故郷
「武闘大会?」「そうです。ソリュー王国内のコロッセオで毎年行われる恒例の武闘大会です。
その大会だけは、参加者、観覧者を世界全土から受け入れます。政治、思想、宗教などを超えた大会です。」「ただ問題が一つあります…」「何ですか?」「それはまた後日改めてお伝えします。」…ちょっと意味深だなと僕は思った。
「アリスさん、話は変わるのですがちょっとお願いしたいことが…これは女王様の命令と関係ないことなのですが…僕にはアリスさんしか頼れる方がいないのでお聞きいただけますか?」
「他ならぬ純さんのお願い…私に出来ることなら仰って下さい。」「ありがとうございます。実は…」
そして次のお休み、僕達はアリスさんと連絡を取り合って王宮に向かう途中、テラとちょっと寄るところがあるから先に行ってて欲しいと言ってミカと迎えに来てくれたアリスさんを見送った。
テラはいつものように「純、ウチを何処に連れていくんや。分かった、ラブホやろ。まぁええか!そろそろ純にあげても。うふふ。」ラブホって…何処で覚えたんだ…
テラは驚いた。何故なら純が自分を連れてきたのは見覚えのある風景だった。幼い頃、登って遊んだ木、魚を捕った川も見える。そしてあれは…あの家は…
「純、これは一体どういう…」純はニコッと笑ってテラの背後に視線をやってそして会釈した。
テラはもう一度振り返る。そこには一人の女性が立っていた。涙が止めどなく流れる…
「おばさん…ナミおばさん。」「おかえり、テラ。」「なんで?…どうして?…」
「何日か前に王宮から魔法使いの女の人と一緒にあの人が訪ねてきてね。王宮でここを苦労して調べたらしくて、テラは元気にしてますからまたここへ帰ってきていいですか?と訊くんだよ。
もちろん帰ってきて欲しいって言うと、金貨を十枚もくれてね。一枚でもこの家を立て直せるよ。
これでテラとみんなを笑顔にしてくださいって…
初めはこんなの受け取れないって言ったんだけど、何度も何度も頭を下げて「お願いします」って…あの人アンタのいい人かい?優しい人捕まえたね。幸せだろう。あたしゃ嬉しいよ…」
そう言ってナミおばさんはテラの腕の中で泣き崩れた。テラも涙を拭うことなく思いきり泣いた。
ひとしきり泣いた後、テラはナミおばさんに「いつでも帰ってきてええか?」と訊いた。
ナミおばさんは涙を浮かべて頷いた。
テラは僕のところに帰ってきた。「おばさんの所に帰るかい?」と訊くとテラは頭を横に振って「純が好きや。一緒にいたい。」と言って胸に顔を埋めた。
僕はナミおばさんにもう一度会釈してテラと王宮に向かうことにした。
テラは僕の腕に抱きついて「純、ウチに故郷をくれておおきに。」と言った。
「良かったね」僕はテラの涙を指で拭った。
テラが流していた涙は今まで辛い思いをして
流してきたそれとは違う温かい涙だった…




