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49.向かう先

酷い頭痛だ。頭が重くて痛くて割れそう…。

あぁ… あの男をみたんだ。恐いって思ったら 息が苦しくなって、手が痺れて、何も考えられなくなった。体育の授業中に、友達が同じようになったことあった、なんだっけ?過換気症候群とかいうんだっけ。二酸化炭素を吐きすぎるとなるらしい。意外と覚えてるもんだなぁ。目をつぶったままひとり苦笑いする。今まで 向こうの世界のこと思い出すこともなかったのに、昨日からなんだかよく思い出してる。私、気持ちが弱っるのかな…。

結局、国王様には会えなかった。まぁ私が悪いのか。

王都へ向かったというから、当分会う機会はないんだろう。それまでに自分の気持ちをちゃんと整理しておこう、うん。

あとはあの男から逃げることか。

いつまでもイザやライルに守ってもらうわけにはいかない。とはいっても知り合いも土地勘もないこの世界では自分ひとりではどうにもならない。

元の世界へ帰る…? 帰れる…?

迷惑をかけない方法なんてこれくらいしか思いつかなかった。お母さんが帰れたということは何か手段があるはずだ。渡りの樹へ行ってみようかな、何か手掛かりが掴めるかもしれない。

頭痛薬ってこの世界にもあるのかなぁ、ボヤキを混ぜつつゆっくり身体を起こした。意外といける。今度は座ってみる。うん、大丈夫。喉の乾きを感じて、水を求めて目を開けた。離れたテーブルに水差しが置いてあるのが見えた。真緒は水差しまでいくと一気に飲んだ。少しぬるいが喉に心地よい。ようやくひと心地つくとこができた。

「マオ、起きて大丈夫か?」

ライルがトレーを持って入ってきた。あれ、ライルって高貴なお坊ちゃまでは?そんなトレーとか持たしたら、周りの人真っ青になっちゃうのでは?真緒の心の叫びは当然スルーされ、ライルはトレーを置くとまっすぐやってきて真緒を抱き締めた。ハグというには時間が長い、というか力強いというか…全体的に濃い!慣れません…。余計に頭が痛くなった気がする…。

真緒が眩暈を覚えていると、ライルはひょい、と真緒を横抱きにするとソファに座った。膝から下ろして貰えません?ひとりで座れますよ…。

もう言葉にする気力はないので、黙って膝の上に抱かれてお茶を飲む。

「…兄上と何があったんだ?()()()()ってなに?」

昨日 兄上をみてからおかしくなったよね、話してくれないか、ライルは真緒の手からカップを取りテーブルへ戻す。自身の胸に引き寄せると髪を撫でた。

えっ?兄上?

「テリアスは宰相の後継。私の兄だ。とはいっても、歳も離れてるし一緒に暮らしたことはほとんどない。私はライックの元に預けられたからね」

で、何があったの?ライルの追求は緩まなかった。()()()()━━刃を突きつけられ殺されかけたとき。ライルは誘拐犯が兄であったことを再確認することになり、苦々しい思いだった。「…それ以外は…?」

一瞬、何を問われてるのか真緒にはわからなかった。ライルの手がうなじからデコルテをなぞり、強い視線を向けたことで、鈍い真緒もさすがに悟った。

「ない!ないですっ!」

うわぁぁぁ! なんてことを確認するの!

男女の関係について聞かれてるんですよね…!

友人の中には大人への階段をかけ登ってる子はいたが、恋愛に夢の持てない真緒にとって別世界の話だった。こんなことを面と向かって聞かれるとは思わなかった!真緒の慌てぶりにライルは目を丸くして見つめていたが、フッと表情を和らげると真緒の頭をポンポンと撫でて 良かった それだけ呟いた。その笑顔、心臓に悪いっ!

真緒はあまりの動揺にライルの話をきいていなかった。反応が薄い真緒の様子に聞いていないと判断したのかライルは真緒に決定事項として告げた。

「マオ、もうこれは決定だ。王都へ一緒に行ってもらうよ」

うぇ!?どこからか変な声が出た…。ぱっと顔を上げてライルを見ると、やっぱり聞いてなかったんだね、と呆れ顔で見つめ返された。

「イザは自警団に戻らなくてはいけなくなった。私も王都へ戻らなくてはいけない。ヴィレッツ殿下の近くならここより安全なはずだ」

「なによりも 私が離れたくない」

ライルは真緒を抱く腕に力を込めた。

「絶対に護るから」

王都へいく。

考えてもみなかった。頭痛もどこかに飛んでいった。

テリアスも王都へ向かうはず。わざわざ猛獣の檻に自ら入りにいくようなものだ。マルシアのところではダメなのかか聞いてみる。

「ベルタの街が前線になる危険性があるんだ。樹海を挟んだ隣国がきな臭い」

本気で呆れている様子のライルは大きなため息と共に さっきも言ったけど とワケを話してくれた。だからイザも離れられないんだ、納得です。

自分では抗えない大きな流れに飲み込まれていくような感覚に真緒は震えた。

それでも やるしかない。流されるだけ、殺されのを待つだけなんてイヤだ。




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