156.繋ぎ
うーん…
目が覚めるとこのパターンよね、今度はなんで連れてこられたのかなぁ…?
虹色に変化する光の中で目覚めた真緒は、大きくため息をついた。
特に身体の辛さはない。ただ眩しい。
目が慣れるまで少しかかりそうだ。目を瞑っていても自分を囲むものが明るいとわかるのは なんとも不思議だった。
(…それにしてもこの空間って、何なんだろう…)
よく導かれて来るが そもそもここは何なんだろうか。ナルテシアやお母さんと繋がれる場所であることは確かだ。
この二人と自分が繋がっているもので思いつくもの━━ 渡りの樹、だ。
ここは、渡りの樹の中なのではないか。
考えが行き着くと、脳内に声が響いた。
『勘のいい子ね。そう、渡りの樹の中。正確にはシャーマンの意識世界、かしら』
はい ナルテシアさん、どうもこんにちは。
私、貴方に文句のひとつも言いたいのですが?
ナルテシアの説明をまるっと無視して、真緒は散々飛ばされた経緯について説明を求めた。
鈴を鳴らしたような柔らかな声は、でもライルの元に帰れたでしょう、とあっさりと開き直って 悪びれた様子もない返事が返ってきた。
こりゃぁ、ムダだね…
真緒は追求するのを早々に諦めた。
それよりも今度は何?
こちらの方が優先だ。
『あなたの力を借りたいのです。始祖の力を繋ぐ役目を果たしてほしいのです』
はい? もう少し詳しくお願いしますよ
『石版の新たな護りの力を築くため。ナキアの力だけでは難しい。始祖の力を貴方が繋ぐことでより強い護りを築くことができるのです』
石版の護りってなに?
で、私は何をすればいいのでしょうか?
『石版の護りはエストニルと山神を護る国境の護り。力を失いつつある護りの力を新たに築き強固なものにするのです。貴方の身体に始祖の力を集めます、貴方はこの意識世界で自身の内にその力を導いてくれれば良いのです』
導く…ねぇ…。難しくてよく分かりません。
願えばいいってことかな?力を私にくださいって。
『マオ…忘れないで。貴方を望む人の存在を。光に呑まれそうになったら、その人のことを強く想いなさい…』
最後はとても真剣な声だったな…
声と共に消えたナルテシアのことをぼんやりと考えていると、空気砲を受けたような衝撃が身体に伝わってきた。それは一瞬ではなく、強弱を伴って波動が続けて真緒の身体を襲った。
衝撃はあるのに飛ばされることもなく、波動が身体に吸収されていく感覚。超音波のように少し痺れのある感覚が心地よく、真緒は自然に身体を委ねた。
(…これが、始祖の力…?気持ちいい揺れに漂っているみたい…)
次第に重くなる瞼に、真緒の意識も沈んでゆく。
あれ? このままでいいんだっけ…?
あまりの心地良さに、真緒の思考が鈍っていく。
━━━ 身を任せてしまえばいい
悪魔の囁きが、鈍る真緒の思考を更に奪う。
いつもはこの空間では重さを感じないのに、今は身体の重さを感じる。もう瞼は重すぎて開かない。意識は深い海の中に沈んでゆく。身体から光が溢れ、自分を包み込んでいく。
あぁ、これが光に呑まれるってこと…
…このまま この溶けてしまいそう
━━ それでいいの?
思考の最後の問いかけが、真緒に縋る。
いいのかなぁ…




