ。ご冗談を…」


「陛下、フリデミング殿下のお嫁さんなら実質うちの子になりますよ?」


「おや本当だね、アハハ」


…ん?国王妃が何か不穏なことを言いませんでしたか?


フリデミングは一心不乱に手紙を書き殴っているので今の会話を聞いてないようだ。


う~む。


手紙を書き終わった後、魔法鳥で手紙を送ったフリデミングは伯父様国王に子供らしいにっこり笑顔を見せた。


「手紙の返事が来るまでに、お爺様とお婆様にお会いしてもいいですか?」


隠居されているフリデミングの祖父と祖母は王宮のすぐ横の離宮と呼ばれる宮にお住まいになられているそうだ。


私とフリデミングは国王陛下と国王妃に挟まれて、腕まで組まれた状態で徒歩移動をして離宮の前に着いた。


先触れが伝えていたのだろう。宮の入口に数人の人影が見えた。


「お爺様!お婆様!」


フリデミングが駆け出した時、手を繋がれていたので私も自動的に走らざるをえなかった。走って近付いて行った時に、何故フリデミングが駆け出したのか分かった。


白髪交じりのご夫婦2人が満面の笑みで手を広げてフリデミングを待っていたからだ。


フリデミングはその2人の胸に飛び込んだ。


「初めまして!フリデミング=フートロザエンドです!」


「ああっああ……子供の時のマクリアルにそっくりよ…」


「目の色がリクツェルだね…もっと顔をよく見せて」


祖父母の目から涙が零れている。


落馬事故で亡くなられた第一王子殿下のマクリアル殿下とご病気で亡くなられた第三王子殿下のリクツェル殿下を思い出しておられるのか…ああもらい泣きして泣けてくる。


泣きながらフリデミングを抱き締めている、前国王陛下ご夫妻を少し離れた所から見守っていると


「ハラシュリアちゃんは本当に10才なのかな~とても落ち着いているよね」


シュリツピーア国王陛下が静かに私の横に立っていた。多分、この伯父様の属性はサイフェリング陛下と同じでしょう?内面の性格って顔に出てくるっていうしね?


「いえいえこれでも少し前まではフリデミング殿下と殴り合いの喧嘩をするほどの暴れものでして、私は侍従の方々にいつも怒られていました。フリデミング殿下に厳しいことを言って泣かせたりしてましたし」


「おや?それなのに婚約したの?」


私は嬉しそうに前国王陛下に抱き付いて、何か話して笑っているフリデミングを見詰めた。


「可愛い子ほど苛めたくなるのです」


「おっ?私と一緒だね~」


だと思いましたよ国王陛下。やっぱり中身もサイフェリング陛下に似てますね。


「ハラシュリア!」


フリデミングが手招きしたので、ゆっくりと前国王陛下夫妻に近付いた。


「私の婚約者のハラシュリア=コーヒルラント公爵令嬢です!」


「初めまして、ハラシュリアに御座います。」


淑女の礼をして腰を落とすと、フリデミングも私と一緒に腰を落としている。


「まあぁ…もう婚約者がいるの?」


「これは可愛らしい!でもフリデミング…もしかしてベネディクルに何か言われて…」


お爺様が心配そうな顔でフリデミングを見たら、フリデミングは私を抱き寄せて叫んだ。


「ち、違うよ!俺はハラシュリアがいいんだ!ハラシュリアの全部は俺のモ…いでっ!」


私は手を振り被ってフリデミングの後頭部を叩いた。思いっきり不敬だけど気にしない。


「日の高いうちから、下ネタは言わない!」


「下ネタじゃないだろう!ハラシュリアは俺の愛する人だ!」


え~と嬉しいんだよ?嬉しいんだけど…今、興奮して言う事かな?ああきっと無意識なのかな?あのね、念の為に言うと他国の前国王陛下夫妻と現国王陛下夫妻の前だから…あんたには親戚でも私には赤の他人だから!


「フ…」


「きゃあ!素敵!」


私の声は現国王妃の叫び声で掻き消された。次いで前国王妃のお婆様が叫んだ。


「まるで物語の告白みたいじゃないのっやるわね!フリデミング!」


あっという間に女性2人に囲まれて、離宮の邸内に連れて行かれた。


そして孫娘のように前国王陛下のお膝の上に抱っこをされて、お菓子を口に入れて貰うという…いい年をして羞恥心を試される試練を与えられることになっているのはどういうことか?


「ホラ、ハラシュリア…あ~ん」


これは口を開けなければいけないよね?不敬だし、そもそも膝の上に乗っているのが不敬だけど。


「お爺様!俺のハラシュリアを早く返してよ!それに姉上達も来てくれると思うから、姉上達にすればいいんだよ!」


何だか無茶苦茶な事をどさくさ紛れに言っているけど、んん?ララナナお姉様達を呼んでいるの?


「さっきの手紙で出来るだけ早く、シュリツピーアに来て欲しいってお願いしているんだ」


「へぇ~」


とか言っていたら、侍従のフーレイさんが声をかけてきた


「フリデミング殿下、ララヴェラ殿下とナナヴェラ殿下とケールミング殿下がお越しだと…」


「来たか…!」


本当に来たの?


そして祖父と伯父様はララナナお姉様に歓喜の悲鳴を上げていた。


「やっぱり女の子は可愛いね!」


おっさん達はしゃぎ過ぎ…。ケールミング殿下は祖父母と伯父ご夫妻にご挨拶をしてから、腰の鞄から沢山の紙の束を出してきた。なにそれ?


「持ち出し出来る仕事を取り敢えず持って来た。多分長丁場になるんだろうし…後で兄上達と母上もこっちに来る予定。但し拘束される危険性もあるからライ兄がピリピリして警護の準備をしている」


ケールミング殿下はそう言ってフリデミングに囁いている。


拘束…!まさか…


「母上に手荒なことをするかな…」


フリデミングは考え込んでいる。そうだよね…少なくともガガリアみたいなおじさんは王太后様には優しいんだよね。


「そうか…王族をこちらに集めてしまって、『留守を任せて』しまうんだね。ベネディクルはどうするかな」


どうやら聞き耳をたてていたシュリツピーア国王陛下も、唸っている。


ケールミング殿下は伯父様に頷いて見せてから


「ただ集まる訳では無いですよ。兄上達には一旦表舞台から退場してもらいますから…」


とさらりと吐き捨てた。


「え?」


私とフリデミングの声が重なった。ケールミング殿下は悪い顔をしてニヤニヤと笑っている。ケールミング殿下は顔は王太后様に似ているんだよね。


「サイフェリング陛下とライトミング兄上は、シュリツピーアに来る途中で死んでもらう芝居の予定だからね」


そっちの退場かーーい!悪い考えだねっさすが腹黒だね!え?考えたのはライトミング殿下なの?


「そんなに上手く死ねるのかな?」


シュリツピーア陛下!伯父様!言い方っ言い方に気を付けて!


そしてその日の夕方


離宮にいる私達の元に火急の知らせが入ってきた。


「こちらに向かわれていたサイフェリング陛下とジュリアーナ様そしてライトミング殿下が転移陣の起動中に行方不明になられました!」


その報告を聞いて私は仰天した。


「ちょ…ちょっ!陛下やライトミング殿下は兎も角っジュリアーナお姉様も一緒に巻き込むなんて聞いてないよっ!どういうことだよっ!?誰だよこの作戦考えたのはっ」


「俺だけどぉ~?」


行方不明になられたはずのライトミング殿下の声がして、後ろをゆっくりと振り向くと、怖い顔したライトミング殿下が私の真後ろに立っていた。不敬だと言われて、首から胴体が切り離されてしまうっっ!

いつも誤字報告ありがとうございます。助かっております^^

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