47話 任された者の戦い①
♦︎で忍とレブルの視点が交代で入ります。ころころ変わってごめんなさい!
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テントに荒っぽく入口を作った僕は、急いで馬車を出した。流れるような手際で馬を繋げるアマンとゾン。
「じゃ、頼んだよ。」
「皆んなの事は任せて。シノブさんも気をつけてね。」
「分かった。」
レブル達と分かれて、僕は魔族を探す。仲間を逃がす間に何もして来なくて、意外にも空気の読める魔族なのかも知れない。
「…………何処にいるんだろう?」
『テント周囲に生物反応はありません。』
「あれ?居なくなったかな?」
さっきまで戦ってた訳だし。突然いなくなったりしないよね?一応さっき戦って飛んでいった魔物があそこにあるから、場所もここで合っていると思うんだけど。
―ヒュン。
地面に横たわる魔物をそっと回収しておく。魔族が連れてきたような感じだったし、きっと魔界にしかいない貴重な魔物かも知れないからね。3体とも回収が終わると辺りの音の異常さに気がついた。
「何の声も音もしないね。」
『何かあったのでしょうか。それとも忍様同様に転移系の魔法の可能性も。』
「魔族だもんね。それくらい使えてもおかしくはないか。」
居ないもんはしょうがない!僕も街に行くとしようかな。
皆んなどっちに行ったっけか……。
♦︎
馬車と馬で走る事数分。魔物達の足音は聞こえて来ない。
「さすがにすぐは追いつけないかしら。」
「そうだな。向こうは荷物とか無いだろうし、もしかしたら街に着く頃に合流するかもな。」
「私一人で先行しようかしら。」
「それは良くないわ。一人で行くレブルもだけど、こっちの戦力的に狙われたら厳しそう。」
「そうです!一人では危ないかも知れませんよ。このまま何も無いと決まってもいないし。」
「その発言が既に何かある流れよね。」
―ガタン。
「ぐえ。」
「何か踏んだな。」
馬車を止めてその何かを確認する。何となく無視して行くと背後を狙われる形になる。
「っくそ。全くなんだって言うんだ……。」
「大丈夫かしら?」
馬車に踏まれて普通は大丈夫ではないけど。何事も無かったように立ち上がったので、一応人として聞いてみる。
「ん?あぁ。これくらいどおって事ない。」
「それは良かった。では私達は急ぐので……。」
「いや、待て。」
ですよね。引かれたその人は、黒い甲冑の隙間から赤黒い肌。そして人にはない尻尾が見えた。
「もしかして魔族の人?」
「そう言うお前らは人間だな。あの黒い奴の仲間か?」
「師匠を知って……むぐ。」
「セロー!し!」
「師匠?ったら事はお前は奴の弟子か?」
「もごもご。もご!」
セローの口を塞いだけど遅かったか。このまま行かせては来れなさそう。
「ちょうどいい。黒いアイツを見失ってな……せっかくだし俺と遊ぼうぜ。」
「はぁ……結局こうなるのね。皆んなは下がっていて。」
「赤い姉ちゃん1人か?皆んなで来てくれて構わないんだぞ?」
「あら、優しいのね。後悔しないかしら?」
「はん。このヴィクトリカ様が、女子供が多数で卑怯とか言わねえよ。そして女子供だからと、手加減する気もないからな。そのつもりでかかってきな。」
随分と自信家みたいね。見た感じ前衛型だけど、魔族だし油断は禁物ね。
「セローは魔法で遠距離支援。エストは隙をみて攻撃。メインは私が行くわ。」
「お任せ下さい!」
「私もやるのね……ふぅ。」
「ん?その剣……。」
エストの剣を見て首をかしげる魔族。
「その黒い剣……烏か?」
「え?」
「連絡がねぇっと思ったが……やられてたか。情けない奴だ。」
―ズシン。
黒い斧を肩に背負い今にも襲って来そうな殺気を放つ。
「エスト!」
―ギン!
「ほぅ。俺の一撃を受け止めるか。」
「凄いパワーね。その割に動きも速くてびっくりよ。」
「それを見切るお前も中々だぞ?」
「褒めて貰って光栄……ね!」
―ボォウ。
「魔剣か。人間も少しはやるんだな。」
「構えなさいエスト!」
「え……あ。」
エストはその場を動けず立ち竦む。さっきの殺気を受けて動けなくなったのかしら。こうなると実質戦えるのは私だけ……。
「水玉です!てい!」
―ザザザザ!
「うぉ!あぶね!」
「まだまだ行きますよ〜」
―ザザザザ!
「遅いな。フン!」
―ブゥン!ザバァ!
「わわ。水玉斬り落とされた〜」
「コイツただの自信家じゃない。」
「自信家ってひでぇ言われようだな。」
―ギン!
「いい太刀筋だが……少しばかし軽いな。」
「随分余裕そうね。」
「実際余裕だからな。人間の中じゃ強くても、俺様に届く強さじゃねぇ。」
―ザブン。ブクブクブク……。
さっきの水玉が効かなかったセローだけど、諦めたりはしてないようね。同じ魔法に見えるけど、何かがさっきと違う。
「レブル!離れて下さい!」
「ん?またさっきの水か?俺には……。」
「効かなくないです!時間はかかりますが、師匠の魔法をイメージしたものです!食らうです水玉……バースト!」
―ザバァァァ!!
「また!!」
さっきよりも強力な水魔法が魔族を押し込んでいく。
「やったか?」
アマン。その言葉は今言っちゃいけないやつよ。
「そう何度も同じ魔法が通じるかよ。2度目となれば対策も思いつくってもんだ。」
「2度目?私は初めて試したんですが?」
「はぁ?あの変な山をぶち抜いた魔法と同じじゃねーか。」
「同じ?やったー師匠と同じ魔法だって思われたー!」
「セロー。今はそこを喜んでいる場合じゃ……。」
「そうだね。師匠を超える魔法を考えないとですね。」
「ん〜ちょっと違うんだけど。前向きだからいいかしら。」
私は剣を握り直し、セローの杖を握る手が少し頼もしく見える。
♦︎
森を走る事数分。僕はおそらくだけど迷子になった。
「こっちに来たと思ったのになぁ……。」
『……。』
「街から最短距離だとこの道だから、もうそろそろ追いついても良いのに。」
『……忍様。』
「何?アイさん。」
『走り出してしまって今更お伝えするのも迷ったのですが……。』
真剣な声だったので、一度止まって話を聞く事にした。
『レブル達は追い抜いてしまいましたよ。』
「…………。」
進行方向と逆を向く。
「そうか……アイさんならレブル達が何処にいるか分かるんだね。」
『……はい。』
「うわぁ……盲点だった。」
追いつこうと必死であれこれ忘れていたよ。さてそうなるとここでレブル達を待つ方がいいのかな。
「ちなみにだけど。レブル達は何処にいるの?」
『今忍様の向いている方角に真っ直ぐ……忍様!高い木まで跳んで下さい!』
「はい!」
突然の声かけに反射的に言われた事をする。でも一体何が?するとそこに大きな音が聞こえた。
「木を薙ぎ倒すような音がだんだんと近づいてくる?」
―ザバァァァ!
さっきまで居たところを、凄い勢いの水に木が押し流されている。
「あれはセローの魔法だね。」
『例の魔族と交戦中みたいです。』
「え!あの魔族レブル達の方に行っていたのか。そうなると魔物達は今も街に向かっているのか。アイさん。」
『ワイドレンジサーチ、クリアアイズ、イーグルアイ。』
魔物達は…………あそこか。ギリギリ魔法の範囲内か。レブル達が魔族を足止めしてくれている間に、あの魔物達も少し数を減らして足止めしておこう。
「雷魔法を使うね。保持とお手伝いよろしく。」
『畏まりました。』
これを撃ったらすぐに行くから。少しだけ時間を稼いで……。
♦︎
何度目かの打ち合い。遊ばれている感じは相変わらずだけど、致命的な傷は今の所ない。
「ふにゅ……もう魔力がありません。」
「ここまで助かったわ。少し休んでて。」
「ごめんなさい。」
さてと、セローの援護は無くなった。これで距離を稼いで呼吸を整える時間が減った訳だ。結構ピンチね。
「後ろの青い嬢ちゃんはダウンか。人間なのにとんでもねぇ魔力量だったな。」
「師匠が優秀ですからね。」
「その師匠どんだけだよ。もう弟子に超えられてんだろう。」
「ふふ。そんな事はないわよ。」
「そうか。んじゃ、そろそろやろうか。もう息も落ち着いたろ?」
戦力が減ったからって、コイツはまた余裕を出して……ムカつくわね。なるべく会話をして時間を伸ばしたいんだけど、楽はさせて貰えないようね。
「すぅ……はぁ!!」
「ふはは!そう来なくちゃな!!」
速さもパワーもこの前戦った魔族と大違い。武器にだけ頼らないで、手や足など全身を使って攻撃してくる。一挙一挙は粗いけど、戦い方は参考になるわ。
「……。」
「……っふ!」
斧での攻撃に、その隙を埋める蹴り。剣で足ごと薙ぎ払うと、足を下げまた別の角度から攻撃をする。地面に体を投げて無理やり交わす。背中の炎の翼が羽ばたき、体制を無理やり起こす。
「なんつー戦い方だ。その羽根も手足のように動かせるんだな。」
「貴方の尻尾程じゃないわ。」
「これは体の一部だからな。後で生やした羽根には負けねぇよ。」
そう相手には尻尾がある。私の翼もそれなりに自由に動かせるけど、今までずっと尻尾をつけて生活していたであろう魔族。その動きは敵ながら見事としか言えない。あ、そろそろ息を……でも、そんな隙はくれなそうね。
「ふは!」
「どうした?限界か?中々面白いかった……。」
―ズガァァァァァン!!!ブワァ!!!
「なんだ!?この揺れは!」
「はぁ……。」
動揺した相手から距離を取る。隙もあったけど、攻撃している余裕なんてない。
「はぁ、はぁ……。」
「あれは?あそこだけ空が真っ黒になっている?」
「あれは師匠の魔法ですね……魔族の足止めをしてから…………今こっちに向かってくるはずです。」
狙ったかのようなタイミング。これは私に運が向いているのかしら。シノブさんが来るのが先か。私がやられるのが先か……さすがにしんどいわ。
―ッザ。
「ん?次はグレーの姉ちゃんか?さっきへたり込んでたが、戦えんのか?」
「ふぅ……大丈夫よ。」
「エスト……。勝たなくていいわ。負けないように守りなさい。」
「守る……分かった。」
エストの場合は相手との殺し合いに向いていない。どうしても遠慮が出てしまう。なのでシノブさんが来るまでの時間が稼げればって意味で、守る事のみを意識させた。
「ラストラ。回復してくれる?危ない時は私が出るから。」
「はいっす!全力で頑張ります!」
対象って傷はないけど、魔力も体力もさすがに限界。魔力が無い分はどうしようも出来ないけど、この剣に振り回されるだけ……どうなるか分からないから、そんなリスクは負いたくないけど。
「エストレア・ライドステア参ります……。」
「コイツは丁寧に。俺の名はヴィクトリカ。行くぞぉ!!」
―ギギン!
「ビビってた割に、ちゃんと動くじゃねぇーか。」
「何も出来ないのは……嫌だから。」
「その剣……烏に恥じない戦いをしてみろ!」
「言われなくても!」
―ギギン!ギン!
正直エストに任せて少し不安だった。一通りの戦いは教えたつもりだけど、回避や捌く事を主体に戦うやり方は合わないかと思ったけど。
「なんだ。戦えるじゃない。」
「え?何か言いましたか?と言うかレブルさん大丈夫ですか?」
「何でもないわ……少しだけ……疲れただけよ。」
安心したら意識が……私が皆んなを守らないと。シノブさんに頼まれたんだから……。
「ちょっとレブルさん!口から血が出てますよ!?あー患者ダメっす!」
もう少しだけ……。
♦︎
何かと何かが当たり、金属の乾いた音がする。近いぞ……。
「ふん!ふん!」
「っく!やぁ!」
「あそこだ!エスト!」
さっき見た魔族と戦っていたのはエスト1人だった。レブルとセローは?
『セローは魔力切れのようです。レブルも魔力が極端に少なく、精神疲労が強く見えます。』
「無事ならそれでいい!エスト下がって!」
「全くどこで何をしてたんだか。後は任せるわよ。」
「任されたぁぁ!!」
―ブゥン!
「おっと!?なんださっきの黒いのか?」
割って入るのもあれだけど、今はそう言ってられない。それでもさっきの一撃を避けるだけの力量はあるんだね。
「へへ。やっと親玉の登場か。待ちくたびれたぞ。」
「勝手に居なくなったのはそっちでしょ?」
「んな!?あんな不意打ちで魔法ぶっ放した奴のセリフか?おい。」
魔法をぶっ放した?コイツは何を言っているんだろう。
「よく分からないけど。ここからは僕が相手をさせて貰うよ。覚悟はいいかい?」
「ふん。偉そうに。貴様こそ覚悟はできてんだろうなぁ?」
さてと、コイツはこの前の魔族と違うみたい。レブル達がここまで疲弊するくらいだから、気を引き締めていかないとね。
忍「何でアイツはあんなに起こってるんだろう?」
アイさん『魔法をぶっ放してと言ってましたね。先程の雷魔法の事でしょうか?』
忍「あぁ。結構大きい音だったから、びっくりさせちゃったかな?」
ヴィクトリカ「ちげーよ!石の山で水魔法の事だよ!」
忍「石の山の水魔法?……あぁ、あれか。もしかして巻き込まれた?ごめんね。」
ヴィクトリカ「くそ!舐めた小僧だ!あの礼はきっちりしてやるからな!」
忍「勝手に巻き込まれたのに僕の所為なの?」
ヴィクトリカ「ぜってぇ殺す!!」




