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92.長との面会のあと

リュードとの面会は、驚いている間に終わった。

音も無く 真緒から離れると 一段高い席に腰掛けた。

「ここでは名も姿も、偽りは不要。我が認めたのだ。咎めるもの、害するものはこの村には居ない」

リュードの静かだが、決して反論を許さない強い意志を感じる声が響く。その声に反応して、タクラ、ナラキに続き、居並ぶ男たちが頭を垂れた。真央の背後でライルとルーシェが礼を取る。真緒も習って頭を下げた。

「滞在を許可頂きありがとうございます。ご厚意に感謝します」

ライルの言葉に軽く手を挙げて答えるとリュードは立ち上がった。衣擦れの音が遠ざかる。

緊張の呪縛から開放され、思わず息をついた真緒は背後から小突かれた。振り返えるとルーシェの目が三角になっていた。

「マオ!何度もボーッとして!」

ごめんなさい!両手を顔の前で合わせてルーシェに謝るが、しばらく許してもらえなそうだ。肩を竦めてライルに救いを求める。真緒の頭をポンポンと撫でてただ微笑んだ。いや、こういう時こそ 護ってよ…。

「マオ、部屋へ案内する」

救いの神タクラだ。ありがとう、タクラさん。

タクラの近くへ歩みを進める真緒の腕をライルが掴んだ。驚いて振り返ると、微笑んでいるのに目が笑ってなかった。なんなの~!

「マオ、一緒に行こう?」

ライル、腕が痛い!そんなに力込めなくても逃げないよ…。真緒はライルを軽く睨みつけたが、本人は何処吹く風だ。ルーシェは呆れ顔で離れていった。

「私たちは、報告にベルタに戻るわ」

マオのこと頼んだわよ、とエドと部屋を出て行った。


タクラに案内された部屋は村外れの小さな塔のような建物だった。建物の一部は崖の岩と融合した形になっていて、半地下の構造になっている室内は想像以上に広かった。

岩をくり抜いた室内はその岩肌を活かした壁になっており、触れるとひんやりとして気持ちよく、頬をつけてその感触を楽しんだ。余りの気持ちよさに目を瞑り寄りかかった。ふっ、と一瞬気が遠くなり、身体の力が抜けた。揺らいだ身体をライルが支えてくれた。

「…!熱があるじゃないか!」

額に当てられたライルの手も気持ちいい、少し甘えてその手に頭を預けてみる。少し焦りのあるライルの声に、心配しすぎだよ、と苦笑いを浮かべたところで視界が回転した。

「休むんだ」

有無を言わさず、抱えられてベッドへ連行された。タクラは穏やかな微笑みを浮かべて何も言わないけど、恥ずかしい…。こういうのは慣れないなぁ…。

確かに身体が火照っている。お姫様抱っこだけが原因ではないようだ。大人しく休もう。身体も痛いし。

タクラが医師の手配に向かうと、室内に二人だけになる。

「マオ、大丈夫か?まずは身体を休めるんだ」

いいね、ライルは真緒の手を握り、もう片手で髪を撫でる。そして、そっと額に唇を落とした。吐息が伝いこそばゆい。ギュッ、と目を閉じたところでタクラがスレンダー美人を連れて戻ってきた。

切れ長の目に白銀のストレートの髪を肩口で切りそろえた美人は真緒を見つめて微笑んだ。

「ヤシアだ」

医者だよ、白磁のように艶のある細い指が、真緒の頬に触れる。同性なのにその艶にあてられて真緒の鼓動は跳ね上がった。美人で医者とか、才能溢れすぎでしょ!神のの不公平さを真緒が嘆いている間に、ヤシアはタクラとライルを外へ追い出していた。

「邪魔者はいなくなった、診察を始めようか」

ヤシアは真緒の元へ戻ってくると、微笑んだ。


扉の外から 室内を睨むように見つめるライルに、タクラは真緒のいる家屋が見える東屋へ誘った。

「ヤシアは優秀な医師だ、任せておけばいい。

…アレは私の妻だ。信用してほしい」

タクラは運ばれてきたカップに口をつけ、警戒の解けないライルに苦笑を浮かべた。茶を勧められ、ライルもタクラに倣う。

「…大事なのだな、マオが」

タクラの言葉に、自身の余裕の無さを指摘されたようでライルは赤面した。大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせる。

「貴方はあの宰相の息子か」

タクラの言葉にライルは驚いて見つめ返した。

「父を知っているのですか?」

タクラは次期族長だ。ライルは敬意を払ったが、タクラは気軽に話して欲しい、と告げ、そんなに歳も変わらないだろう?と笑った。そして、昔話をしよう、とライルを見つめた。





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