第八話 サイクヒットの光と闇
四月が終わり、月間MVPが発表された。
MVPはセリーグ菅野と宮崎。
パリーグ則本と内川になった。
楽天は四月は十四勝十二敗で二位。
ゲンは四月二十六日にプロ初ホームランを打った。
則本は四勝無敗と驚異的な成績を残した。
五月に入ると、鷲打線の爆発が数多く見られた。
まずは五月三日のロッテ戦。
初回に四本のホームランを打ってしまった。
結局その試合は九本もホームランを打ってプロ野球記録になってしまった。
五月十二日のホークス戦は、ゲンの大爆発の日だった。
二回の一打席目でシングルヒット、三回の二打席目では真ん中付近の甘いスライダーを捉えて、プロ初の満塁ホームラン。五回の三打席目でスリベースを打った。
八回の第四打席。
茂木「サイクル打って来いよ。」
ゲン「絶対打ちます。」
ネクストバッターサークルで準備をしているとき、柳田監督が声をかけた。
柳田監督「ゲン、左中間が空いているだろう。あそこを狙って打て。」
ゲン「分かりました。」
そしてゲンはバッターボックスに立った。
三球目が投げ終わった時だった。
レフトの中村晃が左中間を埋めるようにセンターに近づいた。
柳田監督は後悔しただろう。
勝負の七球目
「カコ―――ン。」
打球はレフトのライン際でフェアになった。
ゲンは二塁に到達し、サイクルヒットになった。
ルーキーでのサイクルヒットは史上初となった。
その帰りのこと、ゲンは大分へ行き、母校を訪れた。
母校では生徒達がゲンを大勢で迎えた。
野球部では後輩の坂内や金森、田中などがいた。
校長室を覗いてみると、壁に西本の背番号付のユニフォームがあった。
後輩から歓迎される中、梨田監督の姿だけなかった。
「あれ、梨田監督はどこにいるの?」
一人の生徒が答えた。
「梨田先生は今日入院しました。」
「えっ?。」
ゲンはすぐにその場を離れ、市立の病院へと向かった。
ゲン「すいません、梨田監督はいませんか?」
受付「梨田監督ならあちらのお部屋です。」
ゲン「わかりました。」
そこにはベッドに横たわる梨田監督がいた。
ゲン「な、梨田監督!大丈夫ですか?」
梨田監督「おう、福浦か。」
ゲン「体調は大丈夫ですか?」
梨田監督「福浦、すまないがこの部屋から出て行ってもらえないか。」
ゲン「な、何でですか?」
梨田監督「お前があんなにヒットを打つからだろう。しかもサイクルヒットを!俺はキャッチャーは守りが一番、打つのではなくピッチャーを支えることだと言っただろう!しかも聞いた話によるとピッチャーと全く話してねぇって...。自分の打つことばっかり考えてんじゃねぇよ!俺はずっとキャッチャーをずっとやってきているからわかるんだよ!だから失神してしまったんだよ!」
ゲン「いいえ!梨田監督、僕は...。」
看護師「対面終了の時間です。」
ゲン「もう少し待ってください!」
ゲンは激しく抵抗したが、看護師に追い出された。
その後ゲンは梨田監督と会うことは二度となかった...。
悲しみに暮れながらホテルに戻り、テレビをつけた。
「続いてはスポーツです。ついにカーショー選手が東北を訪れました。カーショー選手は『来月中には東北楽天ゴールデンイーグルスの選手になれるようにしたい。』と語りました。」