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無敵のフルフェイス  作者: みけな
第一章 無敵のコンビ〜仲間編〜
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1話 無敵のフルフェイス、ここに。

新作です。

初めましての方も、旧作からの人もよろしくお願いします。

 僕の名前は川崎 忍。この春進学を無事成し遂げた16歳の高校一年生である。


 そして16歳とは……バイクの免許が取れると言う事!僕の実家はバイクを整備する工場だ。小さい頃からバイクのオイルの匂いを嗅ぎ、エンジン音を子守唄に育ったと行っても過言では無い。


 高校入学して新しい友達と遊ぶ事よりバイクの免許を優先した。結果、連休前に無事免許を取得する事が出来た。これもある目的の為。


 父さんが若い頃にやったと言う、ひとり旅をする為だ。


 バイクに免許を取った後は地道に練習してきし。道中メンテナンスも、バイク屋である父さんに事前にみっちりと教わった。



 そして学校も休みの大型連休の初日。


「ったく。まさかここまでの行動力があるとはな。」

「父さん譲りだよ。」

「がはは。違いねぇ。」


 店の前で見送りをするこの人は、僕の父さんである。小さい頃に母さんと別れて、男で一人で僕を育ててくれた人。小さい頃からバイクに囲まれた生活をしてきた僕は、父さんが嬉しそうに話すバイクに興味を持たない訳がない。そして聞かされたバイクで色んな所へ行った武勇伝は、今でも忘れる事なく覚えている。


「忍!帰ってきたらお土産話聞かせろよ。」

「メンテで分からない事があれば、遠慮なく電話して来い!」

「はは。皆んな有難う。父さんに負けないくらいの武勇伝を作ってくるよ。」

「「それは止めとけ!」」

「なんだお前ら?」

「「いえ!何でもないです。親方!!」」


 笑って見送ってくれるのは父さんだけじゃ無い。店で働く従業員でもあり、僕を小さい頃から知る兄のような人達。


「忍。塩害対策はしてあるが、海沿いは出来れば避けた方がいい。」

「え?潮の香りを感じて走るのが、バイク乗りの醍醐味じゃないの?」

「まぁ車に乗ってる奴には、感じることのできねぇ風を感じれる訳だが……。」


 いつも豪快な父さんにしては珍しく歯切れが悪い。


「ほら、あれっすよ。最近ニュースになったあれっすよ。えーっと。」

「あれだろ?神隠しの噂。」

「むぅ……。」

「父さん…………ニュース見るんだ。」

「「ぶはっ。」」

「あぁん?」

「「すんませんでした!!」」


 海沿いの道を走りまずは北へ。予定はそれだった。

 父さんに物騒な所は避けていけ。そう言われていたが、僕はルートを変更しないで行こうと思う。


「とにかく、気をつけるさ。父さんの話でも出てきた海沿いは外せないよ。」

「むぅ……くれぐれも気をつけるんだぞ。」

「分かってるよ。行ってきます!」

「「いってらっしゃい!!」」

「いってこい。」


 ♦︎


 皆んなに挨拶をして僕は走り出す。


 海風を感じ道を走る。と言ってもフルフェイスのヘルメットにライダージャケットだから、そこまで感じる事は無いんだけど。こう言うのは気持ちの問題なのだ。


 バイクで颯爽と走る僕。突如目の前を眩い光が遮る。危ないと思ってバイクを止める。


「いきなり眩しかったけど、対向車も無いし夜でも無いはずだけど。それにこのメットは偏光グラスのサングラス仕様なのに。」


 そして目の前が一瞬暗くなった。


「今度は暗くなった?てかバイク止まっているよな。」


 何があったかは分からないが、いつもとは違う何かが起きている。海沿いをバイクで走っていたはずの僕はバイクに座っても無い。止まっている感覚はあるけど。


 すると、目の前が明るくなり一人の人を確認できる。そう……土下座をする人が一人。


「申し訳ない!!」

「え?何が?」

「君、死んじゃったんだ!」

「そっか。死んじゃいましたか。」

「そうですよね。突然言われても信じられ……。」


 死んだのか。だからこの空間で、この人は若干光っているんだろう。ありえない光景に自分で納得する。でもどうして死んだんだろう。


「どういう事ですか?僕はバイクで走っていただけですが。」

「それは〜その〜。事故ってしまって……。」

「え!僕が事故?…………覚えていないな。」

「さ、最後は何を覚えていますか?」


 言いにくそうに事故って言ったな。何かあるのか……だけど僕自身はバイクの運転に絶対の自信はないしな〜。最後の記憶を辿ってみる。


「目の前が眩しくって、バイクを止めた。なんかいつもと違うって事だけ分かったけど。それが事故の前の記憶かな。」

「事故ってショックが強いので、記憶に残る事が少ないんですよ……。」

「まぁ残っているより、覚えてない方がいいだろうけど。」


 まぁ痛いのは忘れてくれて構わないか。それでここに居る人は……誰?光ってて顔もよく見えないけど。


「それであなたは誰なんでしょうか?何で僕に土下座?」

「そ、それは!ぼ、僕が神様だからです。」

「神様?だから光ってて見えない?」


 このあり得ない状況で、神様と言われたら信じる他ないよな。それより人間が死んで出てくるって、何かある訳だし。心象は良くしておく方がいいだろう。


「それで神様は僕をどうするんですか?」

「そうですよね。突然現れて神様って信じてくれないで……え?信じるの?」

「ええ。この状況だし。僕自身もバイクに乗ったばかりで、事故らないって保証は無いし。それよりこれからどうなるか聞いて置きたくて。」

「切り替え早いんですね。」

「よく言われます。」


 くよくよ悩んでも、生き返ったり出来そうもないだろう。そうじゃなきゃ神様が土下座までしないでしょう。


「えっと……単刀直入に言いますと。転生するか、このまま天国に行くかって選択肢なんですけど。」

「転生か天国ですか。それなら転生で。」

「そうですよね。突然言われても決められませんよ……ね。」

「切り替え早いって、よく言われます。」

「そうですね。」


 転生か天国なら、転生一択でしょう。天国行くなら人生を全うしてから行きたい。悪い事したら地獄って可能性もあるだろうけど。


「念の為聞きますが。質問はしないのですか?」

「質問ですか?そうだな……行く先はこの世界と一緒ですか?」

「いえ、ちょっと変わってます。」

「具体的には?」

「具体的にですか?この世界と比べて、戦う事が増えます。」


 戦う事が増えるか。そうなると紛争地域か何かか。平和な世界で事故で死んじゃう僕だと、すぐにやられて死んじゃうのでは?あ、こういう事聞けばいいのか。でも、こっちから催促すると印象悪いかな。


「それで転生ですが、こっちの不手際もあるので。転生前に願いがあれば叶えます。」

「不手際って、神様は世界を管理してもらっている訳だし。そんな申し訳なさは出さなくても。」

「そ、そんな!僕の力及ばない所があったので!うぅ……。」


 顔は見えないけど、なんか泣いているように見える。肩を叩いて励ましてみる。


「情けない所を……貴方は良い人ですね。」

「皆んなこんなものだと思いますけど。」

「そんな事はないです。最近は転生って言うと、チート能力をよこせとか無理を言う人も多くて。」

「あぁ。あの世界はそんな題材多いですからね。」


 小説に漫画、ゲームなんかもそうだけど。転生に夢を見る人もいるんだろうな。


「僕は少し長生き出来るくらいはしたいかな。16年しか生きれなかったし。」

「はい!そこは全力で!貴方なら多少の無理も頑張りますよ!」


 妙にやる気を出した神様。そこは変に能力貰って、前線に出ても死亡率が上がるだけ。出来れば遠慮したい。まったり平凡な生活をしたい。


「で、何かありますか!?」

「これは出来れば……あの世界の僕の存在って消せたりします?」

「え?それは可能ですが。消して良いんですか?」

「転生したあと戻れるなら残して欲しいですが、それは出来なさそうだし。皆んなを悲しませたくないんで。」

「…………色々とすいません。」


 申し訳なさそうな神様。もしかしたらって考えたけど、やっぱり生き返る事は出来ないのか。もっと親孝行しておけば良かったって事が心残りだな。ならせめて悲しませたくない。


「分かりました。そこは責任持って行います。他には何かありませんか?出来れば何か言って頂きたいです。」

「そうだな……ワンパンで死なない体に、ガイドでもいれば助かるかな。」

「ガイドですか?それを言われたのは初めてですね。それにワンパン?1撃で死なないって事ですね?強靭な肉体っと……それは簡単です。他にはありますか?」

「これ以上は欲張りですよ。さっきの2つで十分生きていけますよ。」

「優しい上に無欲ですね。ではこうしましょう!」


 そう言うと、神様の手の中に小さな指輪が現れる。


「これは?」

「何か願いが決まったら、それを使って下さい。可能な限り力になります。」

「え?なんか悪いですよ。」

「いいえ!貰って下さい!他の転生者にも同じ条件を出してますので。」

「神様ですし、平等な訳ですね。では有難く頂きます。」

「はい!」


 人の好意を断り過ぎるのも良くないし。別に使わなければそれでいい訳だし。


「それでは、他に質問が無ければ。早速転生出来ますが、どうしますか?」

「神様も忙しいでしょうし、後は向こうで考えます。何かあれば指輪もありますし。」

「神様に気を使う人間は貴方くらいですよ。あ、名前を聞いてもいいですか?」

「僕は忍って言います。」

「覚えておきます。では忍さん。いってらっしゃい!」

「色々と有難う御座いました!いってきます。」


 こうして僕は神様と別れた。


 ♦︎


「ここは……。」


 目を開ければそこには広い草原。辺りを見回してもここから街すら見えない。


「そんな事より。転生って赤ちゃんじゃないんだ。」


 自分の手を見て思う。


「これは手袋?」


 自分の体を触り確認する。これってライダースーツだよな。足のサイズも見て体は元の世界のままと確認する。


「まぁ子供からやり直すよりはいいか。それにこの世界に来て裸とかじゃないだけ感謝しないと。」


 一人で喋る虚しさを感じつつとりあえずどこに行こうと歩き出す。すると視界の端に光る玉が見えた。手で掴もうとする。


「なんだろこれ?」


 意識をその玉に持っていくと……。


『初めまして忍様。』

「ん?今声がした?」


 辺りを見渡すが人らしき人はいない。あまりの寂しさに幻聴が?でも僕の事を呼んでたな。誰もいない所に話しかけてみる。


「誰?」

『私は神様によって作られたガイドです。』

「声だけしか聴こえないけど?」

『はい。ガイドをするだけなので、人工知能だけ授かりました。』

「オッケー○○とか、ヘイ○○みたいなやつ?」

『それは現代の……検索しました。アシスタントと言う意味では同じです。』

「そっか。ガイドって本みたいなのかと思ったけど、人工知能知能を作るって神様は凄いんだね。」

『アレでも神様ですし。』

「……。」


 創られて間もないはずだけど、人工知能さんはすでにアレ扱い……。


「人工知能さんは……味気ないし、呼びづらいな。何か名称とかないの?」

『名称ですか?AIと呼んで貰えば反応致します。』

「AIさん。」

『はい。』


 味気ない事には変わりない。文字数は減ったっけど、なんか楽しくない。


「アイさんにしよう。それでいい?」

『私に名称や名が必要なのか分かりませんが。忍様が言うのであればそれで認識致します。』

「それで頼むよ。」


 これで少しは楽しめそうだ。やっぱり1人は寂しいもんな。高校じゃ友達作るより、バイクの免許を優先した訳だし。こっちじゃ急ぎ過ぎないようにしよう。


 ―ピピ。


「ん?」

『後方から馬車が近づいて来ます。それなりの速度を出していますので、避ける事を推奨します。』


 足元を見ると、ここだけ補装されている。言われた通り道の端に寄る。


 しばらくして目視出来るくらいの距離に荷馬車が見えた。


「この世界の荷馬車は速いんですね。もっとこう、ゆっくり走るものだと思ってました。」

『いえ、あの速度は異常です。恐らくは後ろの魔物が原因かと。』

「魔物?」


 目を凝らして見る。遠すぎるし、砂埃でイマイチ見えない。


「見えん。」

『視覚補正します……クリアアイズ、イーグルアイ。』

「おお。見えるしはっきり見える!さすがアイさん。」

『お褒めに預かり光栄です。』


 双眼鏡を着けたみたいに遠くがよく見える。それに砂埃も見えるけど、隠れていた馬車と魔物を綺麗に映し出してくれる。


「しかし魔物か〜。戦うって聞いていたけど、ファンタジーな世界だったか。」


 勢いは変わらない馬車が僕に気がついたらしく、何か叫んでいるっぽい。口が動いているのが見えるけど音は聞こえない。


「あいさん。読唇術あったりします?」

『読唇術ですか?……リップリーディング。』

「お、分かる。何々……(に・げ・ろ)……逃げろか。」


 自分が追われているのに、気の使える好い人なようだ。しかし逃げるか……どこに?


「とりあえず、あの馬車と同じ方向に逃げるか。」


 なんて事なく走り出す。そしてすぐに馬車が走る音が近づく。


「そりゃそうか。馬車の方が速いよね。」

「君!乗れ!」

「え?はい。」


 馬車の中から手を伸ばされて、思わず取り馬車に乗り込む。


「済まないな。巻き込んでしまって。」

「別に構いませんよ。旅は道連れって言いますし。」

「旅って。そんな呑気な。それに道連れって。」


 慌てている感じだけど、そんな強い魔物なのかな?


「アイさん。アイツは強いの?」

『いえ。忍様であれば問題なく対処出来ますよ。』


 出来るのか。なら追手を無くす方が、安全ってもんだな。あ、でも倒して良いか聞かないと。


「そっか。あの、あの魔物倒しちゃっても良いんですか?」

「それが出来れば助かるが……君は戦えるのか?」

「……アイさん。僕、武器が無い。」

『問題ありません。手を前に出して下さい。』


 言われるがままに手を前に出す。すると体の中で何かが流れるのが分かる。


『お好きなイメージで何かを飛ばしてみて下さい。』

「お好きなイメージでって。」


 これはあれか?魔法的なものが出るのか?魔物がいるファンタジーだし、それなら出来るのかな?使い方も分からないけど、アイさんの言う通りにすれば出来る気がする。


「イメージは火!」

『畏まりました。体の中で感じる流れを手に集中させて下さい。』

「こうかな?」


 ―ボゥ。


 お、なんか火が出てきた。飛ばすなら丸い感じが良いよね。


『補助しますので、そのまま撃ち込んで下さい。シャープシューティング。』

「ファイヤーショット!」


 ―ゴォ!


「な!魔法だって!?」

「え?何か言いまし……」


 ―ドゴォォン!!


「……た?って、えぇぇぇ。」

『…………。』


 凄い爆発したんだけど。アイさんも何も言わないし、これがこの世界の魔法なのか。


「凄いね。初めて魔法を撃ったけど。こんな威力あるなんて。」

「初めて撃った?君は魔導師では無いのかね?」

「え?僕は……何だろうね。」

「不思議な事を言う人だな。変わった兜を着けているあたり、魔導師とはそう言うものなのかもしれないな。とにかく助かった。」


 変わった兜?自分の頭を触る。


「え?あ、ヘルメットしてたんだ。気がつかなかった。」

「…………。」


 ん?僕おかしな事言ったかな?静かになった草原では黒い煙が上がるだけであった。

アイさん『(忍様の魔力量を見誤りました。次は少しセーブをしなければ……。)』

忍「アイさんどうかしましたか?」

アイさん『いえ、予定通りです。』

忍「ん?ん〜ありがとう。」

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