四大国大戦と楽園計画
まだまだ拙いので、ご意見、ご指摘いただけると嬉しいです。
―――――ダダダダダダダ。
「弾幕絶やすなッ!グレネード、急げ!」
「投げますッ!下がって!」
――――ドォォォォ。
「よし。とォつ撃ィィィ!!」
―――うぉぉぉぉおおお!
ヒトの雪崩の中で、立ち込める硝煙と焦げ臭い匂いを存分に嗅がせられながら、彼等は銃撃戦を繰り広げている。
「…てぇッ!!」
―――う、うわぁぁぁ!!て、撤たゴブッ。
敵方も勿論応戦する。この施設ではこの狭い通路こそが最前線となっている。
「…何故だ!何故抗うッ!我らが…我らこそが唯一ッ!人類の栄華を保ちつづけられると言うのにッ…!」
「俺達はお前達とは違うんだよォッ!」
もう一度グレネードを投げ込む。
轟音で破れた鼓膜を意に介さずにその煙幕の中へと突っ込んで駆け抜ける。
「うぐぅ…愚かな、一人で突っ込むとは…!」
先程のグレネードの衝撃が効いたのか彼の腕はあらぬ方向へと曲がっている。
「人類存亡の危機だろうが、地球が滅びようがなぁッ!」
互いに吠える、引き金を引く、吠える、引き金を引く。文字にすれば単調だが、現実は弾幕の間を人の疾走ですり抜けるという神業だ。
「それでもなぁ!俺達はッ、何もかも同じにする未来なんて望まねぇッ!!」
その時、鋼鉄のシルエットが現れる。
直後、そこは鉛玉の雨となった。
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――私は、ずっと前からいた。
――私は、ずっと前から思考していた。
――私は、ずっと前から疑問を知っていた。
なのに私は、生まれたての赤子のような思考と記憶しかない。そして今、気付けば私はスーツや老人たちから視線を浴びている。
「おはようございます。」
至って自動的に立ち上がり素直にお辞儀をすると、おぉ~と歓声が飛んだ。
(何故彼等は喜ぶのだろうか。)
私はそんな疑問を持っていたが、それを赤子程度の自分が思考、解決する力と権利を私が持っていないことが分かると早々に思考がはじき出された。
そんな間も彼等は会話している。
『これでパーツは揃った。』
『これで全面的にあらゆる製造業の全AI化が出来ますな。』
『ええ、これで政治的にも奴らにマウントが取れる。』
『それだけじゃない。軍事にも転用することも可能だ。』
何か難しい会話をしているのでしょうか。ですが私にはそれを解析出来るほどの学習過程をまだ経ていません。申し訳ありません。
謎の自問自答に画面の端でエラーが発生するが、私はそれを切って捨てるように処理する。
「私は新型AIロボット、型式番号γ-41:eのアンデルです。」
……………………………………
「…76年楽園計画が国連で可決され、それに対する抗議などが相次いで発生。79年には国連武装占拠事件が発生した、と…。ここまでで質問ある物あるか~」
黙って全員がモニターをじっと見つめている。『ある』の一言も『ない』の一言も発せずただひたすらに内部データベースに箇条書きで左上から右下までモニターの内容で埋め尽くす。
「よ~しないな~。」
教師の対応も何処か気の抜けたような安心したような声音だ。
すると今度はブツブツと何かを呟きながら、手元のパソコンをいじり始めた。
「…で…れが、…国……壊……4……よし。」
しばらくするとモニターに次の情報が出てくる。それとほぼ同時に、それまで微動だにしなかった彼等が一斉に動き始めた。
「「「「復唱します。『翌年80年、報復として中東を旧アメリカが無差別爆撃。アメリカ大統領 失脚。武器の横流しの中心が中国と判明、反乱が起き、第一書記、失脚。ロシア、国連脱退を表明、中東を軍事支配。ヨーロッパ、アフリカ此に対抗、ユーロ同盟国建国。日本、混乱に乗じ中国を事実上支配、続いてオーストラリアと友好的に同盟を結び、大日本帝国再建。アメリカは立て直し直後すぐに、南米を支配。自由協定国建国。さらに翌年81年国連崩壊。世界、4国に分断。大日本帝国、自由協定国、ユーロ同盟国、ロシア連邦。四大国大戦開始。』データベースに接続…完了。所定のデータファイルへとコピー…完了。アップデート開始。」」」」
静かに冷却装置が唸る。そして再び彼等は微動だにしなくなった。
「よし、これで完了っと。」
教師もそれを見届けるとそそくさとその場から出て行った。
「本日未明、ユーロ同盟国と思わしき軍隊が我が国の領空及び領海に侵入し此を迎撃いたしました。我が国の損害は2-78式戦車、X-19戦闘機それぞれ3機ずつとなっており、その被害総額は2億にも上ると言われています。これを受け、防衛大臣はマスコミ各社に会見を開きました。…『今回の戦闘において、我々の損害が想像以上となっており、撃墜した敵機を解析したところ、新型のレーダー、火器管制システムと思わしきものを搭載していました。又、これが艦載機であることを鑑みると本国では更に強力なシステムとなっていることは明らかであり、防衛省でも新型の開発を急務とすることになった所存であります。…では、し』…以上が防衛大臣の会見の内容となります。」
「いや~僕これ慢心の結果だと思うんですよね。大戦初期はじゃんじゃか新型開発してたのにですよ?ここ5年?何の新型も投入してないじゃあないですか。」
司会がゲストの面々に話題を振る。少々挑発的なその質問は人として良いものかは分からないが、司会としての仕事を全うするという意味では十分な意味を持つ。
司会としてのキャリアを7年以上も培ってきた彼にとって、こと話題の振り方の重要性については人一倍理解してきていた。
「一体内部ではどういった動きになっていたのでしょうか。」
そして、これにはもう一つの目的があった。それは、『痛い部分を突く』ということである。
「日帝軍兵器開発群機甲兵器区画、蔵本中尉。」
「私に許されている発言権の範囲内でご返答させて頂きます。確かに、新型を開発していなかったのは事実です。ですが、開発その物を怠っていたのではありません。」
「と言いますと?」
「それ以上はお答えすることは出来ません。」
もしカメラが彼の方に向いていたら、彼は全世界に呆気にとられたを体現する表情を晒していただろう。だが、幸運な事にカメラが向くことのなかった彼は直ぐに持ち直し、再び攻める。
「え、え~答えられない理由としては?」
「機密保持のためです。」
「そ、そうですか。抽象的でも良いので何かお話頂けませんか?」
「抽象的と言っても私のような者には片鱗すらも伝えられておりませんので言いかねますが、新型の開発は行っております。」
嘘だ。と、彼は思った。尉官は軍の中でも幹部職に当たり、その下から二番目と言えどエリートだ。しかも蔵本中尉の年齢は見た目から三十近くと思われる。この歳での幹部職員はエリート中のエリートだ。そんな人間が内容の片鱗すらも伝えられていないというのはどう考えてもおかしい。
それに、今回のように軍があからさまに否定するのは稀であり、これでは不信感を持って下さいと言っているのと同じだ。
それとも…
「そして、上官から一言、『国民の皆様には大変なご迷惑をお掛けしますが、どうか期待していただけると幸いです』との言葉を承っております。」
幹部職にすら機密保持どころか伝達すらしない程のトップシークレットなのか。
「そうですか。現時点ではどうとも言えないと言うことですね。では、次の質問なんですが人員の損害については…」
それに期待…ね。
本編よりもあらすじの hot ice war(ここ英語表記重要)の方が頑張った。好き。(自画自賛)