リーエルの気持ち
その時、クーファ国王が駆け付けて来た。
「凄い音がしたがどうしたんだ?」
ミカが慌ててクーファに駆け寄る。「お願いです。純くんと信長が海に落ちて…助けてください!」ミカの言葉を最後まで聞くかどうかの瞬間にクーファは海に飛び込んだ。
泳ぎもオーケアノスで一番上手いクーファ国王であったが爆発による海中で純の姿を見つけるのは至難の業だった。
ミカとリーエルが見守る中、なんとかクーファが純を抱いて地上に上がって来た。クーファは純に蘇生術を施す…「う…ん…クーファ…先生…」
純は目を覚ました。クーファが「安心しろ。信長は影武者だった…ローゲンという魔王が信長に変わっていたんだ…」
それを聞いたミカとリーエルが純を抱きしめる。
「い、痛いよ…ミカ…リーエル…」
「ゴ、ゴメンね…つい、嬉しくて…ねぇ、純くん何で音叉使わなかったの?」ミカは純に訊いた。
「音叉…使わないほうがいいかなって…ミカとリーエルに聞きたいんだけど、音叉で覚醒状態になってる時って、ミカやリーエルは何を考えているの?」「分からない…私の意識は失われているから…」「あたしもだよ。」「女王様によると覚醒状態になった時の二人の意識は〝ヴェラさん〟〝ユーリさん〟になってしまうらしい。
僕が魔王レックならそれでいいと思うけど、僕は純、弥生純だ!そして一緒に戦うパートナーはミカとリーエルだ!だからもう音叉は使わないようにしようと思う…」純が起き上がろうと右手を地面についた途端に激痛が走った。
「あぁぁぁぁぁ!」見ると純の拳は割れてしまって血が滲んでいる。クーファ先生が「困ったなぁ。これではウルの弓の弦が引けんかもしれない…」「そんな…」ミカとリーエルの二人は心配した表情を見せたが純は「大丈夫!何とかなりますよ」と笑ってみせた。
純が世界樹の泉の水に手を浸して治療するために、リンとクーファを残してみんなはグランアンジェ王宮に戻ることになった。
リーエルは荷物をまとめてみんなの前から消える決心をした。自分は敵として純の前に現れて純を苦しめた。そしてそんな自分を救ってくれた純の為にこれからは生きようと決心した。でも不器用で自分の気持ちを上手く伝えられないリーエルは他の可愛い守護神と比べて純に何もしてあげられないどころか今回、自分を守る為に怪我をさせてしまったことに心を痛めていた。このまま純と一緒にいてもまた迷惑をかける…彼にはミカ達がいる。そう思っていた。
でも、でも…大好きな純の顔をもう一度見てからとリーエルは純の部屋を覗いた…
手の怪我もありグッスリと眠っていた純の頬にリーエルの涙が一粒落ちた…
純は目を覚ました。荷物を持って自分の側で涙しているリーエルを見て純は全てを悟った…
純はリーエルを抱きしめて「リーエル、何処にも行くな!僕は君が大好きなんだ!」と叫んだ。
リーエルは涙が溢れた。「でも私はみんなのように純とずっと一緒にいた訳ではなく、何もしてあげられていない。不器用で上手く伝えられないし、可愛くない守護神なんだよ。私は!」そう純に告げた。
「僕は知っているよ。リーエルは美人だし、クールな性格だけど、誰よりも温かい心を持っている。僕が慌てて靴を脱いでしまっていても、君が黙って直してくれたね。洗濯したシャツも君が取り込んでくれた。言葉にはしないけど心の優しい君が大好きだ。僕はミカやテラやリンと同じように君が可愛いし、ずっと一緒にいて欲しいと思っている。だから何処にも行かないで欲しいんだ!」
リーエルは生まれてからずっとこんなに自分を理解してもらえる人に出会ったことが無かった。
純の側で生きようと思ったのも純に対する感謝の気持ちがあったからである。
でもこの言葉でリーエルは心から純のことを愛した。この人さえいれば自分は生きている意味があると思えた。
「君のだよ。」純は左手でリーエルに音叉を手渡す…
自分の為にこんな怪我までして取り戻してくれた音叉を見てリーエルは生まれて初めて大声で泣いた…




