カプセルから出た彼女
…今から数年前…
夏の暑い日差しにも負けずにまだ幼かった小学校低学年の僕は神社の裏の川で遊んでいた。
友達のタクトと一緒に川に入って土手を何気なく掘っていた。すると丸い形の石が僕の足元にコロンと転がった。「なんだ?これ?」
でも小学生だった僕にはそういうものが珍しく宝物に見えた。
僕が他に何かあるか調べると、小さな棒が一緒に出てきた。先が二股に分かれている金属製の棒である。
僕はタクトに「これ、宝物だぞ!」と自慢しながらその二つを家に持って帰ってクッキーの空き缶に入れた。
そして僕は大きくなるにつれ宝物の記憶は薄れ、空き缶は僕の部屋の押し入れに片付けられた。
時々、懐かしいなぁと空けてタイムカプセル的に眺める程度の物となってしまった…
数年が経ち、僕も十七歳となった。
僕の名前は 弥生 純。読書が好きな普通の高校生だ。
周りの友達も彼女を作り始めて肩身の狭い思いというものを覚えてしまった。
両親は共働きで通う高校が実家から遠いため、僕は
、一人暮らしをすることになった。
今日は引っ越してからなかなか片付けていない荷物の整理をしている。でも昨夜遅くまで本を読んでいた僕は座ったまま居眠りをしてしまった。
コックリコックリ舟を漕ぐ。ハッと気がついて頭を収納のドアにぶつける。
その振動で棚の上のクッキーの缶が落ちて缶の蓋が開いた。丸い石と金属製の棒が宙を舞う。
金属製の棒はガラステーブルの枠にぶつかってキィーンという高い音を出した。すると丸い石に無数のヒビが入って真っ黒の、そうちょうどガチャポンのカプセルのような球が出てきた。
その球は床に落ちてパカッと割れた。
ポンッと煙が出て中から可愛い女の子が現れた。
僕はビックリしてしばらく直視してしまったが、
彼女が水着姿なのに気づいた。
「わーっ!とにかく服!これでも着て。」
僕は洗濯した自分のルームウェアを彼女に渡した。
彼女がボーっとしているので僕は無理矢理服を着せることにした。
「両手を挙げてくれるかな?」彼女は黙って両手を挙げた。
スウェットの上を着せて「ちょっと立ってこれを穿いてね。」同じように下を穿いた。彼女はずっと立ったままだ。
「…座らないの?」「…座ったほうがいいですか?」
「だって落ち着かないでしょ?」彼女はまたペタンと床に座った。
僕はふと我に返って、「そ、そうだ。君は誰?」
僕は当然と言える質問をした。
彼女はゆっくり口を開いた。「…ミカです。」