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エノクの楽園  作者: ⊃(烈)⊂
9/9

歯車達


―――――――私のせいだ。


彼女は後悔していた。


―――――――私のせいじゃない。


彼女は逃避していた。


―――――――誰のせいでもない。


彼女は正論を並べていた。


ぐるぐる回る頭をそのままに、彼女は次の日には退職届を出した。そして、持ちうるコネで新しい職についた。贖罪のために。





看護婦は焼け爛れた死体を一瞥したあと間璃亜に尋ねた。


「………どうしたの。こんなところまで。」


間璃亜は看護婦がとても冷たくなっていることに気付いた。もちろん、物理的にではなく、精神的に。

そのせいか間璃亜は少し怯えながら、


「これ、ママのなの。返して。」

「いいわよ。」


あっさり返してくれた。


「でも、それは私と一緒に部屋に戻ったらだけどね。」


間璃亜は予想外の展開に気が抜けていて、看護婦が扉を開けるまでその場に立ち尽くしていた。


「ほら、いくわよ。」


間璃亜はハッとして、急いで追いかけた。ようやく追いついたとき、看護婦が間璃亜に目をむけないまま手の平だけを出してきた。


「ここは広いから、どうせまた迷うんでしょ?」


看護婦の子供だからというような物言いに間璃亜は少しイラッとしたが、素直に看護婦の手を取った。


(ママの方が暖かい)


寂しさを悪態へと変えながら。



―――――――――――ガラララ…


「……アンデル!!」


部屋に戻ると、そこにはアンデルがいた。


「アンデル?」

「そう、アンデル!この子の名前!」

「…へぇ~」


商業用AIロボットに名前をつけるという習慣はない。彼等にとってそれらは()でしかないからだ。

だからこそ、看護婦の目には名前をつけ、まるで家族のように振る舞っている間璃亜はとても不思議に見えていたのかも知れない。


あるいは憧れか。


『帰りましょう、マスター。お父様がお待ちです。』

「分かった!」


間璃亜はアンデルの後ろをてくてくとついていく。看護婦がその姿に親鳥と雛鳥を重ねて少し微笑むと、間璃亜が振り返ってきた。


「そうだ!…え~と…?」

「レメェル。レメェル・クラシー、レルでいいわ。」

「レルさん!また遊びに来るね!」


そう言い残して間璃亜は去って行った。


「来なくて良いわよ…はぁ。」


言葉とは裏腹にレルは少し微笑んでいるように見えた。





帰ってもママはいなかった。

パパもいなかった。

アンデルはいた。


「アンデル!おままごと、しよ?」

『分かりました、マスター。』


間璃亜は母の帰りを待ち続ける。








……………………………。


『犠牲者がいるようだが。』

「はて、なんのことでしょう。」


男は壁に向かって話しかけている。悪辣な微笑を浮かべながら。


『まぁ良い。そこまでの問題でじゃない。…貴様の密告により秘匿兵器工廠を破壊することが出来た。』

「で、報酬と亡命は?」

『できている。詳細はここに。』


そういうと機材から一枚の紙が出てくる。


「いつの時代になっても隠し事はアナログというのは皮肉なものですね。」

Warum(たわけ)、有益なだけだ。全ての科学と技術があらゆる発展を促すわけでもあるまい。』

「全くだな。仕組まれたシナリオとはいえ、現に人類は科学と技術によって堕落している。」


男は紙に目を通しながら会話する。悪辣な微笑を浮かべながら。


『こちらからは以上だ。貴様からは何かあるか?』

「いえ」

『であれば切る。なお、この会話のデータは終了と共に消えるぞ。』


そう言い残し、壁の『no data』が消える。同時に男は手に持っていた紙を暖炉の火に放り込んだ。


その後、何十年前かもわからないような古い二つ折りの携帯電話を取り出し、それを開くとある番号にカーソルをあわせ、ボタンいっぱいに書かれた『決定』を押す。


「終わったぞ。」

『そうか。これで第二段階かな。』

「ようやくだな。」

『あぁ、本当にようやくだ。報告感謝する。』


『「()()()()()」』


パチャン。男は携帯電話を閉じた。そして、傍にあった液晶を手にする。そこには一人の女性と子供らしき少年と男自身が映っていた。


「はじまるよ、美緒、徹。見守っててくれ。」


両手を広げ、天井を見上げ、虚空に話しかけるように男はその言葉を放った。


男は悪辣な微笑を浮かべている。


個人的な事情が重なってまして、今後もかなり不定期かつ間隔の空いた投稿になると思われますので、余り期待せずに待って頂けると幸いです。いやホント今回はサボりじゃないんで、ホントに。ゆるして。

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