表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/318

80.旅の仲間

気付いたらベッドの上だった。

連れ戻されたの?失敗したんだ、私…。

身体を雷が走る。強い痛みに腕も足も動かせない。マットレスに縫い止めれれたように指先しか動かせなかった。自由になるのは指先と流れる涙だけ。

自分の人生なのに、自分の知らないところで翻弄される。それが悔しくて仕方なかった。

その結果はどうなの?

いきがって飛び出してみたけど、結局動けなくなってこのザマだ。悔しい気持ちも失せて、情けなくなる。


泣きたいだけ泣いたら、気持ちが落ち着いてきた。

ガタガタと窓がなる音がする。一定の音ではないから風て揺れているんだろう。耳を澄ませば、人の賑わいが聞こえてくる。マルシアの店にいた頃を思い出し、胸が熱くなった。

ここは王宮じゃない…?

真緒の心に希望のともしびが灯った。湧き上がる歓びに思わず起き上がた━━━つもりだったが、身体中に走る痛みに声もなくマットレスに沈んだ。悶えることもできないほど、自分で動くことができなった。

ガタガタと音をたてて扉が開く。

「起きたのか?」

さっきのイケてるオヤジだ。訳してイケオジ。イケオジがトレーをもってやってきた。食事だ、ちゃんと食えよ、そう言いながら真緒の身体を起こし、クッションを背にあてがい座らせてくれる。真緒の膝にトレーを置くと、ほら食え、と急かしてきた。

それよりあなたは誰ですか?

助けてくれたんだよね?まさかここから強制送還とかないよね?

疑わしい目でもしていたのだろうか。イケオジは豪快に笑って名乗った。

「オレはエド。傭兵をやってる」

お前は?イケオジ・エドは聞いてきた。どうしよう、なんて答えたらいい?上手い答えが浮かばず、黙ってしまった真緒を、まあいい、と言って深く追求しなかった。助かった。

エドが運んできてくれた食事はパンとスープ、肉が少し。腕が上がらず、震える腕でなんとか口に運ぶ。

食事の間、近くの椅子に腰掛けて話してくれた。

ここは王都から一山越えた森の中の村。そこの唯一の酒場兼宿屋の二階だそうだ。私はけもの道に倒れていて、このまま日が暮れると狼に襲われるから連れてきた、と教えられた。

「エドさん、ありがとうございます」

エドでいいよ、そう言って笑うイケオジは笑うと目が無くなる優しい笑顔の人だった。名前くらい教えてくれないか、といわれ少し考えて答えた。

「マオン」

我ながらひねりもセンスもない偽名に落ち込むが、突然呼ばれてもちゃんと返事できるように、真緒に近い名前がいいと思ったのだ。

「ところでマオン、どこに行くつもりだったんだ?」

どこ?どこに行くつもりも、ただ逃げたかっただけ。だから目的地なんてなかった。具体的な地名もわからない。真緒は再び黙ってしまった。

ベルタの街がきな臭い。どうやらユラドラと睨み合ってるらしい。傭兵として雇ってもらいにいくんだと、エドは教えてくれた。

ベルタの街…イザがいるところ。

あそこまでいけば渡りの樹まで帰れる!エドについていけば、ベルタまで迷わずいけるんじゃない?二人旅なら疑われることも少ないだろうし、なによりこの世界のことを知らないのだ。誰かの助けは必要だった。

「エド、私もベルタの街まで一緒に行ってもいい?」

「…構わなが、戦いになるかもしれないところだぞ?」

それでも構わない、真緒のお願いをエドは快諾してくれた。じゃぁ決まりだな、とにかく食ったら休め。真緒の頭をポンポンと触ると、食べ終わった食器を持って部屋を出て行った。

目的地が決まり、運良く旅の仲間もできた。

ホッとした気持ちと、上手く行き過ぎる気持ち悪さを感じていた。エドは真央の黒髪黒目をみても特別驚いている様子がなかった。

もしかして…私を知ってるの?

それならなぜ連れ戻さないの?

━━━どうでも いい。今が味方なら構わない

どのみち一人ではベルタまで辿り着けないのだから。

兎に角、身体がちゃんと動かせるようにならないと。

熱っぽい身体を持て余しながら、再び深い眠りに落ちた。


扉の隙間から真緒の様子を探る。

薬は効いたようだ。深い眠りのようで、寝返りを打つ気配もない。エド━━━ハルツェイは扉を閉じて、階下へと降りる。カウンターで酒を頼むと、隣の男に目線を送る。指で机をノックすると 不規則な音が奏でられるていく。まるでモールス信号だ。しばらくすると男は席をたち店を去った。ハルツェイはひと息に酒を煽ると二階へと向かった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ