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1.5。第二王子

  僕は王国に復讐することに決めた。


  今、目の前には王国中に張り巡らされた、龍脈路の源、王城前にいる。

  龍脈路とは、魔力が流れている地下道のようなもので魔力を国民へ供給し、魔道具などの起動を助け、直接国民の生活の助けとなっているものだ。


「そこのお前、そんなところで何をやっている?」


「すいません、少し龍脈路に興味がありまして見学をさせて貰っていたのです」


  城の周りを巡回している憲兵に声をかけられた。僕は花屋で作る笑顔を意識しながらなるべく相手に不快感を抱かせないよう物腰が柔らかい声を出す。


「ならいいんだがな、あまり不審な行為はするなよ」


「分かっていますよ。少しだけ見ていただけです……」


  憲兵は僕を疑っていたがため息をつくと巡回に戻っていった。



  今だ。


  僕は地面に手を付ける。


  そして一気に魔力を流して、龍脈路の正確な位置を測る。




  見つけた、地下50メートルほどにある、まるで川のように魔力が流れている道。


  僕はその道を邪魔するように、『花創成魔法』を使う。


  けれど莫大な魔力の流れによってすぐその花たちは霧散した。


  汗が頬をしたたる。


  魔力の流れを阻害することは難しい、それなら別の手段をとるまでだ。

  魔力の流れを自分の常識外れの魔力で逆流させてやる。


  今、持ち合わせている最大魔力でその道に対抗する流れを作る。


  息切れが激しい。喉が乾いてしょうがない。


  けれどそんな苦しさは妹の苦しみに比べれば、全く比にならないのだ。


「よし、もう少しだ……」


  既に僕の魔力量は全体の10分の1ぐらいまで減っている。

  今頃、王国にある全ての魔道具への魔力供給が止められて国民は混乱しているだろう。


「あと少しで暴発させられる……」


  魔力というものはとても繊細で、この世界では全ての魔力に役割が与えられていると言われている。

  決められた役割に沿うように魔力というものは流れる。

  けれど、それを逆流するようにし、決められた役割に反したら?

  魔力は暴発するのだ。


  これで龍脈路の機能を失わすことが出来たら、王国へ大きなダメージを負わせることが出来る。


  王国を潰すという所までは行かないが、国力を弱くする要因にはなり得るだろう。


「ねぇねぇ、そこの君。地面に伏せてどうしたの? 調子が悪いのかな?」


  とんとん、と僕の右肩を叩かれた。


  邪魔をするなっ!


  僕は下界の情報をシャットアウトし、全神経を龍脈路の暴発へと注いだ。


  あと少し。


  魔力の流れが、一瞬逆流し始めた時だった。


  僕の体を強い衝撃が襲った。


  反動のまま、僕は吹き飛ばざれ、王城前のタイルの上で何度かバウンドして、止まった。


「……なに……が」


「僕が話しかけたのに無視とかないよね。なんだか目とか血走ってて気持ちが悪いし、こんな所で何をしていたの? 」


  やっと現状を理解し始めた時には、黒髪の少年が僕の頭を踏みつけていた。


  ぐりぐりと、革靴の踵が頭に刺さりとても痛い。


「なに、何も喋んないの? うーん、じゃあ王城前で不審な様子だったことを罪状にして、ちょっといたぶってやろうかなぁー。ほらぁっ!」


  黒髪の少年は僕を蹴り上げた。

  次は腹に鋭い痛みが走った。


  衝撃のあまり、胃の中のものをぶちまけてしまう。


「はーい、王国前の景観を汚した罪追加で! そーらっ!」


  また蹴り上げられて、吐き出す物がなくなったのか酸っぱい胃酸がこみ上げてくる。


「王子っ! そのへんでお止め下さいっ! いくら気が立っているからと言っても国民ですぞっ!」


  走ってきたメガネをかけている文官のような中年男性が少年を宥める。


「だってさぁ、おかしいじゃん? なーんで、僕が他国にお見合いに行っている間にシルベールが死んでんのさ。僕が殺してやるって言っただろうが。せっかく魔女の疑いをかけるなんて凝ったことしたのにさぁっ!」


「王子っ! そんな話をこんなところで! 時と場所を……」


「なぁに? 口答えしちゃうんだ? へぇー……」


「あ、いえ。全くそのような事は……」


「ねぇねぇそこで転がっている君はどう思う? 僕の結婚を断った女の末路についてどう思うのかな? 君だって今日魔女の処刑があったこと知っているよね? 1国民として王子は聞いておくべきだと思いまぁすっ!」


  心の奥底から、僕の知らない感情が心を真っ黒に染め上げた。


「お……まえが第二……王子か?」


  体中が痛む。まさに満身創痍というやつだろう。けれど聞かなければならない。聞いておかなきゃならないんだ。


「うーん? そうそう、僕が第二王子だよ? でもね、次は僕が王だから、その名称は不正確だ。時期国王と呼べよ。あと、僕に敬語を使わなかった罪も追加ね」


  「お前が無実のシルベールを殺したのか……?」


  「シルベール? あっ!もしかしてシルベールの知り合いっ? あっははっ! やったぁ、こんな所でミラクルが起こったよ。ふへへ……嬉しいな。僕の憂さ晴らしには持ってこいの国民が目の前にいる」


  そして第二王子は僕の髪を鷲掴み、直接目線が合う高さまで持ち上げた。


  汚い濁った目だ。


「シルベールはねぇ、僕の婚姻を断ったんだ。僕のだよ? 時期国王の婚姻を断るなんて、国民としては失格だよね? だから丁寧に殺し方を調べてさ、1番苦しい方法で殺してやることにした。火あぶりにするのが痛いって文献に書いてあったから、色々と設定を考えてやったんだ」


「設定……だと?」


「そうそう、魔女の烙印を押してね。とんだ喜劇だよ! 聖女が魔女だったなんてね? これを考えついた僕は天才だよっ! だから今度、これを王国の劇団に劇にしてもらうんだっ!」


「……ろす」


「えぇっ? なぁに? 聞こえないよ?」


「殺すっ!」


  にたぁと嗜虐心が垣間見える双眸が僕を見つめる。


「ふふふふ。ふっふっ。ふふふふ。あっはははははははっ! 誰が? 誰をっ?! 君が僕を殺すだって?! なになに、僕の考えた喜劇にのってくれてるの? 」


  僕は血だらけになった拳を振り上げた。


  けれどその拳は振り下げることは叶わなかった。


  何者かによって振り上げた腕を掴まれたからだ。


「おい、やめろメル。それでも本当にこの王国の王子か? みっともない真似はよせ」


「ゼブラ兄さん……」


「あと君もだ。もしその振り上げた拳を振り下ろしてみろ、私でも庇いきれなくなるぞ」


  そこに居たのは真っ赤な長髪が特徴の、身長の高い美青年だった。

  第二王子が兄さんと呼ぶに、彼がこの国で最も王に近い存在。第一王子なのだろう。


「さっき、お前のそば付きが私に魔道具で連絡して来てね。すまない、遅れてしまった」


「あのクソジジイっ!」


  第二王子は辺りを見渡し、そば付きを探す。近くにいる彼はびくっと肩を揺らし動揺していた。


「離せ……離せよっ!」


「すまない。私はこの腕を離すことは出来ない。君のためでもあるんだ分かってくれ」


「ゼブラ兄さん、頼むよ。僕にこいつを殺させてくれよ? お願いだよ」


  雰囲気が変わった。

  ゼブラ第一王子の髪色が赤から紅により濃く赤く染まっていく。

  メル第二王子は、自分の失態に気づき、しまったという顔をしている。


「いい加減にしろよメル。そろそろ我慢の限界だ……」


「あ、いや。あのゼブラ兄さん……。やっだなぁー! 冗談に決まっているじゃないかっ! もうゼブラ兄さんには冗談が通じないんだからっ!」


  白けたなぁ、帰ろ帰ろっ! と言ってそそくさとメル第二王子は王城の門を潜っていった。


  はぁ、とゼブラ第一王子は大きなため息をつく。


  さっと僕の腕を離した。僕はそのまま倒れ込む。


「君も面倒なことをしてくれるな、少々面倒な弟なんだ。回復薬をやるからさっさとここから去ってくれ」


  別のそば付きから、緑色の液体が入った小瓶を受け取り、僕の目の前に置いた。


「また見つかると面倒だから、もう王城には近寄らないでくれよ。それじゃ」


  そう言ってゼブラ第二王子も王城に入っていく。


  僕は回復薬を握りつぶした。


  涙が溢れ出てくる。


  「悔しい悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。目の前にシルベールを殺した奴がいたのに……僕はっ!」


  涙が切れた頬の傷に染み、痛い。


  僕は大の字に寝転んで眩しく光る太陽を覆い隠すように腕で目を覆った。


「う……うぅ。殺す。絶対に殺してやる、第二王子も第一王子も。絶対絶対絶対絶対、殺してやるっ!!」


  僕はその後、しばらく泣き続けた。


  僕の無力さが憎くて、僕の不甲斐なさに呆れて。


  これからの後の人生で泣かないよう、これからの分も泣いた。



  何時間ほど泣き続けただろうか?

  すっかり涙は枯れて、めちゃくちゃな悪感情が僕の中には居座っていた。


  そして僕はゆっくりと立ち上がり、足を引こずりながら、家に帰る。


  「シルベールよりももっともっともっと、もっと苦しい死に方をプレゼントしてやるよ……」


  僕はこれからの計画を頭の中で練りながら、涙を拭った。


 

自分の作りの甘さと、訂正箇所がとても多いので、もう一度投稿し直そうと思います。

作り直したものをもう一度見ていただけると嬉しいです。自分の能力不足ですいません

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