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36.襲撃の果て

強い力で身体を揺すられ、遠のいた意識が呼び戻される。

「しっかりしろ!死にたいのかっ!」

ライルの叱責に真緒は重い瞼をあげ、目の前の光景にハッとする。そうだ、襲われて…!

ライルは真緒の上の男を蹴り落とすと、真緒の腕を力一杯引き寄せて立たせた。真緒の手に冷たく硬いものが触れた。

「持ってろ。自分の身は自分で守るんだ」

ライルから渡されたのは抜き身の短刀だった。反射的に柄を握ったが、小刻みに手が震え、両手で押さえないと取り落としそうだった。その間もライルは剣を振るい、向かってくる男と対峙していた。

「マオ!後ろに入れ!」

その声に反射的に身体を動かし、隙間に身体を滑り込ませる。真緒を護るようにその数歩前にライルは立ちはだかった。

どれだけ払っても 終わりはないようだった。ライルの足元が揺らぎ 身体のブレが増していく。ライルの視界が霞みはじめた。自分が殺られたら真緒も殺られる。なんとしても護る!その意思だけがライルを支えていた。しかし、一人で対峙するには限界が近づいていた。隙をつかれ、懐に飛び込まれるとそのまま引き釣り倒された。ライルは押し退けようと体勢を変えたが、振り下ろされた刃が太腿を掠め 痛みに意識を持っていかれる。再び刃が自身に向かっている。ライルは死を覚悟した。

「ライル!」

真緒は叫びと共にライルを襲う男を突き飛ばす。ライルに覆い被さるように真緒の身体が重なる。一瞬、真緒の身体が強ばった。ライルは真緒の手から離れた短剣を向かう男に突き立てると、再び真緒を背に庇い、間合いを取った男たちと対峙した。

どちらから仕掛けるか 睨み合う。

空気を裂く音と同時に数人の男が同時に倒れた。背後から矢が放たれたことで、睨み合いに終止符が打たれた。

波が引くように男たちが去ってゆく。

肩で息をしていたライルの膝が崩れた。

「大丈夫か!」

馬から人が降り立つ気配がする。その声を聴いた瞬間、ライルの緊張の糸が途切れた。

ライックの焦った声なんて珍しいな…崩れかけた身体を支えてくれる逞しい腕にもたれ、ライルの意識は飛んだ。


叫び声に意識が覚醒する。

その声が自分のものだと気づいたのは、更なる激痛に襲われたからだった。

「堪えろ、もう少しだ」

ライックの声だ。ライルはグッと拳を握り強く唇を結ぶと声を堪えた。

ライルの身体にはかなりの傷があり、そのうちの幾つかは深く、特に大腿の傷は今だに血が止まらなかった。医師によって縫合され、手当を施された傷は全身を焼かれるような痛みを伴い、ライルを苦しめる。

それでも命があることに感謝した。

手当が済み 医師が退室すると、ライックは薬湯を手渡し飲むように促した。

「あれだけの手練を相手に よく耐えたな」

ライックはライルの脇に腰掛けると、空のカップを受け取る。身体が熱く掛物を押しやる。

「これだけの傷だ、これから熱が出る」

とにかく休め、と浸した手ぬぐいを額に乗せてくれた。額から伝わる冷たさが心地いい。

「マオは無事だ。よくやった」

それが聞きたかった。頷き返し、自分の身体から力後抜けるのを感じた。

薬の効果か、安堵のためか、睡魔がライルを襲う。逆らうことなく受け入れ、ライルは眠りに落ちた。

それを確認すると、ライックは厳しい顔で立ち上がった。



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