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78.人の気も知らないで

「マオをナルセルの婚約者にする」


はい?

なんて言いました?聞き間違いではないですよね?


後ろからの突っ込みはなかった。それだけ後ろの二人にとっても衝撃的だったのだろう。

「…どういうことでしょうか?」

気力も勇気も振り絞って真緒はマージオに質問した。だってナルセル王子って王太子でしょ?王妃の子供だって聞いたよ。それって異母弟って言うんじゃないの?血の繋がった姉弟での結婚とか有り得ないから!

「私じゃ嫌かな?」

微笑んでるけど、それ、営業スマイルでしょ!ナルセルの微笑みが胡散臭い。16歳からこんなことできるなんてなんて腹黒なんだ。親の顔が見て見たい。あぁ、このひと(マージオ)か。

「嫌って…、その、弟ですよね?」

遠回しに 嫌です! と伝えてみる。

「年下なのが気になる?」

そこじゃないっ!なんでそうなる。ナルセル、自分の結婚話してるってわかってんの?

「違います。血の繋がりのある姉弟での結婚は有り得ないです」

「マオは王の子であると認めなかったって聞いてるよ。証明できるものもないしね。身分についてはヴィレッツの養女になれば問題ない」

ナルセルに華やかな笑顔を向けられて、言葉が出なかった。開いた口が塞がらない。顎外れる…。

「貴方の渡り人の知識を狙っている者がいる、という話は聞きましたね?」

ゴッドファーザー宰相が口を開いた。ゴッドファーザーってあの有名な映画ですよ、マフィアのドン。渋いおじ様で凄みのあるあの感じです。

「ユラドラと一触即発の状態であることは知ってますか?」

真緒は黙って頷く。

「そのユラドラの王太子が王宮に滞在していることは?」

首を横に振る。気をつける相手として話は聞いているが誰だかは知らない。

「樹海の向こう、ユラドラの大河を挟んで兵が睨み合っています。こちらとしては争いは避けたい。そこで水面下で王太子と交渉をしていたのです。

昨日、この争いを回避させるから王女を娶りたい、と要求があったのです」

王女なんていたっけ?

「あなたですよ、マオ」

ため息混じりに教えられでもピンとこない。

「大切な渡り人を他国に渡すわけにはいかない。そうじゃなくても、父上がマオを離さないだろうけどね」

ナルセルが話を継いだ。王女は存在しない、と何度も突っぱねた。ユラドラの王太子は真緒のことを調べ上げて、再度交渉してきたのだった。王女の存在が分かれば今後も他国からこの手の話は尽きないだろう。渡り人を他国に渡すわけにはいかない。神殿のできごとで知識が渡ることへの危機感が高まった、ということらしい。で、だからなんで弟と結婚?

「王女が存在しない以上、他国に出さないためには王太子である私の婚約者が都合いいんだよ」

何言ってるの?そんな都合、知らない。

なんで勝手に決めちゃうの?

王女?渡り人?

そんなの勝手に決めないでよ。この世界に望んで来たんじゃない。王様の子なんて 望んでたわけじゃない。

どれも これも 私が望んだことじゃない。

それなのに、自分の知らないところで勝手に決められるなんて、冗談じゃない。

「お断りします!婚約も 結婚も有り得ない!」

ぐっと拳を握り、立ち上がる。

「勝手に決めないで!私の自由を奪わないで!」

感情が昂り、上手く言葉にならない。腹の底から絞り出すような叫びだった。ヤバい、呼吸が乱れる…

真緒が意識したときには、息が吸えなかった。気管がキュウと締まる。自分の呼吸以外聞こえない。苦しい…

真緒の身体が突然かしいだ。呼吸が乱れて上手く吸えない。ライルは後からその身体を支えるとソファへと横たえようとした。その手を真緒は必死で払った。

もういい、もうやめて、私に構わないで!

声にならない声を上げて、必死に抵抗する。ライルは手刀を首筋に落とす。意識を失い、力なく身を預ける真緒を抱き抱えると、失礼します、と退出の許可を一方的に取ると退室した。


すぐに追いついたルーシェに案内され、ヴィレッツ殿下のプライベートエリアへと向かう。


勝手な話しだ。

ライルは怒りに我を忘れそうだった。マオは俺のものだ。誰にも渡さない。

じゃぁ なんであの場で言わないんだ?

結局お前は逃げたんだよ

別の声が、ライルを嘲笑う。

自分の狡さを指摘され、余計に苛立つ。

泣きながら眠るマオを抱く腕を強める。

このままどこかに 連れて逃げてしまおうか…

そんな思いに支配される。

抱き抱えたときの王太子の目…挑むような 、(オス)の目だった

利益だけの婚約ではないということか…

それとも 俺を試しているのか…?


案内されたベッドに横たえ、髪を撫でる。

真緒を護る力が欲しい。どうしたら護れる?


護るためなら悪魔とだって手を組んでやる━━━━

ライルは真緒の手を、強く握りしめた。




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